ベン・ウェブスター 『キング・オブ・ザ・テナーズ(King of the Tenors)』
巨匠による“硬さ”と“柔らかさ” ベン・ウェブスター(Ben Webster)というサックス奏者は、何とも不思議な魅力を持っている。時代が古い(1909年生まれで、1973年に64歳で死去)だけに、後の奏者に与えた影響とか、スウィング期の代表的奏者云々といった文脈で一般には語られる訳だけれど、たまにはこの手の“中毒性”のサックスに酔いしれるの悪くないと思うこともしばしばである。 本盤『キング・オブ・ザ・テナーズ(King of the Tenors)』は1953年のリーダー作で、ソロ作としては比較的早い時期のもののようである。ウェブスター自身は1930年代後半からレコーディングをしていたが、リーダー名義としては50年代後半以降に盤が集中している。さて、この人のサックスの特徴はと言えば、何と言ってもしゃくりあげるような甘さとゴリッとした無骨さの両面性にある。後の時代になれば、より“甘さ”の比重が高くなるが、本盤辺りは、両者のバランスも結構とれているという感想を持っている。 “甘さ”という面では、1.「テンダリー」、4.「ザッツ・オール」、8.「ダニー・ボーイ」といった曲が典型的。その一方、無骨さもしくは“硬さ”がよく出た演奏としては、2.「ジャイヴ・アット・シックス」と7.「コットンテイル」が一押しである。両者の接点はというと、案外(といっては失礼だが)丁寧でうまくスウィングし流れるような演奏にあって、3.「ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニモア」や5.「バウンス・ブルース」によく表れているように思う。 それはそうと、この人の作品が近寄りがたい理由は大きく2つあるという気がする。一つはこのジャケット(というか、どの盤も似たり寄ったりだったりしないでもない)である。暑苦しそうなサックスを持ったオッサンのジャケットは(他の作品にはサックスを持っていないものもあるけれど)、間違っても“ジャケ買い”ということはなさそうなタイプ。こうした“いまいちジャケット”は、ジャズ界に他にもいっぱいあるとはいえ、ジャケットのイメージで選んでもらえなさそうな典型例であることは確かだである。その一方、ベン・ウェブスターという名前は聴いたことあるという人の中では、“枯れたバラード吹き”のようなイメージもある。上にも書いたように、甘めのバラードも彼の特徴であるが、この“硬質さ”も彼の特徴であって、未聴という方にはぜひ一度試していただきたい。ジャズ史上も明確な位置を与えられにくく、上記のようなレッテルを貼られやすい人なだけに、実際に聴いてみれば印象が異なる問うこともあるのではないかと思う。結局のところ、筆者はこれが結構好きだったりするのだけれど。[収録曲]1. Tenderly2. Jive At Six3. Don't Get Around Much Any More4. That's All5. Bounce Blues6. Pennies From Heaven7. Cotton Tail8. Danny Boy[パーソネル、録音]Ben Webster (ts)Oscar Peterson (p)Ray Brown (b)Barney Kessel (g; 5., 7., 8.)J. C. Heard (ds; 5., 7., 8.)Harry "Sweets" Edison (tp; 1.-4., 6.)Benny Carter (as; 1.-4., 6.)Herb Ellis (g; 1.-4., 6.)Alvin Stoller (ds; 1.-4., 6.)1953年録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】King Of Tenors [ Ben Webster ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓