カーティス・フラー 『ジ・オープナー(The Opener)』
やわらかでふくよかなトロンボーンの魅力 カーティス・フラー(Curtis Fuller)は、1934年にデトロイトで生まれた米国のジャズ・トロンボーン奏者。幼い頃に両親(ジャマイカ出身)をなくし、孤児として育った彼は、学生時代にポール・チェンバースやドナルド・バード、トミー・フラナガンやサド・ジョーンズ、ミルト・ジャクソンらと知り合ったという。さらには徴兵時代(年齢を偽っていたため早目の徴兵を受けた)にはキャノンボール・アダレイとも一緒になっている。1957年、ニューヨークへ進出した彼は、プレスティッジやブルーノートに吹き込みを開始する。 本盤『ジ・オープナー(The Opener)』は、ちょうどその1957年に録音された、ブルーノートでの最初のリーダー作。ニューヨークにでてきてからの彼は大忙しで、プレスティッジに3枚の録音をし、ブルーノートでは本作だけでなく合計3枚のリーダー盤を吹き込んだほか、いろいろなセッション(例えば、ジョン・コルトレーンの『ブルー・トレイン』)を次々にこなしていた。まさに引っ張りだこの人気だったということになる。 ところで、トロンボーンと言えば、J・J・ジョンソンという先輩がいたが、このカーティス・フラーという“新人”を売り出すに当たり、ブルーノート(正確にはアルフレッド・ライオン)は一計を案じた。それがこのアルバムの特徴にもなっていれば、アルフレッド・ライオンの目が鋭かったことの証明にもなっている気がする。 その特徴とは、いきなり物静かなバラードからアルバムが始まる点である。アナログの曲の配列を考えれば、この意図はより明白で、A面の冒頭(1.「素敵な夜を」)だけでなく、B面の最初(4.「ヒアズ・トゥ・マイ・レディ」)も同じくバラードで始まっている。初めて聴くと“えっ?”と思うかもしれないが、カーティス・フラーの演奏の最大のよさは、こういったゆったりしたプレイにあるのだと思う。 テンポが上がっても、このゆったりやわらかな感触は変わらない。本作では、2.「ヒューゴア」が筆者のお気に入り。他に3.「オスカリプソ」や5.「リジーズ・バウンス」のようにリズムやテンポが変動しても、ふくよかでどこか落ち着かせてくれる彼のトロンボーンの魅力が維持されている。 もしもごくごくノーマルなアルバム作りをするならば、もっと勢いやインパクトのある曲を最初に配するものだろう。けれども既にジャズ界でトロンボーン奏者としての位置を確立していた先輩J・J・ジョンソンとの違いを示す上でもこの曲の配置は絶妙だった。しかも、後々明らかになっていったカーティス・フラーの演奏のよさがどこにあるのかを、制作者たるアルフレッド・ライオンが達見していたというのにも驚かされる。1.の曲名にひっかけて言うと、本盤を聴けば“素敵な夕宵”を過ごせること間違いなしの好盤。[収録曲]1. A Lovely Way To Spend An Evening2. Hugore3. Oscalypso4. Here’s To My Lady5. Lizzy’s Bounce6. Soon[パーソネル・録音]Curtis Fuller (tb)Hank Mobley (ts)Bobby Timmons (p)Paul Chambers (b)Art Taylor (ds)1957年6月16日録音 【中古】 ジ・オープナー /カーティス・フラー,ハンク・モブレー,ボビー・ティモンズ,ポール・チェンバース,アート・テイラー 【中古】afb Curtis Fuller カーティスフラー / Opener 【CD】 以下のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓