ガトー・バルビエリ 『第三世界(The Third World)』
自己アイデンティティの模索に目覚めたガトー ガトー(本来の発音では“ガト”もしくは“ガート”)・バルビエリ(Gato Barbieri)は、アルゼンチン出身のテナー奏者で、2016年に83歳で亡くなっている。12歳のときに聴いたチャーリー・パーカーに衝撃を受け、クラリネット、アルト・サックス、最終的にはテナー・サックスと楽器をマスターしていき、活動拠点をイタリアに据えて、フリー・ジャズの世界へと足を踏み入れていった。 そんな彼の転機を示すのが、生まれ故郷のアルゼンチンに戻ったのち、1969年以降にフライング・ダッチマンというレーベルでの吹き込みを行なった時期であった。本盤『第三世界(The Third World)』は、同レーベルからの1作目であり、ニューヨークで録音されている。ジャズという枠組みでは容易に括ることのできない、南米もしくはラテン・ルーツの音楽性を強く意識した楽曲と演奏が特徴と言える。 1.「イントロダクション~リャマ飼いの歌(カンシオン・デル・ジャメーロ)~タンゴ」は、フリー・ジャズ的なテナーを軸にしつつ、アストル・ピアソラの「タンゴ」を取り上げるという大胆な演奏が必聴である。2.「ゼラオ」はブラジル人アーティストのセルジオ・リカルドの曲で、パーカッションを強く効かせたラテン調のナンバー。 3.「アントニオ・ダス・モルテス」は、バルビエリ自身のペンによるものであるが、ちょうどこの当時発表されたグラウベル・ローシャによる映画のタイトルを表題とする楽曲である。4.「バキアーナス・ブラジレイラス~ハレオ・アンド・ザ・ワイルド・ローズ」は、この時点でのバルビエリの集大成的な演奏と言えるように思う。朗々としたテナー、フリー・ジャズ的イディオム、うねるようなサウンド、叙情的なフレーズ…といった具合に、演奏者として、そして作品の制作者としてのこの時点での彼の本領を発揮しつくしているという感じがして、実に好曲・好演奏である。[収録曲]1. Introduction/Cancion del Llamero/Tango2. Zelão3. Antonio das Mortes4. Bachianas Brasileiras/Haleo and the Wild Rose[パーソネル・録音]Gato Barbieri (ts, fl, vo)Roswell Rudd (tb) Lonnie Liston Smith (p)Charlie Haden (b)Beaver Harris (ds)Richard Landrum (perc)1969年11月24~25日録音。 第三世界 [ ガトー・バルビエリ ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓