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カテゴリ:文芸
またしても、お久しぶりの伊坂作品。
それでも、やはり流石の筆力と安定感。 『グラスホッパー』の槿(あさがお)やスズメバチ、 『マリアビートル』の蜜柑&檸檬の名前が登場するのも嬉しいですね。 さて、この作品の主人公・兜は、恐妻家でありながら、腕利きの殺し屋です。 その息子・克己は、そんな父の姿を冷静に見つめ、時に気の利いた言葉を投げかけます。 そして、父である兜が同業者によって命を奪われた後は、主人公の座を引き継ぐことに。 ただし、克己は父が殺し屋ではあるとはつゆ知らず、自身も殺し屋ではありません。 本作は殺し屋たちが繰り広げる、生きるか死ぬかのお話でありながら、 実は、夫婦や親子といった家族について、とても考えさせられる作品になっています。 殺し屋にも家族がいるのですね。 では最後に、私がこの作品で最も印象に残った箇所をご紹介します。 「中学生か?」まずはそう訊ねた。 兜の言い方にどこか温情的な響きを感じたのだろうか、少年は肩を抑えながら、 「ふざけるなよ。すげえ痛いじゃねぇか。暴力振るうなよ」と若干、強気の、 媚びるか強硬かの二択で後者を選んだのだろう、そういった態度に出た。 「痛かったか」 「超痛いっての、これはひどいって」 このような猿芝居で学校の教師はうろたえたりするのか、 これが普段は通用するのか、と兜は感心した。 少年の肩に手をやり、今度は先ほどよりも強く力を込めた。 少年は悲鳴を上げ、その場にしゃがみ込む。(p.200) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.10.31 20:17:25
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