《★ETERNAL-MOMENT★2020》 ☆.準備中。.:*・

2006/12/16(土)02:08

■◇■神様に近い場所を探して…。PART38~《12月30日》~・。* 。 +゚。・.。* ゚ + 。・゚・ ■◇■

~《12月30日》~ クリスマスを越えてからはあっと言う間に、 時は過ぎて行った。 僕は変わらず我武者羅な毎日を続けた。 パタリとまたあの声も聞こえて来ない。 そんな事想い出せない位の忙しいカウントダウンの日々だった。 どんなに時間に追われ、 睡眠がしっかりと取れていない日々の中であっても、 必ずぽっかりと真っ白な空間は出来てしまう。 心の隙間を完全に塞ぐ事は不可能だった。 東京を終えると言う事に、 完全に整理が着くわけもない。 僕は自分の中の罪悪感を敢えて時には外に持ち出しながらも、 今の自分の背中を叩き、あおって立てる自分を作り続けるしかなかった。 考え事など無用と知っていても、 どうしてもいらない葛藤は心の中で僕を揺らす…。 それはどうする事も出来なかった。 そして気が付くと12月30日夜…。 年末を明日に感じながら、 一日中あれこれと考え続け、 眠れずに歩き続けていた僕は、 結局この日仮眠が取れず、 深夜のバイトまでの時間、眠気も吹っ飛ぶ程の寒さの中で、 ベンチで過ごす事を選んだ。 服も殆どないに等しい僕は、 実家に戻った時に母が差し出してくれたセーターを下に着込み、 バイト先のスタッフがプレゼントしてくれた二着のスーツのジャケットを、 重ね着し、 その上にマフラーを巻き、そしてその上からコートを着た。 それでも尚を身体の芯から底冷えする寒さに、 新聞紙をベンチに敷いて、 そこに腰掛けていた。 その何とも言えない異様な自分の姿に、 恥ずかしいなどと考えてる場合ではない。 学生らしき子達が、 僕を見てヒソヒソと笑いながら通り過ぎて行く…。 何かを今にも言いたそうな顔をして、 一瞬こっちを見て立ち止まり、じっと見て行く人も居る。 でも、もうそんな光景にもすっかり慣れてしまった。 人は不思議だ。 そこまで立ち止まって、そこまで近付いて来ても…、 話し掛けては来ない。 なるべく目を合わせないようにするコツは覚えた。 でも今日僕の前を通り過ぎる人達は、 少し違う…。 スーツを着たサラリーマンの姿は殆どなく、 足のスネまで届きそうな、 ダウンジャケットを着せられた子供が、 両親に連れられて犬の散歩に来ていたり、 珍しく外人さんが、 薄明かりの電灯の下のベンチに座って、 英字新聞を読んだりしている。 みんな、穏やかな希望に満ちた新年を、 色んな想いで迎えるのだろう…。 今の僕にとって、 一日、二日置きに行く早朝サウナで、 《今から眠れる~!》と想う瞬間と、 このぼ~っとしている時間程、 《倖せ》に感じるひと時はなかった。 そんな僕にとってのスペシャルコースは、 こうしてベンチに座って、 温かい缶コーヒーをゆっくり味わって飲む事…。 いつからか、 この缶コーヒーを買う時には、 僕は決まった台詞を言うようになった。 120円を自販機に入れる。 そして押す瞬間。 《120万円!缶コーヒー!勿体無いけど、  戴きます。》 そう言ってから飲むと格別に美味しい! そんな倖せを噛み締めながら、 僕は缶コーヒーを飲んだ。 時計を見ると、 夜10時を廻っていた。 さすがにほとんど人は通らなくなった。 寒さはどんどん増して、 イメージトレーニングでいくらカバーしようとしても、 ううう! と思わず声を出して足をガタガタ揺らしたくなる程の寒さだった。 去年の今日とは似ても似つかない。 去年キャバレーの司会と、カプセルホテルのフロントのバイトを、 掛け持ちでこなしていた僕は、 年末の一大イベントの司会で、ダラダラ汗を掻いて喋っていた。 そして終わると駆け足で駅に向かい、 フロントに変身する。 年末年始のカプセルホテルの人の混みようは、 半端じゃなかった。 年末も、お正月も僕にはもちろんなかった。 こんな今…年末を、とても感じる…。 もし…、もしあのまま続けていたら…!? 《ヤバイ!》 スクっと僕は自分の思考の流れを変える為に、 ベンチから腰を上げた。 その時だった。 前方にある大きな桜の樹が、 風もないのに、 ざ~っと音を立てて揺れた。 ~流星…ノートを取りなさい。~ これだけ同じ体験を繰り返していても、 この体験は一回一回心ではリセットされているように、 まずは冷静な自分にシフトしようとする心が反応する。 僕は周りをしっかりと見回した。 誰も居ない。 誰一人今通っていない。 そしてまた、 その確認作業を待ってくれていたかのように、 同じメッセージが繰り返された。 ~流星…ノートを取りなさい。~ もう恐怖感は感じなかった。 それは決してこの現象に、 慣れたと言う事じゃない。 そして、神経が図太くなったわけでもない。 むしろ常に情緒不安定で、 心の奥の方では常に神経がピリピリしてる。 ただ、 今もし大地震が起きたとしても、 僕はきっと、そのまま、穏やかにゆっくりと目を閉じるだろう…。 怖いもの…。 僕にとって今怖いものは、 お化けでもない、 死でもない。 そして今の現実の生活でもない…。 本当に怖いものは、 僕の中にある…。 【生きて行かなくてはならない】僕の、 頭のてっぺんから、足の爪の先まで、 ぎっしり詰まった、それでも埋まり切れないでいる位の、 大きな大きな罪の意識…。 そこに触れると自分が冷静でいられなくなる事を、 僕はもう知っている。 歩けなくなる。 一歩も前に進めなくなる…。 家族、助けてくれた友達…、 ごめんなさい…ごめんなさい…と何十回繰り返しても、 それは終わらない。 唯一の薬は【働く事】…。 前に進む為の今…。 その焦点を揺らさない事が、 今は唯一の生きている事の意味。 そんな中でどうしても消えないこの不思議な現象…。 自分の中にあるひとつの事して、 もう飲み込んで生きて行くしかない。 僕はそんな言葉でしか答えを持てなかった。 身体がガタガタする程の寒さだったのに、 気のせいか、 少し身体がポカポカさえして来た。 目の前の樹から、 絶対に暖かいエネルギーが僕に届いてる。 仕事場の近くの公園を選んだ僕には、 まだ出勤の時間までは三時間近くあった。 今日は最後だ…。 ほんとに優しいオーナーのお陰で、 日払いを承諾して貰い、 精一杯の節約の中で、 少しの蓄えが手元に残った。 これを半分でも母に渡したい。 どの位気持ちが伝わるか解らないけど、 安心や僕の覚悟が、ちょっとでも母の心に届けばいい。 そして帰りの航空券のチケットも買った。 年末を避けて、元旦の午後の便にした。 丸三日位ほぼ睡眠がまともに取れていない為に、 時々ふらっとするけど、 明日の朝…いや、昼頃まで続くだろうか…、 気力で頑張るしかない。 だからと言って、この中途半端な時間、 ベンチで仮眠を取るのも爆睡でもしたら怖いし、 何を言われるか解らないけど、 それまでこの声に付き合おうと僕は思った。 僕にとって、 夢から醒めた時のような、 一瞬とも言えるような時間でもあり、 とても、 長い長い時を越えたような気もした三時間が、 ここから始まった…。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.

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