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2018/05/20(日)12:10

日本は誰と戦ったのか

社会・政治・時事(278)

​​ 『リベラルという病 』を読んで以来、  アメリカという国についての認識が一変した私ですが、  その延長線上で本著を読んでいくと、頷くところがとても多かったです。  アメリカという国は、常に表裏二面の顔を持っていることに気付かされます。  日本の教科書では、ルーズヴェルト大統領は、ニューディール政策を打ち出し、  アメリカを世界恐慌の波から脱することに導いた立役者として記されています。  しかしアメリカでは、かつて多くの人々が支持したこの民主党の大統領に対して、  反共保守勢力を中心に、問題点を次々に指摘するようになりました。 チャールズ・ビアード博士による『ルーズベルトの責任』や、 ハーバート・フーヴァー元大統領(共和党)の回顧録『裏切られた自由』、 ソ連・コミンテルンのスパイたちの交信記録である「ヴェノナ文書」等により、 ルーズヴェルト民主党政権の実態が明らかになってきたからです。   当時の野党の共和党には、「ストロング・ジャパン」の政治家が多く、   「アメリカの敵はソ連であって日本ではない」と考えていたからです。   こうした野党の共和党の批判に反論するためにも、   民主党のルーズヴェルトとそのあとを継いだハリー・トルーマン大統領は、   「ソ連と組んで日本を敵視した対日政策は正しかった」   と弁明しなければならなかったのです。   その弁明のポイントは、「日本は悪い国だ」というレッテル貼りです。   よって「第二次世界大戦でその悪い日本に勝ち、   野蛮なナチス・ドイツを倒したルーズヴェルト大統領は偉かった」   という歴史観を作り上げたのです。(p.40)  そして本著は、アメリカの反共保守派による「日米開戦」に関する最新研究を、 著者が、2014年8月にジャカルタの書店で出会った M・スタントン・エヴァンズとハーバート・ロマースタインによる 『スターリンの秘密工作員』を軸に紹介したものです。   「ソ連に甘かったルーズヴェルト大統領と、    その政権内部に潜り込んだソ連の工作員たちが日米両国を開戦へと誘導し、    日米の早期停戦を妨害し、ソ連の対日参戦とアジアの共産化をもたらした」   というスターリン工作史観とも呼ぶべき、こうした見方に対して   「あまりにも一方的過ぎる」「アメリカの歴史学会の主流ではない」   などと批判することは自由です。(p.291) 著者が記したこの点さえ踏まえておけば、 「アメリカでも、こういう見方がある。  アメリカにも、こんな風に考える人もいる。」 ということを知るには、とても良い一冊だと思いました。

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