本日も、桜木町事故の審問の議事録から始めたいと思います。
引き続き、信号担当者の高原証人の審問となりますが、全体を見る感じでは、信号掛の担当者自身の職責に関する考え方が今ひとつ無責任に感じてしまいます。
特にそれを責めても仕方が無いのですが、仕事の受け止め方として、どこか他人事のように聞こえる部分が多少なりとも感じてしまいます。
電力工手長の会話には関心を示さなかった?
かなり双方に発言には、自身の保身のためと言えそうな部分があるようにも見えます。
ここで、注目すべきは信号所は、非常に狭い場所であると言いながら、中澤工手長の電話の内容は知らないと言うことで、狭いところと自ら言いながら。内容を全く聞こえなかったのかという質問をされており、この時点で多少ですが証言に揺らぎがあるように感じられます。
あくまでも、詰所かどこかに連絡している程度にしか見ていなかったと説明しています。
○内藤(隆)委員 それでそのとき血相でもかえておったのかね。
○高原証人 別にそんなようでも……。
○内藤(隆)委員 平生通りにのこのこ入つて来たのですか。
○高原証人 そうでもないようです。さつさつと入つて来た。ごく狭いところですから、いくらもないところですから、そんなに飛んで歩くほどのところでもないから、ささつと入つて来て、すぐ電話でもかけるというふうにして、やつちやつたと言いながら、すぐ私の前の方へ来て、電話をかけようとした。何かあつたのかつて私が聞いたら、上りの電車を出すのはちょっと待つてくれと言いました。
○内藤(隆)委員 いやその辺になると、双方そのときの記憶とか、あるいはああいう大事件になったので、双方が自分の立場を考えての証言かもしれませんからそれ以上突いてもしかたがないと思います。
○福田(喜)委員 証人に二、三点お伺いしますが、あなたはさつきこういうことを言われましたが、信号所の中で大船かどこかに電話を中澤さんがしたが聞えなかつた。何を言っているかよくわからなかつた。あなたのさつきの話では、信号所は狭いところだ。電話をかけるのに、あなたが信号所の責任者でありながら、その電話で連絡をするのにどんな話なのかわからなかつたのですか。
○高原証人 中澤さんの電話の内容は……。
○福田(喜)委員 そんな狭いところでわからないのですか。―あなたさつきは大船かどこかに……。
○高原証人 大船か、電力区かへ、何でもけが人か何かの救護関係の材料の……。
○福田(喜)委員 大船へけが人の救護やなんか電話するのは普通ですか。事故かあつたときに。
○高原証人 それは知りません。
○福田(喜)委員 それを想像するのはどういうわけですか。
○高原証人 それははっきりわからなかつたのだけれども、工手長が自分のつめ所へかけたのだろうと思いました。
当日の信号扱いの責任者は誰か?
証人の信号掛は、電車が遅れることは事前には駅から知らされていたが、今回の被災した電車が遅れると言われていた電車ではなく、後続の電車であるのでは無いかと漫然と判断しています。
当然のことながら、電気工事の担当者は、それが何時何分発の電車かと言うことは、知らない訳ですから、きちんと状況を確認すべき事柄ではありますが、その辺を十分確認すること無く、漠然と過ごしています。
更に、審問では、信号所の責任者は誰なのかということで質問がなされています。
ここでも、責任を回避したいからなのか否かは判りませんが、質問の趣旨に対して論点をずらせるというか、矛盾した発言などに終始しています。
結果的に、審問委員からの印象は、責任を感じているとは思えないと思われても仕方が無いような発言になったと言えそうです。
○福田(喜)委員 国電の指揮命令と申しますか、組織と申しますか、これは非常に重要な問題だと考えるので、ひとつ観点をかえてお尋ねしますが、信号所の責任者は一体だれかきまつているのですか。
○高原証人 責任者は、その信号に携る者が重大な責任を持つことになる。
○福田(喜)委員 あそこに信号取扱所とか何とか書いてありますが、あれについて責任者はだれもいないのですか。二人おりまして……。
○高原証人 二人おりまして、当日……。
○福田(喜)委員 当日ではない。責任者はいないのですか。
○高原証人 信号所の責任者というのはきまつてないと思います。
○福田(喜)委員 あなたは何もそれについて上司から話を聞いたことも、命令を受けたこともないのですか。
○高原証人 ありません。
以上のように、信号所の責任者と言えるものは決まっていないと発言しており、それに対して、指揮命令系統なども気にせずに漠然と仕事をしているのかと詰問されていますが、その質問も上手くかみ合っていないように感じます。
信号の操作に対しては責任は負うが、最終的な責任者と言えるものは自分ではないとして、当日の同僚の名前を挙げています。
ただ、最終的な責任者はこうした駅の場合は駅長になると思うのですが、少なくとも信号を厚かった時点で責任があると言いながら、その日の責任者と言えるのは同僚であるとしている点は、委員をして誠意が感じられないと指摘されるのはやむを得ないように感じてしまいます。
○福田(喜)委員 それじやあそこへ行って、請負か何かで仕事をやっているように、指揮命令も何も、そんなことをいささかも気にとめずにやって来たのですか。どういう気持であそこで働いておったのですか。
○高原証人 どういう気持っていいますと……。
○福田(喜)委員 その信号所それ自身の責任者、それから上司の指揮命令系統はきまつていない、自分も知らぬとあなたはさつき言つたが、普通駅長から助役さんの場合もあるし、東京駅みたいなところは信号掛とか、そういう人がやっているということを聞きましたが、その指揮命令の系統はきまつていないのですか。
○高原証人 指揮系統はきまつているのです。
○福田(喜)委員 あなたはさまつておらぬと言うたが……。
○高原証人 先ほど申し上げました信号所の中の責任者というのは、つまり当日の二人でやっていて、そうしてどつちでも信号に携わつた者が信号に対する責任を持つことになっております。
○福田(喜)委員 信号に携わつた者はその信号に対して責任を持つでしよう。私が言うのは、信号所の責任者とか、指揮命令については、上司からそういう訓練も何も受けていないかというのです。
○高原証人 大体において当日の信号所の中の責任者は寺山さんでしよう。
○福田(喜)委員 でしようといつて、当日はどうかしりませんが、一般について何もそういうことはないのですか。
○高原証人 やはり責任者はあるんでしようけれども、これが責任者だとか何とかいうことは聞きませんでした。
○福田(喜)委員 あなたあすこでどういう気持で働いているのですか。国電の運転が自今の信号によってこういう事故が起きるということを意識しておられたのですか。そういうふうな気持で自分の責任は痛感しておられるのですか。
○高原証人 それは細心の注意をしております。
○福田(喜)委員 細心の注意といつて、さつきからのあなたの証言を聞いていると、ちつともそういう心証を得られません。
それじや証人にお尋ねしますが、あなたは職務上の事故で懲戒とか処罰とかを受けたことはありませんか。
○高原証人 受けたことはありません。
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○内藤(隆)委員 それでそのとき血相でもかえておったのかね。
○高原証人 別にそんなようでも……。
○内藤(隆)委員 平生通りにのこのこ入つて来たのですか。
○高原証人 そうでもないようです。さつさつと入つて来た。ごく狭いところですから、いくらもないところですから、そんなに飛んで歩くほどのところでもないから、ささつと入つて来て、すぐ電話でもかけるというふうにして、やつちやつたと言いながら、すぐ私の前の方へ来て、電話をかけようとした。何かあつたのかつて私が聞いたら、上りの電車を出すのはちょっと待つてくれと言いました。
○内藤(隆)委員 いやその辺になると、双方そのときの記憶とか、あるいはああいう大事件になったので、双方が自分の立場を考えての証言かもしれませんからそれ以上突いてもしかたがないと思います。
○福田(喜)委員 証人に二、三点お伺いしますが、あなたはさつきこういうことを言われましたが、信号所の中で大船かどこかに電話を中澤さんがしたが聞えなかつた。何を言っているかよくわからなかつた。あなたのさつきの話では、信号所は狭いところだ。電話をかけるのに、あなたが信号所の責任者でありながら、その電話で連絡をするのにどんな話なのかわからなかつたのですか。
○高原証人 中澤さんの電話の内容は……。
○福田(喜)委員 そんな狭いところでわからないのですか。―あなたさつきは大船かどこかに……。
○高原証人 大船か、電力区かへ、何でもけが人か何かの救護関係の材料の……。
○福田(喜)委員 大船へけが人の救護やなんか電話するのは普通ですか。事故かあつたときに。
○高原証人 それは知りません。
○福田(喜)委員 それを想像するのはどういうわけですか。
○高原証人 それははっきりわからなかつたのだけれども、工手長が自分のつめ所へかけたのだろうと思いました。
○福田(喜)委員 あなたは、中澤氏が飛んで来て上りの電車を出すのを待て、着は大丈夫だと言つたというのですが、そのとき信号所から見て上りの電車は駅におりましたか。
○高原証人 おりません。
○福田(喜)委員 着は大丈夫だと言つたが、着の電車が来ておるか来ていないか見えましたか。信号所から見えるでしよう。
○高原証人 着ですか。着の電車はまだ入つておりません。
○福田(喜)委員 上りの電車を出すのを待てと言つたということですが、桜木町駅には上りの電車はいなかつたのですか。
○高原証人 いなかつた。
○福田(喜)委員 それをふしぎに思わなかつたのですか。
○高原証人 その七一Bという事故になった電車は八分ないし九分遅れるというホームの方からの通知を受けまして、それがすでに四十分にもなっているし、時間が遅れて来るというと後続電車ということも考えなければなりませんから、下りの電車――上りの電車――そういう場合には後続電車ということを考えなくちやなりません。後続電車は……。
○福田(喜)委員 そういう後続電車とか何とかということを工手長が言うて来ますか。
○高原証人 工手長は言うて来ません。私のところでそれを考えてたのです。
○福田(喜)委員 あなたの方で考えるのはかつてに考えるのですが、そういうことを考えるのはおかしいことです。工手長はそういうこと、電車が七一Bか何が来るかわからないでしよう。
○高原証人 工手長には七一Bとか後続電車とかということは話はしません。
○福田(喜)委員 国電の指揮命令と申しますか、組織と申しますか、これは非常に重要な問題だと考えるので、ひとつ観点をかえてお尋ねしますが、信号所の責任者は一体だれかきまつているのですか。
○高原証人 責任者は、その信号に携る者が重大な責任を持つことになる。
○福田(喜)委員 あそこに信号取扱所とか何とか書いてありますが、あれについて責任者はだれもいないのですか。二人おりまして……。
○高原証人 二人おりまして、当日……。
○福田(喜)委員 当日ではない。責任者はいないのですか。
○高原証人 信号所の責任者というのはさまつてないと思います。
○福田(喜)委員 あなたは何もそれについて上司から話を聞いたことも、命令を受けたこともないのですか。
○高原証人 ありません。
○福田(喜)委員 それじやあそこへ行って、請負か何かで仕事をやっているように、指揮命令も何も、そんなことをいささかも気にとめずにやって来たのですか。どういう気持であそこで働いておったのですか。
○高原証人 どういう気持っていいますと……。
○福田(喜)委員 その信号所それ自身の責任者、それから上司の指揮命令系統はきまつていない、自分も知らぬとあなたはさつき言つたが、普通駅長から助役さんの場合もあるし、東京駅みたいなところは信号掛とか、そういう人がやっているということを聞きましたが、その指揮命令の系統はきまつていないのですか。
○高原証人 指揮系統はきまつているのです。
○福田(喜)委員 あなたはさまつておらぬと言うたが……。
○高原証人 先ほど申し上げました信号所の中の責任者というのは、つまり当日の二人でやっていて、そうしてどつちでも信号に携わつた者が信号に対する責任を持つことになっております。
○福田(喜)委員 信号に携わつた者はその信号に対して責任を持つでしよう。私が言うのは、信号所の責任者とか、指揮命令については、上司からそういう訓練も何も受けていないかというのです。
○高原証人 大体において当日の信号所の中の責任者は寺山さんでしよう。
○福田(喜)委員 でしようといつて、当日はどうかしりませんが、一般について何もそういうことはないのですか。
○高原証人 やはり責任者はあるんでしようけれども、これが責任者だとか何とかいうことは聞きませんでした。
○福田(喜)委員 あなたあすこでどういう気持で働いているのですか。国電の運転が自今の信号によってこういう事故が起きるということを意識しておられたのですか。そういうふうな気持で自分の責任は痛感しておられるのですか。
○高原証人 それは細心の注意をしております。
○福田(喜)委員 細心の注意といつて、さつきからのあなたの証言を聞いていると、ちつともそういう心証を得られません。
それじや証人にお尋ねしますが、あなたは職務上の事故で懲戒とか処罰とかを受けたことはありませんか。
○高原証人 受けたことはありません。
○福田(喜)委員 事故を起したことはありませんか。
○高原証人 事故らしい事故を起したことはないと思います。
○福田(喜)委員 ないと思いますというけれども自分のことですから……。ありませんか。
○高原証人 ないと思います。
○福田(喜)委員 それからもう一つ。あなたはずいぶん長くこういう仕事をやっておりますが、職務上鉄道職員の熱心さとか職務に対する責任感というものは、最近と戦時中と戦前とでは非常に違いやしませんか。
○高原証人 違うように思います。
○福田(喜)委員 どういうふうに違いますか。
○高原証人 戦前は非常にりつぱなような観念を持っていたと思います。それから戦時中ややだれぎみで、戦後はまたよくなったと思います。
○福田(喜)委員 あなたはどういう気持で働いておられますか。普通と同じような気持ですか。
○高原証人 私は誠心誠意働いております。