ジャック・シェルドン 『ザ・カルテット&ザ・クインテット(The Quartet & The Quintet)』
西海岸ジャズを代表する白人トランペッターの初期作 ジャック・シェルドン(Jack Sheldon)は1931年にフロリダ州で生まれた白人ジャズ・トランペット奏者にして、歌手・俳優でもある。1950~60年代、ニューヨークを中心にハード・バップが確立されていったのと同時期に、ロサンジェルスやサンフランシスコを中心に西海岸(ウエスト・コースト)ジャズのムーヴメントが興った。その西海岸ジャズの発展の中で、シェルドンは、ジェリー・マリガン(参考記事)やチェット・ベイカー(参考記事)と並んで、これに寄与した一人である。 本盤は、もともと10インチ盤としてリリースされた2枚を併せて1枚の12インチLPに再編集したものである(その結果、収録時間の関係で数曲カットされている)。元になった2枚とは、本盤と同じジャズ・ウェスト(Jazz West)というマイナーなレーベルのもので、ザ・ジャック・シェルドン・カルテット『ゲット・アウト・オブ・タウン(Get Out of Town)』(JWLP-1)とザ・ジャック・シェルドン・クインテット『ウィズ・ズート・シムズ・オン・テナー・サクソフォン(With Zoot Sims on Tenor Saxophone)』(JWLP-2)という2枚である。そんなわけで、雰囲気の異なる二種の内容が含まれた盤ということになる。 前半(1.~6.)は、カルテットでの演奏。心地よくスイングしながら、ジャック・シェルドンのトランペットがのびやかにメロディックに曲を歌いあげていく。西海岸的な垢ぬけたスマートさが全体に印象に残る演奏で、聴きどころとしては、冒頭を飾るコール・ポーターの1.「ゲット・アウト・オブ・タウン」(上記の10インチ盤の一方ではこれがアルバムタイトルになっていた)、さらには、ピアノのウォルター・ノリス作の3.「ドーゾ」(日本語の“どうぞ”がタイトル)といったナンバーが挙げられる。ちなみにこの前半部分は、ジャック・シェルドンにとっての初リーダー吹き込みである。 そんな前半も悪くないのだが、何と言っても、後半(7.~14.)のクインテットの方が格段にノリがよい。前半のカルテットからはベースとドラムが入れ替わっているが、何よりも大きいのは、テナーのズート・シムズが追加されている点(ただし7.ではズートは抜けての演奏)である。この後半はとりわけ好演奏が並んでいるが、敢えて筆者の好みでいくつか挙げておきたい。8.「グルーヴァス・メンタス」はいかにも西海岸的なノリのいいナンバーで、本盤収録中、唯一のジャック・シェルダン作の曲。10.「パレルモ・ウォーク」は哀愁を感じさせるマイナー調でアンサンブルとズート・シムズのソロが印象的。11.「ブルース」はほとんど即興で演奏されたものらしいが、いきなり飛ばすテナー(ズート・シムズ)に対し、それを追いかけるように次第にのっていくトランペット(ジャック・シェルドン)が心地いい。 その後、ジャック・シェルドンは、コメディアンとしても活躍の場を見出し、ジャズ界からは少々遠ざかることになってしまった。とはいえ、この作品からは、ジャズ・ミュージシャンとして、若きトランペッターとしてのジャック・シェルドンの魅力が十分伝わってくる。[収録曲]1. Get Out of Town2. Ahmoore3. Dozo4. Mad About the Boy5. Toot Sweet6. Jack DepartsJack Sheldon (tp), Walter Norris (p), Ralph Pena (b), Gene Gammage (ds)録音: 1954年7. What Is There to Say8. Groovus Mentus9. Beach-Wise10. Palermo Walk11. Blues12. Irresistible You13. Guatemala14. Getting Sentimental Over YouJack Sheldon (tp), Zoot Sims (ts), Walter Norris (p), Bob Whitlock (b), Lawrence Marable (ds)録音: 1955年 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓