モラルに体当たり記

2006/08/01(火)04:03

音楽座ミュージカル『泣かないで』

もう何ヶ月も前から予約していた音楽座ミュージカル『泣かないで』。 わが愛する遠藤周作の『私が・棄てた・女』が原作のミュージカルである。 『星の王子様』しか観たことないけど、音楽座のミュージカルは音楽も割とよかった覚えがある。 しかも、十数年前、この舞台を見た遠藤周作本人が「このミツ(本作の主人公で、周作の色んな作品に出てくるひと。周作が思い入れの深い登場人物)は自分の思ったとおりのミツ」って言っていたそうである。 そりゃ行くでしょ! さて、問題は誰と行くかである。 私は一人で舞台や映画を見るのがあまり好きではない。 やっぱり終わった後に感動を誰かと分かち合いたいのである。 目に留まったのが、遠藤周作作品をほぼ読んでいるというマイミクA嬢。 実はお会いしたことがないのだが、前からお会いしたいと思っていた。 これはお会いするのにぴったりの機会では? と考え、お誘いしたところ快諾いただく。 わーい。 私は頭のいいちょっと毒のある美人さんが大好きなのである。 頭がよくてちょっと毒があるのは日記を読んでいればわかるし、 美人さんだとは共通の友人から聞いている。 ウキウキ。 これで、終演後、周作話・舞台話に話が咲くにちがいない。 さて当日。 会場前でお会いし、滞りなく開演する。 が、しかし。 終演後のふたり。 私:「・・・・・」 A嬢:「・・・・・」 いや、日本のミュージカルにしては、踊りも歌も頑張ってたよ。(それでも微妙だが) 悪くなかったよ、悪くはなかった。 でもさ、でもさあっ!!!その脚本はないだろー! あの話の中で、一番大事な部分が、ものすごく端折られてるんですけど! 前半のどうでもいい部分に異常に時間をかけているのはまだ許せるとしても、 「さあっ、ここから周作の周作たるゆえん。周作のメインテーマ(愛とは何か、神とは何か)であり、泣き所だ!」 って準備したら、そこがものすごくあっさり流されて、舞台、終わっちゃったんですけど!! え?え?ええええっっ!!これで終わり? その時間配分、完全に間違ってるだろ?! あのね、『私が・棄てた・女』って、ものすごく泣ける話なんですよ。 俺、いっつも号泣ですよ。 なのに、この舞台ときたら、「うるっ」って来たと思ったら、終わっちゃうんだもん。 おおい、あの大事な、シスターの葛藤は?! ミツのやりきれない現世での切なさは?! 人はいつどんなときに神を必要とし、 そして、神はどのように人に答えるかっていう話が、 まるまる、すぽっとぬけてるんだよーーーーう。 そこ取ったら、遠藤周作じゃないじゃん! てなわけで、私とA嬢、ぽかーーん。。。。 申し訳程度に拍手して、食事へ移動。 毒トークを繰り広げる。 ああ、本日の収穫は、A嬢とお知り合いになれたことだけであった。 次は、ブロードウェイかバレエでもいきましょう!>A嬢 家に帰って、周作とV.フランクルを読み返す。 ああ、やっぱりいいなあ。 私は品性を大事にしているし、 最近話題の『国家の品格』なんてのも確かに重要なものだと思うけれど、 人間にといって本当に大事なものは、こういう優しさだ。 決して強さだけではない。 むしろ弱さの中に、消えそうな輝きできらめくようなもの。 でも、それだけが、人間が弱いだけの、卑しいだけの存在ではないと、教えてくれる。

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