ブラッド・メルドー 『イントロデューシング・ブラッド・メルドー(Introducing Brad Mehldau)』
完成度の高いデビュー盤 ブラッド・メルドー(Brad Mehldau)は、1970年、米国フロリダ州出身のジャズ・ピアノ奏者。ジョシュア・レッドマンやパット・メセニーなどとの演奏でも広く知られる。1993年にはスペインでリリースされたライヴ盤『ニューヨーク・バルセロナ・クロッシング』(Vol. 1とVol. 2の2枚あり)に登場してはいるものの、彼にとってメジャー・デビューの録音盤となったのが、1995年の『イントロデューシング・ブラッド・メルドー(Introducing Brad Mehldau)』である。 全9曲のうち、4曲(4.、5.、7.、9.)がメルドーによるオリジナル。残りは、主にジャズ・スタンダードで、コルトレーン曲(2.)なんかも含まれている。トリオでの演奏だが、前半と後半でメンバーは異なっている。1.~5.は、ベースがラリー・グレナディエ、ドラムスがホルヘ・ロッシー。学生時代からの仲であるこのトリオ編成は、本盤の後に“アート・オブ・ザ・トリオ”で継続されていく。他方、6.~9.は、ベースがクリスチャン・マクブライド、ドラムスがブライアン・ブレイドとなっている。 全体の印象としては、このデビュー盤の時点で、既にブラッド・メルドーの完成度が高かったというものである。いかにもといったスタンダード曲を取り上げても、ありきたりに終わるのではなく、自身の色に染められるという自信があったのだろうと想像する。上で触れたように、2つの異なるトリオで吹き込まれているが、結果的にそうした“自分色”により合致していたのは、前半のトリオだったということだろうか。 ブラッド・メルドーのピアノに即して注目したい曲をいくつか挙げてみたい。1.「イット・マイト・アズ・ウェル・ビー・スプリング」は、メルドーのピアノの饒舌さが印象的で、冒頭から聴き手を引き込む演奏。3.「マイ・ロマンス」は、静けさの中で柔らかく包み込むピアノ演奏で、演奏力の高さと幅広さが感じられる。 その一方、上述の通り、自作曲も4曲含まれている。その中で注目したいのは、7.「ロンドン・ブルース」。初リーダー作とは思えない安定感がいい。あと、9.「セイ・グッドバイ」は曲の展開も演奏も完成度が高く、なんだかこのピアニストはずっと前から目の前にいたかのような気にさせられる。つまるところ、安定した演奏が聴き手にとって安らぎになるという典型例と言えるのかもしれない。 ブラッド・メルドーの華々しい経歴からすると、必ずしも代表盤やベストの盤というわけではないかもしれない。けれども、コーヒー(紅茶あるいはスープ?)をすすっている地味な写真ジャケットとは裏腹に、たいへん魅力的なピアノ盤と言っていいのではないかと思う。[収録曲]1. It Might as Well Be Spring2. Countdown3. My Romance4. Angst5. Young Werther6. Prelude to a Kiss7. London Blues8. From This Moment On9. Say Goodbye[パーソネル、録音]Brad Mehldau (p), Larry Grenadier (b, 1.-5.), Christian McBride (b, 6.-9.), Jorge Rossy (ds, 1.-5.), Brian Blade (ds, 6.-9.)1995年3月13日・4月3日録音。 【中古】 イントロデューシング/ブラッド・メルドー 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓