CMOSカメラの冷却時と非冷却時の画像の違い。
撮影日は2022年8月19日。一日前の18日も晴れて撮影しましたが、ガイドが荒れてボウズでした。原因は、赤道儀のベルトのゆるみでした。とにかく、7月4日以来の撮影です。南関東は本当に晴れません。世情と同様です。 今回は、以前より疑問に思っていたことを実行してみました。CMOSカメラの冷却って、どのくらい効果があるのか、っていう疑問です。非冷却だとノイズが多くなるということは、どこにでも記載があります。しかし、どこを探しても同一条件での冷却、非冷却を比較した画像は見受けられません。 撮影対象としては、M16内の創造の柱で実行したかったのですが、南側は雲の出入りが多くあり、諦めてM27にしました。今回の冷却、非冷却のライブスタック及びDSSスタック像の比較実験の結果は、下の動画にもまとめています。 冷却、非冷却でのライブスタック像の比較動画【写真クリックで動画へ遷移します】 1.使用した機材や方法 使用した機材は、下図の通りです。最近お気に入りのMAK127を使いました。冷却と非冷却の比較は、ライブスタック像と自動的に保存される各フレームのDSSによるスタック像の比較で行いました。また、これまでは極軸合わせは割愛してガイドを行っていましたが、タカsiさんのブログに出てきたダイレクトドライブの圧巻のガイド精度に触発されて極軸合わせを行ないました。北極星が見えないので、ASiari Pro の All-Sky Polar Align を利用しました。 使用した機材 2.ASi294MC Proの冷却、非冷却でのライブスタック像 ライブスタックは、オートガイド下で90秒露光で実施した。極軸合わせを丁寧に行ったのが功を奏したのか、カイド精度はほぼ1秒以下に収まっていました。 0℃での冷却下で14回ライブスタックした自動保存スタックFitsファイルの画像が下の写真です。 0℃冷却下でのライブスタック像 撮影日:2022/8/19。鏡筒:MAK127 (f=1,500mm)。マウント:Vixen GP2(Althiba3, ベルトドライブ化)。カメラ:ASi294MC Pro (0℃冷却、Gain: 340)。カイド鏡:EVOGUIDE 50ED II (f=240mm)。ガイドカメラ:ASi120MM Mini。オートガイド、ライブスタック共にASiair Pro。フィルター:Kenko ASTRO LPR Type2。0℃、90秒露光で14回ライブスタック。画像処理:自動保存されたスタックFitsファイルをASiFitsViewでヒストグラム調整のみ。 非冷却下、27℃で14回ライブスタックした自動保存Fitsファイルの画像が下の写真です。 非冷却下、27℃でのライブスタック像 撮影日:2022/8/19。鏡筒:MAK127 (f=1,500mm)。マウント:Vixen GP2(Althiba3, ベルトドライブ化)。カメラ:ASi294MC Pro (0℃冷却、Gain: 340)。カイド鏡:EVOGUIDE 50ED II (f=240mm)。ガイドカメラ:ASi120MM Mini。オートガイド、ライブスタック共にASiair Pro。フィルター:Kenko ASTRO LPR Type2。27℃、90秒露光で14回ライブスタック。画像処理:自動保存されたスタックFitsファイルをASiFitsViewでヒストグラム調整のみ。 0℃では全く見られなかったホットピクセル由来のRGBのスジが多く見られた。逆に言えば、冷却すればホットピクセルは観察されなくなると言える。 3.自動保存された各シングルFitsファイルのDSSスタック画像の比較 ライブスタック時に自動保存された各シングルFitsファイルをスタックして、冷却、非冷却の違いを比較した。スタックは、Deep Sky Stacker (DSS)を使った。 DSSでスタックする際、オプションとしてホットピクセルを除去する処理を行った場合と、非処理の場合のスタック像の比較も行ってみた。 DSSのホットピクセル処理のセッティングは、下の写真のとおり。 ・Filter Size:1Pixel, ・Detection Theshhold:20% DSSのホットピクセル除去のセッティング画面 1)冷却 0℃、ホットピクセル除去OFF でのDSSスタック像 冷却下、0℃。ホットピクセル除去処理OFFでのDSSスタック像 撮影日:2022/8/19。鏡筒:MAK127 (f=1,500mm)。マウント:Vixen GP2(Althiba3, ベルトドライブ化)。カメラ:ASi294MC Pro (0℃冷却、Gain: 340)。カイド鏡:EVOGUIDE 50ED II (f=240mm)。ガイドカメラ:ASi120MM Mini。オートガイド、ライブスタック共にASiair Pro。フィルター:Kenko ASTRO LPR Type2。0℃、90秒露光でライブスタック後、自動保存されたシングルFitsファイル14枚をホットピクセル除去処理OFF条件でDSSにてスタック。画像処理:FitsファイルのASiFitsViewでのヒストグラム調整のみ。 2)冷却 0℃、ホットピクセル除去ON でのDSSスタック像 冷却下、0℃。ホットピクセル除去処理ONでのDSSスタック像 撮影日:2022/8/19。鏡筒:MAK127 (f=1,500mm)。マウント:Vixen GP2(Althiba3, ベルトドライブ化)。カメラ:ASi294MC Pro (0℃冷却、Gain: 340)。カイド鏡:EVOGUIDE 50ED II (f=240mm)。ガイドカメラ:ASi120MM Mini。オートガイド、ライブスタック共にASiair Pro。フィルター:Kenko ASTRO LPR Type2。0℃、90秒露光でライブスタック後、自動保存されたシングルFitsファイル14枚を、ホットピクセル除去処理ON条件でDSSにてスタック。画像処理:FitsファイルのASiFitsViewでのヒストグラム調整のみ。 3)非冷却 27℃、ホットピクセル除去OFF でのDSSスタック像 ライブスタック時に自動保存される各シングルFitsファイルをDSSを使ってスタックした。ホットピクセル除去処理はOFF. 非冷却下、27℃。ホットピクセル除去処理OFFでのDSSスタック像 撮影日:2022/8/19。鏡筒:MAK127 (f=1,500mm)。マウント:Vixen GP2(Althiba3, ベルトドライブ化)。カメラ:ASi294MC Pro (0℃冷却、Gain: 340)。カイド鏡:EVOGUIDE 50ED II (f=240mm)。ガイドカメラ:ASi120MM Mini。オートガイド、ライブスタック共にASiair Pro。フィルター:Kenko ASTRO LPR Type2。27℃、90秒露光でライブスタック後、自動保存されたシングルFitsファイル14枚を、ホットピクセル除去処理OFF条件でDSSにてスタック。画像処理:FitsファイルのASiFitsViewでのヒストグラム調整のみ。 4)非冷却 27℃、ホットピクセル除去ON でのDSSスタック像 DSSのホットピクセル除去処理をONにすると、ホットピクセル由来のスジ状のものは、ほぼ全部消えてしまう。 非冷却下、27℃。ホットピクセル除去処理ONでのDSSスタック像 撮影日:2022/8/19。鏡筒:MAK127 (f=1,500mm)。マウント:Vixen GP2(Althiba3, ベルトドライブ化)。カメラ:ASi294MC Pro (0℃冷却、Gain: 340)。カイド鏡:EVOGUIDE 50ED II (f=240mm)。ガイドカメラ:ASi120MM Mini。オートガイド、ライブスタック共にASiair Pro。フィルター:Kenko ASTRO LPR Type2。27℃、90秒露光でライブスタック後、自動保存されたシングルFitsファイル14枚を、ホットピクセル除去処理ON条件でDSSにてスタック。画像処理:FitsファイルのASiFitsViewでのヒストグラム調整のみ。 4.まとめ 1)ほぼ同一条件での、CMOSカメラの冷却、非冷却の比較を行った結果、非冷却ではホットピクセル由来のスジ状のものが多く発生した。0℃冷却下では、それらのスジ状もものは、見受けられなかった。下の写真は、トリミングして拡大した比較写真。 冷却、非冷却の自動保存スタック画像の比較(写真クリックで比較可能)2)ライブスタック時自動保存された個別のシングルFitsファイルをホットピクセル除去処理条件下でDSSスタックを行うと、ほぼ全部のホットスポット由来のスジは消滅した。 DSS における Hot Pixel 除去、非除去画像の比較(写真クリックで開始)3)0℃冷却下でのDSSスタック画像と非冷却27℃でホットスポット処理DSSスタック画像を比較した結果、両者ともにホットスポット由来のスジは見えないが、全体的に冷却下での画像の方がきれいである。 冷却下のDSSスタック像と非冷却下の Hot Pixel 除去条件DSSスタック像の比較(写真クリックで開始) 5.考 察 星雲用CMOSカメラを購入する際、ASi294MCか、ASi294MC Proか、随分迷った経験があります。非冷却と冷却とで何が違うのか、初心者には明確ではありません。ちまたでは、電視観望であれば非冷却のCMOSカメラで事足りる。画像処理をして写真にするならば冷却カメラ、との声が多く聞かれる。 ところが、今回の実験では、電視観望も冷却の方がはるかに鮮明な画像を得られることが明らかになりました。しかも、ライブスタックで発生したホットスポット由来のスジは、ライブスタックアプリでは消す術もありません。画像処理でスタックして写真を作り上げる際も、非冷却ではホットスポット由来のスジは同様に発生しますが、スタックする際には消し去る術が結構存在します。 ライブスタックではホットスポットを消せる技がない、写真にする際にはスタックでホットスポットを消せる技がある。これは、電視観望の方が冷却機能が必須であることを示しているのでないでしょうか。最新のPlayer OneのCMOSカメラでは、非冷却でもホットピクセルが発生しにくいと謳っているカメラが登場していますが、星雲写真の比較を明示して違いを示して欲しいと思います。 CMOSカメラは、DSLRと比べて冷却機能が取り付けやすいという特徴があると考えれば、少々お高くなりますが、冷却機能のあるCMOSカメラを購入しておく方が幸せになれることがわかりました。撮影現場では、ライブスタックを楽しみ、撮影後はゆっくりとスタック画像を楽しむ天文撮影スタイルを高めてゆきたいと考えています。