アーヴィン・ロクリン・トリオ 『キリーヌ(Quirine)』
安定した演奏を楽しめるオランダ系ピアノ奏者の代表盤 アーヴィン・ロクリン(Irvin Rochlin)は、オランダ系米国人のジャズ・ピアノ奏者。詳しい情報がまったくなくてよくわからないのだけれど、1926年頃に米国で生まれ、1970年頃にヨーロッパへ移住したという。その後、アムステルダムを拠点として長らく活躍したが、2013年には再び米国へ戻ったとのことである(それ以上情報がなく、存命中かどうかも不明)。 そんなロクリンの残した演奏のうち、今のところ筆者が唯一聴いているのが、この『キリーヌ(Quirine)』という盤である。オランダのライムツリーというレーベルへの吹き込みで、移住からおよそ10年経った1980年に録音されたものである。ジャケットからして印象的で、天使のような愛らしい子供の写真がシンプルな白地にあしらわれている。演奏はほぼ全編がピアノ・トリオで、ハリー・エメリー(ベース)、エリック・イネケ(ドラム)は共に現地オランダの奏者である。 ロクリンのピアノ演奏はクリアで時にリリカルである。透明感がありながら、変に情緒ばかり前面に押すのではなく、基本的には心地よくスウィングしており、情感込めて聴かせる場面ではじっくり聴かせるといったところだろうか。ベースとドラムもそれを心得てか派手になり過ぎぬ程度に小気味よく盛り立てていく。音源はライヴ演奏であるため、その場の客に聴かせることを意識したような構成の部分もあり、MCも挟まる。 全曲とはいかないが、ざっと演奏内容を通観しておきたい。1.「ペピートス・リブ」はこの後繰り広げられる演奏の導入とも言える短い演奏であるが、軽いジャブといった感じで、まずは聴き手の耳を惹きつけるものに仕上がっている。2.「イントロダクション」となっているMCを経て、表題曲の3.「キリーヌ」は透明感のあるピアノにテンポ感を失わないベースとドラムで、本盤を代表する演奏と言えそう。リリカルな方向性を持った演奏としては、4.「ゴースト・オブ・ア・チャンス」とピアノ・ソロの8.「ア・プラン・フォー・ザ・フューチャー」に代表される。上でスウィングと述べたが、安定したノリに支えられた方向性の演奏としては、7.「ローラ」や9.「フォー・オン・シックス」がいい。これら2つの方向性は、どちらか1つに偏ってしまうと退屈になったり、凡庸に聞こえてしまう可能性がある。けれどもそれらをバランスよく演奏しているというのも、本盤が聴き手の心を奪う大事な理由になっているように思う。[収録曲]1. Pepito's Rib2. Introduction 3. Quirine4. Ghost of A Chance5. Only Ludwig Knows 6. Little B's Poem7. Laura 8. A Plan for The Future 9. Four on Six [パーソネル、録音]Irvin Rochlin (p), Harry Emmery (b), Eric Ineke (ds)1980年5月3日録音。 キリーヌ [ アーヴィン・ロクリン・トリオ ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓