音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2016/02/04(木)10:13

イングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォース 『オディッセイ』

洋ロック・ポップス(909)

問題児の天才ギタリストがバンドとマッチした秀作  天才ギタリストとバンドの整合性は難しく、重要な問題だと思う。いいメンバーに出会わないと、なかなかいい作品が生まれないこともある。ちょっと思い浮かべるだけでも、いろんなギタリストがいろんなミュージシャンとコラボレートしながら、キャリアを歩んできたことが思いだされる。エリック・クラプトンしかり、ジェフ・ベックしかり、リッチー・ブラックモアしかり…。それぞれの歩みには、当然、成功もあれば失敗もある。  そんなギタリストたちの中でも、イングヴェイ・J・マルムスティーンはバンドメンバーにあまり恵まれてこなかった方だろう。イングヴェイは言わずと知れた早弾きのギターヒーローで、80年代以降のギター少年にとっては神様のような存在である。しかし、どうやら彼の「神様」ぶりはギター少年の間だけにはとどまっていないらしい。実際の音楽活動というか、人生においても「神様」らしき振る舞いが目立つ。バンドメンバーは一定しないし、好き放題の発言(暴言?)も多いらしい。「たかがドラマー」とか「(辞めたバンドメンバーを指して)死んだ魚」とか、「(バンド内で)俺は“絶対的存在”」などの発言が伝えられるが、これらはその一端にすぎない。そもそも、自分の先祖が爵位(伯爵)を得た1622年をモチーフに曲(『MAGNUS OPUS』収録の「Overture 1622」)を作るなんて、見方によっては、頭がどうかしているとしか思えない。  とまあ、こんな部分でよく扱き下ろされるイングヴェイだが、筆者は彼のプレイそのものには最大限の敬意を払いたい。無論、ただ「速弾きが偉い」などと言うわけではなくて、ふだんへヴィなロックを聴かない人にも通用する意味においてである。速いことだけが素晴らしいのではなく、その中にメロディアスで美しい要素がふんだんに込められているからこそ、そう思うのであって、この点は声を大にして言いたい。クラシックをベースにしたメロディアスでかつ速いギタープレイはやはり唯一無二の天才にしかなせない業だ。  ということは、バンド内の他のパートとの調和がうまく表現されれば、名作が生まれるのは至極当然のことである。その意味で、1988年にリリースされた本作『オディッセイ』は、イングヴェイの歴代アルバムの中で断然ナンバーワンの秀作である。  結局、このメンバーが永続するわけではなく、相変わらずイングヴェイはメンバーをころころと替えていくわけだけれど、ジョー・リン・ターナーというヴォーカリストの参加が、このアルバムを傑作にする上で重要な役割を果たしたことは間違いない。歌が優れていることで、ヴォーカルを聴きながら入っていくこともできるので、ギタリスト中心のロックに抵抗感のある人もとっつきやすい。無論、天才イングヴェイのギターは冴えわたっていて、本作ではバックとの息もぴったりだ。  そんなわけで、イングヴェイのギターだけ聴きたいという人には、何枚もある秀作のうちのひとつかもしれない。けれど、バンドの音楽をトータルで捉えたい人には、イングヴェイ最高の一枚と言えるだろう。 [収録曲] 1. Rising Force  ←おすすめ! 2. Hold On 3. Heaven Tonight 4. Dreaming (Tell Me) 5. Bite the Bullet 6. Riot in the Dungeons 7. Deja Vu  ←おすすめ! 8. Crystal Ball 9. Now Is the Time 10. Faster Than the Speed of Light ←おすすめ! 11. Krakatau 12. Memories ←おすすめ!(イングヴェイ・ソロの小品)    【メール便送料無料】イングヴェイ・マルムスティーンYngwie Malmsteen / Odyssey (輸入盤CD) (イングヴェイ・マルムスティーン)

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