ボブ・ディラン&ザ・バンド 『偉大なる復活(Before The Flood)』
非の打ちどころのない、熱狂のロック・ライブ盤 1974年、ボブ・ディランがザ・バンドを招いて行ったツアーを収録したライブ・アルバムで、同年にリリースされたのが、この『偉大なる復活(Before The Flood)』である。このライブ盤に先立って、ディランは同じくザ・バンドを従えてアルバム『プラネット・ウェイヴス』を発表していたが、ライブ盤『偉大なる復活』の方は、主に過去のナンバーを中心に構成されている。 全21曲、時間にしておよそ90分の長編2枚組で、13曲がディラン、8曲がザ・バンドという配分。ザ・バンドの楽曲はザ・バンドで、ディランの楽曲は基本的にザ・バンドがバックを務めている(ただし一部の曲ではアコースティックセットでディランが歌っている)。 ライブ・ロック・アルバムとしては見事な出来であるにもかかわらず、本作は、どうも正当に評価されていない節がある。多分その理由は次の二つだろう。一つ目は、ディラン目的で本作を聞く人たちの側の問題である。お目当てはディランだが、途中で必ずしも興味の対象ではないザ・バンドのみの演奏が入る。当然、ディラン・ファンにとっては”中弛み”もしくは”とばして聴きたくなる”瞬間である。二点目は、ザ・バンドのファンの側の問題で、ザ・バンドがディランのバックを務めている箇所はともかく、ディランがアコースティックで歌っているところはザ・バンド目当ての聴き手の望むところではない。 要するに企画の段階からしてボブ・ディラン目当ての聴き手、ザ・バンド目当ての聴き手の双方を満足させることが不可能なアルバムだった訳である(どちらかを聴きたくてアルバムを買う人の数は多いが、両方を聴きたくてこのアルバムを耳にする人の数は逆に少なくなる)。けれども、いま一度、落ち着いて本アルバムを聴いてみると、70年代最高のライブ・ロック・アルバムの一枚と言える出来だ。 そんなわけで、上記のようなボブ・ディラン目当ての人には、ザ・バンドを従えて完成されたディランのロック・サウンドを堪能してほしい。とくにアルバム終盤(Disc 2-8., 9., 10.)、「追憶のハイウェイ61」から「ライク・ア・ローリング・ストーン」を経て、「風に吹かれて」に至る一連の演奏は圧巻で、一つのバンドとしての一体感を備えた厚みあるサウンドで、ディランの代表曲の新たな解釈を出していると感じる。ちなみにディランは、本来の(と言っていいのかどうかわからないが)澄んだ声質ではなく、ダミ声のような声で熱唱している曲が多い。これはコンサートの盛り上がり具合にもよるのかもしれないが、おそらくはディランが意図的にロックよりに演じているように思える。 最後に、ザ・バンドが目当てで本盤を手にした人はどう聴くかであるが、ヴォーカリストが一人増えたと思えばいいのではないだろうか。そう考えると、より魅力的な盤に見えるし、それで本盤を気に入れば、ディランへの興味の入り口にもなることと思う。[収録曲](Disc 1)1. Most Likely You Go Your Way (And I’ll Go Mine)2. Lay Lady Lay3. Rainy Day Women #12&354. Knockin’ on Heaven’s Door5. It Ain’t Me, Babe6. Ballad of a Thin Man7. Up On Cripple Creek8. I Shall Be Released9. Endless Highway10. The Night They Drove Old Dixie Down11. Stage Fright(Disc 2)1. Don’t Think Twice, It’s All Right2. Just Like a Woman3. It’s All Right, Ma (I’m Only Bleeding)4. The Shape I’m In5. When You Awake6. The Weight7. All Along the Watchtower8. Highway 61 Revisited9. Like a Rolling Stone10. Blowin’ in the Wind1974年リリース。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】偉大なる復活 [ ボブ・ディラン ]