クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテット 『クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ(Clifford Brown and Max Roach)』
ブラウン=ローチのまさしく完璧なる最高作 クリフォード・ブラウン(Clifford Brown、通称ブラウニー)は、マイルス・デイヴィスと並ぶ、モダン・ジャズ界最高のトランペッターである。いろんな面で、この二人は対照的である。前者がほんの4年ほどしか実質的に活動しなかった(25歳で交通事故のため死去)に対し、マイルスは長いキャリアと多くの作品を残した。ブラウニーがトランペッターに徹した一方、マイルスは音楽的創造者としてのイメージも強い。また、全般的(かつ大雑把な)トランペット演奏の印象を言えば、マイルス・デイヴィスが下を向いて内に向かって音を美しく奏でるイメージがあるのに対し、クリフォード・ブラウンは上を向いて音を高らかに発散しているイメージがする(あくまでイメージなので全作品に当てはまるわけではないけれども)。そうは言っても、これら二人には重要な共通項もある。ジャズという音楽が歩む道を大きく変え得るトランペット演奏を披露し、実際にその道筋を変えたという点である。 そんなクリフォード・ブラウンの代表作はいろいろあるが、マックス・ローチと組んだ演奏がとくにバンドとしても質が高く、定評がある。とりわけ巷でよく取り上げられるのが、『スタディ・イン・ブラウン』、そして本盤『クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ』の二枚である。これら二作は甲乙つけがたい名作とされ、個人的にも『スタディ・イン・ブラウン』は大好きな盤なのだが、さらに上を行くように思えるほど完璧な出来なのがこの『クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ』である。 夜に聴けば、徹夜できてしまいそうなエネルギー、朝に聴けば一日中元気に過ごせそうな爽快な音の抜け具合、というのが、筆者の印象というか、これまで本盤を聴いていての体験である。無論、トランペット演奏だけをとやかく言うのなら、他にもブラウニーの推奨盤はあり得る。何よりも見事な(というか、こういう評すような言葉を書くのも躊躇するほど完璧な)チームワーク、演奏の息の合い方が本盤のもう一つの核心である。つまり、ブラウニーのラッパも最高なら、彼を生かすメンバーも最高なのである。この一体感とそこから溢れ出るエネルギーの強烈さは、そんじょそこらのアルバムにそう簡単に見出せるものではない。 マックス・ローチ(ドラム)は、ブラウニーと並んで本盤の名義そして表題になっているだけあって、演奏の中心を担っている。単純化してしまえば、ローチが演奏全体のペースを決め、その枠組みの中で各メンバーの熱演が展開されていく。全体の演奏がこれだけ有無を言わさぬ圧倒的迫力に仕上がったのには、サイドメンの活躍も見逃せない。とくにジョージ・モロウは、ローチの豪快なドラムと素晴らしくかみ合ったベースを全編にわたって披露している。リッチー・パウエル(バド・パウエルの実弟)のピアノ演奏もここぞというところで見事にはまっている。ハロルド・ランドのテナーも、目立ちにくいが、いい味を出している。 捨て曲なしの好盤なので、どの曲・どの演奏がというのすら、おこがましい気もするが、絶対に外せないと思う曲を個人的好みでいくつか挙げておく。1.「デライラ」、4.「ジョイ・スプリング」(11.に別テイク)、5.「ジョードゥ」は、落ち着いて目を閉じて聴きたい。3.「ダフード」と6.「ザ・ブルース・ウォーク」(それぞれ10.と9.に別テイク)は圧倒されてしまわずに、そのエネルギーを体で受け止めたい。 ちなみに、CDを手にすると、別テイクとかが混じっていてややこしいが、本盤はもともとは10インチ盤で、LP時代、CD時代となるにつれて、徐々に収録曲が増えた。10インチのオリジナル盤の収録曲は1.~5.。それに6.と7.を加えたのが、LP盤に収録されたもの。8.~11.はCDフォーマットになってからのボーナス・トラックである。 [収録曲]1. Delilah 2. Parisian Thoroughfare3. Daahoud 4. Joy Spring 5. Jordu 6. The Blues Walk 7. What Am I Here For? ~以下、CDのボーナス・トラック~8. These Foolish Things 9. The Blues Walk -alternative take-10. Daahoud -alternative take-11. Joy Spring -alternative take- [パーソネル・録音]Clifford Brown (tp, 8.を除く)Max Roach (ds)Harold Land (ts, 8.を除く)Richie Powell (p)George Morrow (b) 録音: 1954年8月2日(1., 2.)、8月3日(5.)、8月6日(3., 4., 8., 10., 11.)1955年2月24日(6., 7., 9.) 【送料無料】JAZZ THE BEST 40::クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ +2 [ クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ(tp/ds) ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓