石井裕之『なぜ、占い師は信用されるのか? 「コールドリーディング」のすべて』(フォレスト出版,2005) その1
石井裕之『なぜ、占い師は信用されるのか? 「コールドリーディング」のすべて』(フォレスト出版,2005) その1総合評価 ★★★☆☆紹 介(ベストセラー『一瞬で信じこませる話術コールドリーディング』(フォレスト出版,2005)の続編です。コールドリーディングというものについて著者は厳密な定義は行っていませんが(アマゾンの著者による本の紹介を読む限りでも前作と本書では微妙に定義も違っていたりしますね…)、占い師やペテン師などがよく用いている技法で1:事前調査のような準備などをすることなく2:心理的・会話的なトリックを用いることで意識されることなく相手の心を読んだり情報を入手するとともに3:短時間で信頼関係を構築してしまう、というもののようです。はっきり言ってしまえば(著者は否定していますが)巷に氾濫しているコミュニケーション術や心理的テクニックに関するビジネス書などと同類の本といっていいでしょう。ただし、紹介されているテクニックは面白く、構成や読みやすさなどの点でも優れており、そうした類書の中でも優れたものと言えるのではないかと思われます(この点類書を読んだ経験がないので断言は致しかねますが…)本書の概要(もう少し細かく) 科学的知見とかそういうものに期待して読む本ではありません。完全にテクニック集、いわゆるHow to本です。そういうわけで述べられていることが正しいのかどうかの検証は自分でやってみるしかないということで本書単独では反証不能なものです。よってそもそも心理学についての充分な知見がない私が本書を内容によって評価すること自体かなり困難です。実践してみた人次第というところになるのでしょう。< 中略 メモ作成中 次回に記載する予定です >雑感・感想など 最初の前書きの部分が結構大げさにコールドリーディングの効力を強調しているのですが、正直言ってそんなにすごい事が書いてあるとは思えなかったです。最初に書いたようによくあるコミュニケーション術や心理テクニックビジネス書と根本的に異なる内容が書かれているとは思えませんでした。 ただし、目新しいのが占い師や自称霊能者の類がどのように人の信用を得ているのか、という問題を中心に据えて、内容のうち前半のかなりの部分と最後の上級テクニックの部分を占い師や自称霊能者がやっていることの種明かしみたいな構成にしている点でしょう。 この点について、私は霊感や占いなどを全く信用しないので当然占ってもらった事などなく、実際のところどうなのかがわからないので仕方なくこの間テレビ東京で放送されている「えぐら開運堂」という番組を見てみました。これがスタッフによる事前調査が行われているいわゆる「ホットリーディング」やヤラセである可能性も否定できないのですが、江原啓之氏の言動を見ていると次回に詳説するような本書で解説されているテクニックのほとんど全てが効果的に情報を引き出すために使用されていることが素人目にもわかりました。別にタネがなくてもこの程度はトリックで何とかなる、という本書の主張はこれを見た限りではそれなりに説得力があるものと思われます。占い師さんは仕事がやりにくくなるんじゃないでしょうかね~ さて、前作もかなり売れたようですが、このタイトルのつけ方はベストセラー『さおだけ屋はなぜつぶれないのか』に似せてあるのでしょうかね?表紙を見ていてもいかにも人目を引きそうな宣伝文句が羅列されており、(著者、出版社どちらのかは分かりませんが)とにかく売ろうとする意欲が前面に出ています。 私の拙い読書記録を多少なりともお読みいただけた方にはお分かりのことと思いますが、敬意を払うに値する人に勧められない限り私はこうしたベストセラーの類には手を出しません。そういう意味で、今回は普通の人はこういうところを見て本を選ぶのか…などとある意味感心させられました。 皮肉のように聞こえるかもしれませんが、日頃ほとんど本を読まないような人が多少でも読もうという気になるのであればこういう商業的な努力というものも社会的に見てまったく無意味というわけでもないように思います。また、内容や書き方もそうしたせいぜい小説かHow to本くらいしか読まない層の人を強く意識して書かれており、私のような変り種の人間には物足りないものの、活字が大きく・行間が広く・実例が多く・例や重要箇所が囲んであり・見出しも非常に多い、など読みやすく、わかりやすくするための工夫が行き届いています。 そういう意味で対象層、目的を絞り込んで作られており、商業的には良く出来ている本なのではないかと思います。それでいて全て洋書とはいえ一応参考文献リストが巻末についているのも多少良心的というべきですかね。(つづく)