February 22, 2006

書評:『オニババ化する女たち』 by 三砂ちづる

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ずいぶん前に買って、そのときは「うーん、この人を教授にしている津田塾って大丈夫か?」と思ったものだが、私の愛読するブログの持ち主が、この本(および著者)を評価していたので、再度読み直してみる。

本書の基本的な内容&雑誌記事などから推察するご本人が読んで欲しいポイントを要約すると、
1)「からだの声にもっと耳を傾けましょう」
2)「出産は素晴らしいものだから、怖がらずに経験してみましょう」
3)「もっと家族や地域住民どうしで助けあう社会を作りましょう。」
4)「セックスライフを充実させましょう」
ってことである。(たぶん。)

で、この4つを実現する方法として「(近代化する以前の)昔の人間には、そういう習慣や本能が備わっていたので、そこに回帰しましょう」といっている。

基本的には、近代化への批判であり、言ってることそのものは「ま、そういうことも必要かもね」ってくらいには納得できることである。
若年出産のススメなど、「これアリかもね!」っていうようなことも言ってる。(でも、今の日本の労働市場の現状を考えるに実際には厳しいけど)

しかしながらです。
現状認識にしろ、使ってくる事例にしろ、どうにもこうにも古い。
また、明らかに知識が偏っており、ものすごく勉強不足。
さらに、論理展開がまったくもってずさんで、ちょっと考えてみると、あれ?さっき言ってたことと矛盾しねぇ?ってことが盛りだくさん。

それが、本書の最大の問題であり、それがゆえに批判されてしまうのだと思う。(って、かなり致命的な問題だけど)

ついでにすごいのが、
「大して才能もない女子には、結婚&出産という、女性の本能を活かし、社会に貢献する道があるのだから、自己実現だの考えずに、相手に顔だの金だの条件をつけず、とりあえず誰でもいいから結婚して、子どもを産みなさい!」
って言ってるとこだ。いやすごい。ここまでは私も言い切れない。

(いや、ほんとに『大して才能のない』『生命力の弱い』『大多数の普通の女性が心配』、って言ってるんだよ。すげぇ。)

もちろん著者は、第三世界のリプロダクティブ・ヘルスに現場で携わってきた方で、学問的知識が乏しいのは当然かもしれない。

それを差し引いても、やっぱり使われている事例があまりに偏っているのと、現羽状認識がかなりズレてるのはいかがなものかと。
色々突っ込みたいが、突っ込みどころがあまりに多くて、書ききれない。(文末に少し例をあげておく。)
ここまで、論理展開に突っ込みどころ満載ということは、むしろ著者が意図的にやったとしか思えないほどだ。いや、そうに違いない。

総じて、
「この本にある相当思い切った論理の飛躍を、読者を笑わそうとして戦略的に書いたのなら、頭のいい人」
だが、
「これを本気で書いてるのなら(もしくは本気で書いてこのレベルなら)、イタイ人」
というところなんじゃないでしょうか?


ほんとに、笑わせようとしてるのか、大まじめなのかがわかりにくいんですよ。
前者だとしても、もう少し笑わせる文章のトレーニングが必要かと思われますが。

というわけで、ぜひ、著者には、次の本で
>『大して才能のない』『生命力の弱い』『大多数の普通の男子』は、次世代を守り育てるという社会に貢献する道があるのだから、中絶しようとしている妊娠した女子を引き取って結婚し、妻と子どもを養うために、一生懸命働きなさい!
という本を書いてもらいたい(w。

だって、『大して才能のない』『生命力の弱い男子』の子どもを残してもしょうがないでしょ(w?

もちろん『大して才能のない』『生命力の弱い女子』の子どもも残してもしょうがないんだけどさ、
女子の場合、1年に1人しか産めないっていう限界があるし。

『大して才能のない』『生命力の弱い女子』の方が大多数である以上、『才能のある』『生命力の強い女子』は少数なわけで、彼女たちだけでは人口を維持するのは10人とかうまなきゃならなくて、たいへん。

しかも、才能ある彼女たち(芸術家や聖職者など)には『(その才能を使った)特別の使命』(by 三砂さん)があるわけで、そうそう出産&子育てなどにかまけてられないはず。

しかたないので『大して才能のない』『生命力の弱い女子』にも、お腹を貸してもらおうじゃないかと。

いやー、そんな本を出してくれたら、最高に面白いのに。



(*事例がずさんな例1)たとえば、著者は、えらく『昔の知恵』がお好きなようで、「ポリネシアのある部族では、排卵を知ることで(コンドームなどを使った)避妊をしなくても子どもの数は適正に保たれていた」などの例を出していますが、日本では、柳田邦男が書いている男女一人ずつの子ども「ツヴァイ・キンダー・システム」(子どもは二人制)とか、いわゆる「口減らし」で里子に出したり女郎屋に子どもを売ったり、出産後調整の方が一般的で、(日本の昔には)そんな出生コントロールの知恵なかったんだけどな。

(*事例がずさんな例2)彼女は、『性欲を抑えるとオニババになるから、開放しろ』といっているわけですが、今アフリカでは、どれほど出産制限しようとがんばっても、「セックス以外楽しみがない」ため、ばんばんセックスしてばんばん子どもができてしまう(で、人口爆発と飢餓と環境破壊がものすごい勢いで進行している)という現実があるわけですが、そういう人には、彼女はどう指導するのかな?(むしろ彼女はこっちの専門家だと思うんですけど。)

(**現状認識がずれてる例1)
彼女の不思議な前提は、「出産しないのは痛いのがイヤだからである」というところだ。
「痛いのがイヤだから生まない」というのは、『負け犬の遠吠え』に書かれていた考え方である。著者はこの本を読み、意見をまともに受け取ったのだろう。そこで、「痛いからイヤなんていわず、そんなに痛くも苦しくもないのよ」という風に諭している。
しかし、実際、人は「痛いから産まない」のだろうか?
明らかに違うだろう。
多くの場合、「育てられない(=お金がない、面倒を見る人がいないetc)から産まない」のである。

私だって、産むだけでよければ、むしろばんばん産みたい(w。
著者も言っているように「40代50代になって、子どもを産んでおけばよかった」と後悔したくないし、「子育てって面白そう!」という好奇心もある。
ジェーン・バーキンのように、色んな男の子どもを一人づつ持つのも面白そう!
まあでも、今の状況じゃ育てられないもの。産めません。
(ちなみに日本の中絶30万件のうち、実は半数以上は夫婦間でできた子どもの中絶であり、「育てられない」から産まないのですね。)

(現状認識がずれてる例2)
彼女は「10代でさっさと出産しちゃって、働き盛りといわれる40代くらいに働き始めればいいじゃない!」といっています。私もそれはアリだと思う。
(1)『子育ての期間、(国でも夫でもいいけど)誰かが食わせてくれて』、
(2)子育てが終わったら、『働く先』が見つかる、のであるならば。
けれど、残念ながら、今の日本の労働市場の状況では(1)も(2)もとっても難しいんだな。

第一に専業主婦の妻と子どもを養えるだけの仕事に就ける男性が減っていて、男性も自分で食べるだけで精一杯だし、第二に、子育てという長期のブランクがある女性を正社員として普通に雇おうなんて企業は皆無に等しい。





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Last updated  February 22, 2006 05:18:21 PM
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