ルー・ドナルドソン 『ルー・ドナルドソン・カルテット・クインテット・セクステット(Lou Donaldson Quartet/Quintet/Sextet)』
初リーダー・セッションを含む初期の軽快なドナルドソン節 ルー・ドナルドソン(Lou Donaldson)は1926年生まれで、85歳となった現在も存命中のアルト・サックス奏者。米国ノース・キャロライナ生まれで、徴兵期間があったものの、1950年代初頭からニューヨークに出てきて、1952年にミルト・ジャクソンやセロニアス・モンクの吹き込みに参加。その後、同年からリーダーとして作品を録音し始めている。 本盤に収録されているのは、まず、1952年6月20日の初リーダー・セッションとなったカルテットの吹き込み。続いて11月19日には、トランペット奏者のブルー・ミッチェルを含めたクインテットの録音を行っている。その後、翌年にはまだ新人だったクリフォード・ブラウンとの吹き込みを残しているが、こちらの方は本盤には収録されていない。さらに翌年の1954年8月22日には、今度はトランペッターにケニー・ドーハム、さらにトロンボーンのマシュー・ジーを迎えてセクステット(6人組)の録音を行った。これらの録音は、元々は10インチ盤2枚としてリリースされたが、12インチ時代に入って一部をカットして1枚にまとめられた。その結果が本盤『ルー・ドナルドソン・カルテット・クインテット・セクステット(Lou Donaldson Quartet/Quintet/Sextet)』というわけである。 ドナルドソンは“パーカー派”なんて言われたりもするが、元々はソニー・スティットをかなり意識していたようで、後からチャーリー・パーカーも聴いて影響を受けたらしい。まあ、どちらにしても、スタイルが似ているのだけれど、先達の影響を既にいい意味で消化していると思える演奏が並ぶ。全体にビ・バップ感がいい感じで漂っているのが大きな特徴とでも言えそうなところ。 聴きどころとして筆者のお薦めは、まずはクインテットでの演奏の1.「イフ・アイ・ラヴ・アゲイン」。ブルー・ミッチェルのトランペットをフロントに据えた好演奏で軽快さが心地よい。3.「ザ・ベスト・シングズ・イン・ライフ・アー・フリー」はルー・ドナルドソンのアルトの“滑らかさ”が存分に発揮された好演奏。同様のことは、4.、5.、8.のカルテット演奏にも言えると思う。セクステット(6人組)での演奏の7.、9.、10.は全体に楽器の種類も多く華やかだけれど、何よりもドナルドソン自身のブルージーで、かつ流れるようなアルト・サックスのプレイが聴きどころとなっている。 全体として、“何気なく流れていく演奏に耳を奪われる”というのが本盤の特徴と言えそうに思う。後の粘っこさの片鱗があるけれど、どちらかと言えば“軽快に流れるプレイ”という印象に近い。そのようなわけで、聞き流そうと思えばそうなってしまうかもしれない盤でもある。けれども、軽快さとプレイの味を注視すれば、何とも心地の良い一時を過ごすことができる。派手な名盤や名演奏というわけではないかもしれないが、こういう楽しみ方こそ、ジャズを聴いていて“楽しい!”と思える瞬間の一つだと思ってみたりもする。[収録曲]1. If I Love Again 2. Down Home 3. The Best Things in Life Are Free 4. Lou's Blues5. Cheek to Cheek6. Sweet Juice7. The Stroller8. Roccus 9. Caracas 10. Moe's Bluff[パーソネル、録音]Lou Donaldson (as)Blue Mitchell (tp, 1.~3.、6.)Kenny Dorham (tp, 7.、9.、10.)Matthew Gee (tb, 7.、9.、10.)Horace Silver (p., 1.~6.、8.)Elmo Hope (p., 7.、9.、10.)Gene Ramey (b, 4.、5.、8.)Percy Heath (b, 1.~3.、6.、7.、9.、10.)Art Taylor (ds, 4.、5.、8.)Art Blakey (ds, 1.~3.、6.、7.、9.、10.)1952年6月20日(4.、5.、8.)、1952年11月19日(1.~3.、6.)、1954年8月22日(7.、9.、10.)録音。 ブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓