カテゴリ:ジャズ
爽快に響くトランペットのワン・ホーン ブルー・ミッチェルは、翳りのあるというか、どこかしら物悲しい哀愁を秘めたトランペットを吹く。けれど、それと同時に、ミッチェルが吹くトランペットはクリアで伸びのある音色でもある。サイドメンで参加した、例えばホレス・シルヴァーのいくつかのアルバムを聴けば、このことはよくわかる。本盤『ブルーズ・ムーズ(Blue's Moods)』(1961年、RIVERSIDE)においても、トランペットばかりに集中して聴けば、クリアな音色の中に何かしら翳りが感じられるのは確かである。 本作はワン・ホーン・カルテットのリーダー作で、普通に考えれば、そうしたミッチェルのトランペットの特色が端的に出そうな編成である。けれども、出来上がった音楽は、なぜか爽快に響く。言い換えると、ミッチェルの音色にはいつも通りの翳りがあるにもかかわらず、その「翳り」は、アルバムとして全体を聴いた時、必ずしも前面には出てこないのだ。 その理由は二つある。一つは、曲順の妙。1曲目(本来のA面1曲目)の「アイル・クローズ・マイ・アイズ」、5曲目(B面1曲目)の「サー・ジョン」が特段に爽快な曲調に仕上がっている。つまり、必ずしも全曲が「爽快」な曲調というわけではないものの、そのような雰囲気を先入観として植えつけた上で、他の曲が続くという構成である。 もう一つの理由は、メンバーにある。ロイ・ブルックス(ドラム)とサム・ジョーンズ(ベース)の二人は、淡々と演奏をこなしながらも、盛り上げるところは盛り上げ(特にドラム)、軽快に飛ばすべきところはペースを上げていく(特にベース)。このリズム感が爽快さの基本となっている。そして、極めつけはウィントン・ケリーのピアノ。随所でソロを取るのだが、これがまたいい意味でスムーズに流れていくソロなのである。言い換えれば、本盤でのウィントン・ケリーは、(これまたいい意味で)粘着性の少ないプレイを展開しており、それが爽快さに確実につながっている。 以上のような爽快さゆえ、筆者はよく本盤を「朝一盤」として聴く。晴れた空、爽快な朝に1曲目か5曲目から聴く。もちろん、昼下がりに聴いても夜中に聴いても名盤なのだろうけれど、いつからか、個人的には朝起きて最初の一枚として愛聴している。 [収録曲] 1. I'll Close My Eyes 2. Avars 3. Scrapple From The Apple 4. Kinda Vague 5. Sir John 6. When I Fall In Love 7. Sweet Pumpkin 8. I Wish I Knew 録音:1960.8.24&25. Richard "Blue" Mitchell (tp), Wynton Kelly (p), Sam Jones (b), Roy Brooks (ds) ![]() 【送料無料】ブルーズ・ムーズ [ ブルー・ミッチェル ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年02月09日 10時30分49秒
コメント(0) | コメントを書く
[ジャズ] カテゴリの最新記事
|
|