ジミー・スミス 『ホーム・クッキン(Home Cookin’)』
リラックスして楽しむ、ブルージーな演奏 ジミー・スミス(Jimmy Smith, 1925年生まれ、2005年没)はジャズ・オルガン奏者として、ブルーノートやヴァ―ヴに多くの吹き込みを残した。売れっ子奏者だっただけに、作品の数も多く、どれも変わらないんじゃないかという懐疑的な声もあるかもしれない(実際にはアーシーな感じなのとコッテリな感じなのとにその作品は大別される)。けれども、深みにはまればはまるほどさらに作品を聴きたくなるという点において、案外、“金太郎飴”などと揶揄されるピアノ奏者のレッド・ガーランド(参考過去記事(1)・(2))に似た中毒性があるのではないかと個人的には思っていたりする。 さて、本盤『ホーム・クッキン(Home Cookin’)』は、1958年7月から翌59年の6月にかけて、実に1年近い歳月をかけて3回にわたってレコーディングされた内容が収められたブルーノート盤である。基本は、同じブルーノートの人気ギタリストであったケニー・バレル、さらにはドラムのドナルド・ベイリーを従えたトリオ編成。さらに曲によってはパーシー・フランスなるテナー・サックス奏者が加わっていて、テナー入りのリーダー作はスミスにとってこれが初めての試みだった(その後、この試みはスタンリー・タレンタインと組んだ『ミッドナイト・スペシャル』や『バック・アット・ザ・チキン・シャック』の成功にもつながることになる)。ちなみに、このパーシー・フランスというサックス奏者はあまり活躍しなかったらしく詳しいことはよく分からないが、本盤を聴く限り、音色は無難ながらも、哀愁あるいいフレーズを吹いている。 思うに、本盤の最大の特徴は、“気負いなきブルース”。実際にはブルース形式ではない曲もあるものの、とにかくブルース(あるいはブルージーな曲)を、落ち着いてリラックスした雰囲気でやっている。録音日は、シングル盤制作を念頭に置いていたためか、1年近い期間に分散している。しかし、結果的に“家庭料理”なるタイトルのアルバムとして、見事にまとまった内容に仕上がっていて、ブルース(もしくはブルージーな曲)を、力むことなく見事に“料理”している。ちなみに、ジャケットは、ニューヨークはハーレムのアポロ・シアター近くにある店の写真。実際にミュージシャンたちが演奏の合間や終了後に行っていた店で、“ケイトのホーム・クッキング”の文字とともにジミー・スミスが写真に写り込んでいる。 全体としてのまとまりで聴く盤とは思うものの、個人的にお気に入りの演奏をいくつか挙げておこう。テンポを落としてまったりとした1.「シー・シー・ライダー」は、このアルバム全体のトーンをよく表現している。全体のブルージーな雰囲気の盛り立て役として欠かせないのはギターのケニー・バレルだが、そのバレルとスミスの掛け合いが前面に出ているのが3.「アイ・ガッタ・ウーマン」。さらに、4曲(ボーナストラックを入れると5曲)で参加のパーシー・フランスの活躍が特に目立つのは、5.「グレイシー」で、この哀愁いっぱいのフレージングもなかなかいい(この人の演奏を聴いていると、この後でジミー・スミスがスタンリー・タレンタインと録音を行った理由というか動機がなんとなくわかる気がする)。 まあ、こってりした“いかにもオルガン・ジャズ”風なものを期待するとがっかりする人もいるかもしれないが、上に掲げた通り、“リラックスかつブルージー”というのが身上のアルバム。これにはまり始めると、ジミー・スミスから抜けられなくなるアルバムという形容が意外に本盤にはあうかもしれない。 [収録曲]1. See See Rider2. Sugar Hill3. I Got a Woman4. Messin' Around5. Gracie6. Come on Baby7. Motorin' Along~以下、CDでの追加トラック~8. Since I Fell for You9. Apostrophe10. Groanin11. Motorin' Along -alternate take-12. Since I Fell for You -alternate take-[パーソネル、録音]Jimmy Smith (org)Percy France (ts, 1., 4., 5., 6., 9.のみ)Kenny Burrell (g)Donald Bailey (ds)1958年7月15日(7., 8., 11., 12.)1959年5月24日(3., 10.)1959年6月16日(1., 2., 4., 5., 6., 9.) ホーム・クッキン+5/ジミー・スミス[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓