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世界で一番愛する人と国際結婚

バリのガムランが聞こえる 6

ちょうど雨季が明けたばかりのバリは、日差しが強かった。


グリとは5ヶ月振りの再会だった。


インドネシア人にしては背の高い彼は、空港の人ごみでも目だっていた。


グリの家は、有名なクタやレギャンのビーチを通り過ぎた
静かな場所にあった。


大きな敷地内に、いくつもの家があり、その中の一つ、
彼は独自の家を与えられていた。



7人も兄弟姉妹のいる大家族だが、彼の実家は、やはり思っていた
通り裕福だったのだ。


どうやら、私の心配した『バリのジゴロ』は、彼とは
別世界の話だったようだ。


ただ不思議だと思ったのは、彼の兄弟の中には、お医者さんと
弁護士もいて全員英語ができるのに、彼の母親と姉妹は
全く英語ができない。


彼の家では、男女の教育のレベルが違うのだろうか。
このことは最後まで聞けなかった。


彼女達と食卓を囲んでも、私の3ヶ月だけ学校に通った、
片言インドネシア語では会話が成り立たない。


おまけに彼女達が話しているのは、どうやらバリ語のようだった。
バリの公用語はインドネシア語だが、家庭で話す言葉はバリ語。
バリ語は、インドネシア語よりも難しい印象がある。


果たして、私はここに住めるだろうか。




翌日、有名なクタビーチに連れていってもらった。



グリが飲み物を買いに行き、私が一人でビーチに横になると、
色んな道具を持ったおばさん達が、日本語で話しかけながら近づいてきた。


いきなり私の髪をみつ編みし出す人、勝手に背中をマッサージし出す人、
慌てる私の目の前には、別のおばさんがお土産を並べ始めた。


ビーチおばさん達にあっという間に囲まれてしまった私を、
グリは面白がってカシャカシャカメラに収めていた。



「ここは天国だよ。」



口癖のように言うグリは、NYにいた時とは違う、

水を得た魚のようにイキイキとしていた。



町を歩くと必ず寄ってくる物乞い達。


私は、彼らに同情してはいけない、下に見てはいけないと、
お金はあげなかったが、グリは当たり前のように、
いつも一人ひとりにコインをあげていた。


手持ちのコインが全部なくなると、今度は私に、

「彼らにあげたいから、もしコインがあれば貸してくれないか。」

とまで言ってきた。



そのことで、私達は町を歩くたびに喧嘩になった。



だが、グリから離れて一人で歩くと、物乞い、ナンパ、物売りが
後から後から寄ってくる。



それにしても、バリの男性はとても日本語が堪能だった。



よく聞いていると、オーストラリア人女性にはちゃんと英語で
話しかけている。


ツーリストがドイツ人だと分かると、今度はドイツ語で
話しているではないか。


彼らは、簡単な言葉なら、5、6ヶ国語は使い分けできるようだった。


もちろん、値段交渉程度の外国語知識かもしれないが、恐らく学校など
で習ったわけではないだろう。


でも、全く物怖じしないで、外国人相手に商売をしている。


なんてたくましい人達なのだろう。



そう。この島では、たくましいタフな女性か、もしくは何も考えない
超楽天家のどちらかが向いている気がする。



タクシー一つ乗るのも、まずは値段交渉から。


買い物する時も、言い値で買う人などいない。


グリと一緒にいる時はローカルの値段で買えるけど、
一人だとかなり金額が違うのだろう。



東南アジアはそういう場所が多いし、旅行で行く分には楽しいが、
やわな私は、そういう場所に住みたいと思ったことはなかった。


私が想像していたハワイのような場所とはまるで違う、何だか
面倒くさくて、エネルギーがいる島だと思った。



ある日、サヌールビーチという、クタよりも静かなビーチに行った。

グリの友達カップルも一緒だった。


彼らと話をしていて、日本人と違うなと思ったのは、

バリの人は、『付き合う=結婚を考える』のではないかと言うこと。

実際結婚年齢も早く、男女の関係に対して純粋。


バリの男性と恋に落ちて、結婚してしまう日本人女性が多いのが
分かるような気がした。




そういえば、バリ滞在中にグリと結婚について話したのは、
その時だけだったかもしれない。




バリのローカルのレストランは、驚くほど安いのだが
不衛生な感じがして私は嫌だった。


いつも、グリに見つからないようアルコールティッシュを出し、
テーブルの下でこっそりと手とフォークを拭いていた。


途中で見つかってしまい、笑われてしまったが。



本当は、ガイドブックに載っているようなお洒落なレストランに
行きたくて連れていってもらったが、値段が全く違っていた。



手だけ(というか指をスプーン代わりに)使って食べる
レストランにも行った。


おしぼりも出ず、水道水を使ったフィンガーボールのような
ものがあるだけ。私は衛生上どうしても手だけで食べられず、
フォークをもらって食べていると、グリは寂しそうにトライして
欲しいと言った。


最終的に、彼は何も言わなくなり、黙々と手で食べていた。


明らかに気を悪くしたのが分かった。



私の滞在中、いくつものヒンズーのお寺を訪れた。


足を出したリゾートウェアを着ていた私に、巻きスカートの
ようなものがきっちりと巻かれた。


バリの人達はとても信仰心が厚い。


足を出してお寺に入るなど、とんでもないことのようだ。


お寺や町のどこからか、民族音楽、ガムランが聞こえてくる
ことがあった。ドラや太鼓、鉄琴の音。


演奏者の全員が男性だった。


ガムランは、男性が演奏するものと決まっているのだろうか。


そういえば、ここでは男性の仕事、女性の仕事、と
分かれているような気がする。


日本以上に、男性社会なのではないだろうか。



バリの人は、1日に3~4回シャワーを浴びる。

その度に家に帰って着替えて、私は時間の無駄な気がして、
何度もグリともめた。



ついついふざけてグリの頭を撫でてしまったことがあるが、
バリでは絶対に人の頭を撫でてはいけないのだそうだ。


とても怒られた。



信じられないことだが、こういった些細なことがストレスになって、
グリと私はずっと口論をしていたように思う。


NYでは全くなかったのに。



つづく


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