ハンク・モブレー、ジョン・コルトレーン、ズート・シムズ・アル・コーン 『テナー・コンクレイヴ(Tenor Conclave)』(2/2)
テナー・サックス奏者の“密室会議”(後編) 1950年代半ばにジャズ界の有望テナー奏者4人が競演したプレスティッジのセッション盤『テナー・コンクレイヴ(Tenor Conclave)』。前編に続き、この後編では少し中身に入った話をしてみたい。 4人のテナー奏者の聴きわけがちゃんと全部できるのかと言えば、筆者も心もとない部分がある。とはいえ、表題曲1.の冒頭からして四者四様の音を出していることは、初めて聴いた人にもすぐわかることだろう。同じ1人の演奏家が出す音を5分、10分(あるいはそれ以上の時間)と聴き続けるのに比べ、立ち代わり入れ替わりで音が変化するわけで、仮によくわからなくてもそれはそれで楽しめるのではないだろうか。1.「テナー・コンクレイヴ」についてのみ、原盤のライナーに沿って演奏順序を整理しておこう。 イントロ(8小節=各2小節): モブレー→コルトレーン→シムズ→コーン アンサンブル後(8小節=各2小節): 上と同じ順序 ソロ(各3コーラス): モブレー→シムズ→コーン→コルトレーン(その後、ガーランド2コーラス→チェンバース2コーラス→テイラー1コーラスが続く) 最期のテーマ前(4バー・チェンジ): 1コーラス目をモブレーとコルトレーン→2コーラス目をコーンとシムズ 若いミュージシャンたちによるアドリブの腕しらべ的セッションは、プレスティッジならではの企画であった。しっかり準備された録音ではなく、ある意味で行き当たりばったりのこうしたセッションは、ブルーノートの十全に準備された録音とは、(どちらがいいとかではなく)違った魅力がある。もちろん、こうしたバトル的なセッションに明確なリーダーがないと、下手をすれば単なる自己主張のぶつかり合いになりかねない。にもかかわらず、本盤には安定した部分がある。その安定感は、おそらくはリズム・セクションに負う部分が大きいのだろう。ピアノにレッド・ガーランド、ベースにポール・チェンバース、ドラムにアート・テイラーというレギュラーのトリオ(こちらの過去記事参照)である。 近頃2分割ですっかり話が長くなってしまいがちなのは反省だが、ともあれ、ヴァチカンのお偉方もしかめっ面で新教皇を選ぶのだろうから、たまにはしかめっ面で“コンクラーヴェ=根比べ”というのも悪くないといったところだろうか(笑)。[収録曲]1. Tenor Conclave2. Just You, Just Me3. Bob’s Boys4. How Deep Is The Ocean[パーソネル・録音]Hank Mobley, Al Cohn, Zoot Sims, John Coltrane (ts)Red Garland (p)Paul Chambers (b)Art Taylor (ds)1956年9月7日録音。 Hank Mobley/Al Cohn/John Coltrane/Zoot Sims / Tenor Conclave 輸入盤 【CD】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓