マーティ・ペイチ 『ザ・ブロードウェイ・ビット(The Broadway Bit)』
西海岸ジャズの名作~“踊り子”と“お風呂”(前編) マーティ・ペイチ(Marty Paich)は、ピアニストであると同時に、偉大な編作曲家であり、そして偉大なプロデューサーだったという風にも言えるだろう。音楽全般の“指揮者”と言い換えてもいいかもしれない。1950年代、西海岸(ウェスト・コースト)ジャズの隆盛に寄与し、1960年代以降は多ジャンルな音楽に関わった(後年には自身の息子デヴィッド・ペイチを含むTOTOや、マイケル・ジャクソンなどにも関わった)後、1995年に70歳で亡くなっている。 そのようなわけで、ある人は、西海岸ジャズというキーワード(場合によっては、アート・ペッパーという人気サックス奏者経由)から、またある人は、TOTOの中心メンバーの父親という繋がりから、いろんなルートでこのマーティ・ペイチにたどり着くのではないだろうか。そして、マーティ・ペイチに行き着いた聴き手の目をしばしば引くことになる有名盤が、今回の連載で取り上げる2枚、通称“踊り子”と“お風呂”なわけである。 本盤『ブロードウェイ・ビット(The Broadway Bit)』は、ジャケット写真(楽屋の踊り子の写真)から、ファンの間では“踊り子”という名で親しまれている。内容も、表題およびジャケ写が示すように、ブロードウェイ関係のスタンダードを取り上げている。ペイチ自身を含めて12人からなる編成で、ちょっとしたビッグ・バンド的サウンドが特徴となっている。この編成からわかるように、本盤は、特定奏者の演奏で聴くタイプの盤とは、ある意味、対極にあるように思う。確かに、演奏に参加しているアート・ペッパーやスコット・ラファロを目当てで聴く人もいるのだろうけれど、一義的には、“個人を聴く盤”というよりもやはり“総体として楽しむ盤”なのだろうと感じる。 私見で聴きどころと言えそうな曲をいくつかピックアップしてみたい。1.「私は御満足(イッツ・オールライト・ウィズ・ミー)」は、アンサンブル向けの編成を生かして軽快なテンポと独自の編曲による展開が何とも爽快にして痛快で、本盤の特徴をよく表している1曲。こうした特徴のうち大きな編成を生かして軽快にという点では、3.「アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォー」や5.「トゥー・クローズ・フォー・コンフォート」もその典型例として挙げられるだろう。他方の編曲の妙と各種の楽器のうまいまとめ上げ方は、4.「アイ・ラヴ・パリ」や7.「イフ・アイ・ワー・ア・ベル」なんかで生かされている。あと個人的な好みをもう一つ付け加えておくと、フレンチホルンのゆったりとした音色が印象的な8.「レイジー・アフタヌーン」。メインになる曲というよりは“間に挟まれている曲”ではあるのだが、“もう一度”とかいいつつつい繰り返して聴きたくなってしまう。(後編へつづく)[収録曲]1. It's All Right With Me2. I've Grown Accustomed To Her Face3. I've Never Been In Love Before4. I Love Paris5. Too Close For Comfort6. Younger Than Springtime / The Surrey With The Fringe On Top7. If I Were A Bell8. Lazy Afternoon9. Just In Time[パーソネル、録音]Marty Paich (p, arr), Frank Beach (tp), Stu Williamson (tp, v-tb), George Roberts (tb), Bob Enevoldsen (v-tb, ts), Vince DeRosa (fhr), Art Pepper (as), Bill Perkins (ts), Jimmy Giuffre (bs, cl), Victor Feldman (vib, perc), Scott LaFaro (b), Mel Lewis (ds)1959年5月13日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】JAZZ BEST COLLECTION 1000::ブロードウェイ・ビット [ マーティ・ペイチ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓