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2010/04/19
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今回は2話連続のアップです。18日に掲載分の「奸計(1)」からお読み下さい。

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鐘の音と共に、審問が再開された。
ダン、と重く鈍い音をあげて、厚みのある紙束が机上に置かれる。
「我々はここに、グストー・イグレシアスの記した覚え書きを提出いたします。いくらか読み上げてみましょう。日付は1789年5月13日・・・エグモント公が亡くなられる、ふた月ほど前。」
審問官はファイルから数枚を選び出して、この擬似裁判の聴衆に向かって掲げて見せる。
音読されていく記録には、グストーが行った塩素酸カリウムの実験が詳細に記されていた。
エグモントの銃の暴発を招いたとされる物質をグストーが所持し、兵器としての有効性を認識していた証拠だ。
入念に管理されているはずのグストーの記録を、誰が持ち出しジークムントに手渡したというのだろう。
しかし被告席に立つレティシアに衝撃を与えたのは、次に証人席へ連れ出された人物の姿であった。
「イルゼ・・・・?」
騎士フォルクマールの妻であり、女王付きの侍女の中でも最も寵愛を受ける娘。
レティシアとグストーの道に外れた関係も含め、宮廷内の事情をよく知る人間の一人であると目(もく)されている。
愛らしい面立ちに憔悴の色をにじませ、イルゼは証言台で口を開いた。
「・・・・お許し下さいませ、陛下。事ここに至っては、ありのまま事実を語るしか術がございません。」
吐息と共に、イルゼの頬に一粒の涙がこぼれた。
「私は宰相イグレシアス様が・・・いえ、当時は法衣をまとう聖職者であったグストー殿が、エグモント殿下暗殺を企てているのを知りながら、沈黙しておりました。」
参席する諸侯達が一斉にどよめく。
「エグモント様はグストー殿を激しく憎み、追放しようと画策されていた・・・その先手を打って、グストー殿が銃に細工をほどこしたのです。」
「嘘だわ!」

鋭い一声が上がる・・・レティシアだ。
「嘘よ!イルゼ・・・どうしてなの!何故そのような偽りを!」
思わず声を荒げたレティシアの顔は青ざめ、固く握りしめられた手が怒りに震えている。
ジークムントに拘束されて以来、初めて彼女が見せた狼狽だった。
「ご静粛に願いましょう、陛下。さてイルゼ殿、貴女はどうした経緯で重大な秘密を知ったのです。」
「・・・行儀見習いであった私は、ある時グストー殿のお部屋へ御用うかがいに行き・・・偶然、エグモント公の猟銃を手にしているのを目撃してしまったのです。」
「その時、グストー殿は何と?」
「宮廷を追われたくなければ、決して他言してはならぬと念を押されました。陛下にも言ってはならないと・・・その二日後、銃の暴発でエグモント殿下が亡くなったのです。」

偽証だ。
思考の麻痺していたレティシアにも、ようやくイルゼの意図が見え始めた。
軍事力を背景にした公爵の執拗な追究は、グストーとレティシアを夫殺しの共謀者に仕立て上げてしまうだろう。
彼女は真実を通すよりも、エグモントの死をグストー一人の罪と証言することで主君を守るつもりなのだ。
だが、しかし・・・イルゼが独断で、このように大胆な賭けに打って出るだろうか。
レティシアが振り返ると、証言台の真向かいに座るジークムントが脚を組み直し、満足げな笑みを浮かべていた。






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Last updated  2010/04/19 03:28:01 AM
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