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カテゴリ:本のレビュー
山岸凉子の最新作、『ヴィリ』。 ようやく単行本を購入して読みました。 『テレプシコーラ』に続く、バレエを題材にした作品です。 今度の主人公は多感な少女世代ではなく、プリマをつとめる43歳の女性。 己にも他人にも厳しくバレエ団を率いる彼女は、IT企業の社長というパトロンを得て、彼に想いを寄せ始めます。 ただ、女手一つで育てた娘はバレエに伸び悩み、拒食気味。 そんな問題を抱えつつ、バレエ団は新たな演目「ヴィリ」を公演することに。 ヴィリ(ウィリー)とは結婚前に亡くなった女性の精霊で、男性をとり殺すとも伝えられる存在。 そこへ以前バレエ団を出てドイツに移籍していたダンサーが戻ってくることになり・・・ 年齢を重ねた女性の、誇りと嫉妬、恋と焦燥。 相変わらず人間の心理を細やかに描き出す手法には感服です。 雑誌連載の最初数回を読んだときは、これって?とイマイチだったんですが、この物語の面白さは後半を読まないと分かりません。 重いテーマですが、読者をグイグイ引っ張ってラストまで放しません。 いや、すごく面白かった! 『ヴィリ』では、山岸凉子がこれまでの作品で使っていた手法を逆手にとる仕掛けがあります。 ファンにとっては、「あ、またこう来たか」と思わせといて「何ィ?!」みたいな。(笑) 数年前までの作品には、出口の見えない奈落の底で終わるような話が非常に多かったですよね。 男性の身勝手と女性の業の集約みたいな作品が。 でも最近見られるように、『ヴィリ』は救いのあるストーリーです。 大団円ではないけれど、ちゃんと救いが用意されていて、読者としては肩に入っていた力をホッと抜けるような物語が嬉しいです。 それにしても、山岸凉子の描く幽霊(この物語には霊が出てくるんです!)って、どうしてこんなに怖いんでしょう。 ほんの数本の線だけで表現してるのに、リアルに描かれるよりよっぽど恐怖ですよ。 見た瞬間、心の中で「ギャァァァ!」とビビりました。 ほんと、怖かった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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