愛すべき魔性たち あとがき&人物考
馬が好きです。数年前、競走馬の美しさに魅せられた私は、競馬中継を欠かさずチェックし、「サラブレ」を愛読し、府中に通い、ダビスタで並みいる男性共を蹴散らし(何)、深夜のコンビニで東スポを買っては、そこでバイトする先輩(男性)に、「女がそんなもん買うなー」とお叱りを受けていました。走る姿の美しさ、フォルムの優雅さ、レースの奥深さ、血統のロマン・・・。なのに、私の知人共ときたら、「ブラックは筋肉フェチだから、馬が好きなんだよー」などと下世話な事を言うので、許しがたい。(笑)馬を描くのはとても楽しいです。2年ほど前、山岸凉子の『妖精王』という漫画からインスピレーションを得た私は、「水棲馬」を主人公に物語を作ろうと思い立ちました。メインテーマは、「人間になる」。水棲馬にも種類があり、人を水に引き込むアッハ・イシュカ(イギリス本土)、さらに凶暴で人間や家畜を食べるケルピー(イギリス、マン島)などがいるそうです。「食人によって魔物(あるいは獣)が人間になる」というのは、神話や伝説によく見られるストーリーですが、水棲馬自体にそういった伝承があるかは未確認で、この話のために私が勝手に創作した部分です。そんなわけで、「人間になるため人を襲う馬」と、中世風の「ぱっつん騎士」(髪型が。実は『妖精王』の主人公が「ぱっつん」な少年なのです!)を描きたいという私の二大欲求を満たすために、落書き漫画を描いたのは1年ほど前。それを小説にしたのが、今回の「水棲馬」というお話です。「僕はただ・・・ただ君を抱きしめる腕が、欲しかった・・・」始めにこんなセリフが浮かび(これはラストで少し形を変え、アーテルのセリフにしました)、この1行を書くために、延々お話を紡いできたわけです。(汗)それでも「水棲馬」本編は400字の原稿用紙で42枚分・・・私にしては、かなりコンパクトにまとめる事ができたと思います。当初は、中世に生きるアーテルとクローネ、ランスしか考えていませんでしたが、楽天で発表するにあたり、イシュカ、ロマの二人を作って、彼らに伝説を語らせるオムニバスにしたら面白いかも~(根拠無し)と思い・・・アーテルの二面性(凶暴性と、無邪気な純粋さ)から「無邪気さ」だけを取り出して生まれたのが、イシュカです。結果的に、イシュカは読者様(特に女性v)のご支持を頂く人気者になってくれたようで、作者としては、有り難いことと感謝しております。さて、最後に人物について、コメントを少々・・・・。【アーテル】最初から「凶暴さ、残酷さ」は強調しようと思っていましたが、ここまで非道なことをするとは・・・(汗)。書いていて、自分が怖くなりました。すべてはクローネへの想いの強さゆえの行動ですが、最後まで人間とは相容れない存在の彼。許されぬ愛の切なさが表現できていればいいな~と思います。【クローネ】アーテルを愛しつつ、人間としての「正しさ」は決して忘れない女性。当初の予定では、アーテルを射た後、泉に身投げのはずだったのですが、あまりに悲惨&泉はそんなに深くないっぽい(笑)という理由で、東方に旅立つことになりました。【ランス】最初は完全な脇役のつもり(おかしな髪型が描きたかっただけ)でしたが、書き進める内に、「ランス好きだぁぁーー!!」という気持ちが沸騰してきました。なぜ?!アーテルさえいなければ、クローネとは良い夫婦になったと思われます。婚約者にはフラれる、腹心には死なれる、たぶんこの後マチウス公に怒られる・・・一番悲惨な人かも知れません。強く生きて下さい。。。【イアン】・・・・・・再起不能にして、ごめん。。。結構、好きでした。【イシュカ】お馬鹿ですね。お子様ですね。好きだ~!!ところで、何故彼はお馬鹿なのでしょう??一応、(馬の1年は人間の4年分だから)体は大きくなっても、心は修練の年数が足らず、子供っぽいんだ・・・みたいな理由を考えていたのですが、彼は彼として、本来的にお馬鹿なんじゃないかと・・・最近はそう思い始めました。【ロマちゃん】以前は夢想家のお父さんに、今はお子様イシュカに振り回され、苦労の耐えない人ですね。性格的に強く、我が道を行くタイプの少女らしいのですが・・・。泣く子には勝てない??さて、水棲馬のお話が終わっても、イシュカの物語はまだまだ続きます。次の伝説の舞台は日本。今回よりは、ずっと読後感の良いものになるはずです。(・・・・っと、その前に、『天黒』の第2部を進めないと・・・ですね。)ではでは、今後ともイシュカとロマちゃんを宜しくお願いします。