あるマスコミ関係者の告白

2007/09/11(火)23:15

20年目の印度再訪記<その2>

旅行生活(50)

「到着までの遠い道のり」の巻 機内に向かう通路の途中で、かなり厳重な身体検査とバッグの中身のセキュリティチェックを受ける。一週間前にも、南部のハイデラバードで死者40人以上という爆破テロがあったし、ここ数年インド国内はかなり不安な情勢であることをあらためて思い出す。かつて訪れた北部のカシミールなんかは、現在印パ停戦ライン最前線の緊張状態極限エリアで、もはやあの頃のようにツーリストが気軽に立ち寄れる場所ではなくなってしまったし。 座席に着いて見回すと乗客数は座席の半分程度で、さきほどの香港人ツアー客以外では、いかにも大柄な黒人の一団がいて、ちょうどこの日まで大阪で開催していた「世界陸上」の選手団かと思われる。あとは、若者を中心にした日本人が十数名といったところか。エアインディア機は予定のちょうど一時間後に、短い助走から一気に飛び立った。 機内サービスは思ったよりも充実していて、食事の前から何度も何度もスナック菓子(まずい)の袋を置いて行ってくれるし、「ジュース?ビール?ワイン?」と、こちらから何も言わなくてもドリンク類もせっせと持ってきてくれる。最初の食事は、チキンカレー。インディカ米を間に挟んで、片方がチキン、片方がベジのカレー。機内食としては、まぁまぁの味か。それにしても、ビールとワインをドドッと数本づつくれるので、ありがたいが処理するのに忙しい。 3時間半後、香港に着くと約9割の乗客が降りてガラガラになる。ここから先は好きな座席に寝転び放題かと思いきや、入れ替わりにまたほぼ同数の新たな乗客が入ってきた。1時間後に香港離陸。またもや機内食とビールとワインとウイスキー攻めに遭うが、もう飲めないし食えないので死んだふりをしているうちに、そのまま眠ってしまった。およそ5時間後、気がつくと機体はすでにデリーに向けて降下中であった。 さて、20年ぶりのインド入国第一歩目は、ここデリーである。到着時刻はローカルタイムで夜の9時半。思ったほどの遅れではない。ところが、エスカレーターで入国審査のフロアに降りていくとそこはもう人人人の洪水。しかし何百人待たせていようが子供たちが泣こうがわめこうが、インドのお役人たちはまったく意に介さず、持ち前の権威主義的横柄さとマイペースを保ちながら対応するのみで、行列は遅々として進まない。結局、到着ロビーに出たのは11時を過ぎていた。 今回、初日だけは宿の予約を入れていて、ついでに空港からの送迎もするというので、ピックアップを頼んでいた。しかし出口で自分の名前のプラカードを探しながら歩くが、見当たらない。もう一度通路を逆戻りしながら見るが、やはりない。 いったん隅のベンチに座り、念のために出国前にレンタルしておいたドコモの海外用端末の電源を入れ、宿のオーナーに電話を入れる。「あのさー、迎えがいないんだけど」と言うと、「そんなはずないよ。1時間以上前から背の高いおじさんが待ってるはずだよ」との返事。仕方なく、もう一度ぐるぐる探して歩くと、あったあった。が、ワタシの名前が書かれたプラカードが手すりの端に括り付けてあるだけで、人がいない。周りで客待ちしているインド人に聞くと、ロビーの端っこで何やら電話をしている長身の老人のところに連れていってくれた。あー、背の高いおじさんって、このジイさんか。ところがこのジイさん、やたら長電話で、一体どこの誰と話しているのか延々と話し続けていて、一向に終わる気配がない。自分の仕事忘れてないかい。横の地べたに座り込んで待つこと30分、ようやく電話が終わったのでジイさんに自分の名前を告げると、おーそうかと思い出したようにワタシを連れて空港の外へと歩き出す。頼むでしかし。 空港の裏手にある駐車場に向かって真っ暗な道を歩く。なんとも懐かしいインド独特の匂い。一緒に歩くのはワタシの他に、白人のカップルが一組。おっと、牛。牛また牛。空港のまわりは巨大な牛だらけ。白人の若者は、ロスから来たスティーブンという。ホテルを聞くと、ワタシとは別のところ。なるほどこのジイさんはあちこちの宿から送迎を委託された業者で、同じ方向の客はまとめて相乗りしていくということか。駐車場で待っていたクルマにはドライバーの男が待機していて、我々が乗り込むとすぐに走り出した。が、走り出して30秒後、駐車場内のクルマ止めのコンクリートブロックに激突。さらにコンクリートブロックを無理やり乗り越えようとして車体を乗り上げたところで動かなくなりエンスト。むちゃくちゃするなあ。一旦降りて皆でクルマを押して地面に降ろし、ようやく走り出す。 ところが、クルマはワタシの宿と逆方向に走り出す。「おいおい、どこ行くの?」と聞くと、「この先に別のクルマが待機してるからキミだけそれに乗り換えてくれ」と言う。どういうシステムやねん。10分ほど走ったところで、確かに待機していた別のクルマに乗り換え、いよいよ宿に向けてGO。と思ったら、まもなく今度はこのクルマが検問で停められ、およそ30分近く警官からコッテリ絞られている。何なんだいったい。でもいーんだよ、グリーンだよ。怒らないよ。これがインドだからね。 やっとのことで宿に着いたのは、午前0時半。空港についてから3時間半も経っている。さすがにちょっと疲れた。 部屋に入りシャワーをしようと思って蛇口をひねると、一応お湯は出るようだ。が、シャワーからは5本ぐらい糸状にピロリ~としか出てこない。むむむ。でもいーんだよ。よくあることだよね。インドだからね。横のバケツに溜めて洗えば問題ないよね。うんうん。 シャワーを終え、天井の巨大なファンがぶんぶん回るベッドに腰掛けて、とりあえずひとり静かにインド再訪の祝杯をあげる入国初日の夜であった。

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