ZZトップ 『テキサスはパラダイス(Tejas)』
古き良き時代を彷彿とさせるローカルさ ZZトップ(ZZ Top)はテキサスで結成されたブルース・ロック、ブギー・ロック系の3ピース・バンド。ビリー・ギボンズ(G., Vo.)、ダスティ・ヒル(B., Vo.)、フランク・ベアード(Ds.)の3人が1969年に結成し、翌年にデビュー。以来ずっとメンバー変更なくこの3人で活動している。今回取り上げるのは、1976年リリースの『テハス(邦題:テキサスはパラダイス、原題:Tejas)』というアルバム。 今となっては、ZZトップと言うと“あの長いひげのおじさんたちね”というイメージ(ビリーとダスティの顎鬚)があるかもしれない。現在60歳代の彼らも、デビュー時には20歳すぎの若者で、本盤発表時にはまだ20歳代後半だったわけだが、当初の風貌は“ふつ~に口髭や顎鬚を生やした若者たち”だった。実は本盤は、彼らがそうしたふつうな風貌の時代の最後のアルバムであった(この作品の後、バンドは休止期間に入り、次作で復活した時には長い髭に変わっていた)。 さて、本題のアルバムに話を戻そう。『テキサスはパラダイス』(旧邦題、現行では『テハス』と改められている)とは何とも滑稽なタイトルに見えるかもしれない。とはいえ、この盤のテーマを考えるとあながち的外れではない気がする。原題の『テハス(Tejas)』は、スペイン語で“テキサス”を意味する。よく知られているように、テキサスはもともとメキシコ領で、テキサス共和国として独立したのちアメリカ合衆国に併合されている。つまり、スペイン語読みでのテキサスの発音が“テハス”であり、実際、テキサスではスペイン語やメキシコ系文化が日常的というか、人々の生活の一部として浸透している。ZZトップのアルバムにスペイン語タイトル(『トレス・オンブレス』、『ファンダンゴ』、『デグエジョ』、『エル・ロコ』など)が多いのも、こうしたバックグラウンドを持っているからこそだろう。 本盤『テハス』の収録曲にもそうしたテキサスのローカル文化の背景が反映されている。3.「エル・ディアブロ(スペイン語で“悪魔”の意)」は、“無法者のメキシコ人ディアブロ”をテーマにしているし、7.「パンナム(パンアメリカン)・ハイウェイ・ブルース」というのも何とも20世紀的なテーマと言えるかもしれない(汎アメリカ道路とはアメリカ大陸北端から南端までを結ぶ道路の名称で、サン・アントニオなど州内を通過する)。 サウンド面に目を向けると、これまたテキサスらしいというか、ローカル受けしそうな雰囲気が漂っている。ローカルといっても、別に悪い意味で言っているわけではない。きっと、その当時、こういうブルースを取り入れてやっているロックが地元では特に受け入れられやすい素地があったのだろう。ノリで聴かせるテキサンらしい明るさをもった曲もあれば、哀愁や悲哀を漂わせる曲もあり。個人的にはどちらも好きだが、前者の例としては、2.「アレステッド・フォー・ドライヴィング・ホワイル・ブラインド」や9.「ハートブレイカー」、後者の例としては、上述の3.とインスト曲の10.「アスリープ・イン・ザ・デザート」がいい。 時は流れて21世紀のいま、こういう“よきローカルさ”みたいなものはなかなか出にくくなったように感じる。音楽業界的には80年代のMTVに代表されるような商業化の流れ、もっと大きくはその後の急速なグローバル経済化によって、ローカルなよさは表現されにくくなってしまったのではないかと思う。昔の郷愁に浸ってばかりいても仕方ないのだけれど、時にはそんなことを考えながら、髭が長くなかった頃のZZトップを堪能するというのもいいのではないだろうか。[収録曲]1. It's Only Love2. Arrested for Driving While Blind3. El Diablo4. Snappy Kakkie5. Enjoy and Get It On6. Ten Dollar Man7. Pan Am Highway Blues8. Avalon Hideaway9. She's a Heartbreaker10. Asleep in the Desert1976年リリース。 【Aポイント+メール便送料無料】ZZトップ ZZ Top / Tejas (輸入盤CD)【YDKG-u】 ブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓