カテゴリ:ジャズ
超技巧派ピアニストによる勢いに乗った熱演 ミシェル・カミーロ(こう書く方が正確だが、日本盤などでは"ミッシェル・カミロ"と表記されている)は、1954年ドミニカ共和国出身のピアノ奏者・作曲家。今まで知らなかったのだけれど、日本制作盤(1986年、キングレコード)から火がついてメジャーに進出したのだそうだ。 彼の演奏を初めて聴いたのは1995~96年頃、メキシコシティの小さなホールだった。それまで彼の名は知らなかった。ただ割り引きチケットで入れるコンサートがあるからという理由で友人たちについて行ったまでだった。ところがどっこい、演奏を聴いてその凄さに圧倒され、唖然とした。そして、数日後、彼のCDを買いに走った。そうして手にしたのが、本作『ランデヴー(Rendezvous)』である。 ミシェル・カミーロは、「超技巧派」と呼ばれ、圧倒的なテクニックで知られる。要は「技術の高い」ピアニストとして有名なわけである。実際、筆者も初めて彼のライヴを体験した時に圧倒されたのはこの点だった。けれどこのアルバムを繰り返し聴き、やがて他のアルバムも何枚か聴くうちに気付いたのは、彼の演奏を素晴らしいものにしているのが「単なる技巧」だけではないということだった。 もう一つ、彼を形容する際によく用いられる台詞は、「ラテン」(ラテン的、ラテン・ジャズ、ラテン・フレーヴァー、など)や「カリブ」(カリビアン・テイスト、カリブの熱風、など)といった表現だ。これらの言い回しは、しばしば演奏の"熱さ"とも結びつけられて述べられる。 「超技巧」と「ラテン(カリブ)」。どちらもミシェル・カミーロを説明するのに真である。確かに、生半可なテクニックではないし、黒人ジャズとはまったく異なるラテン的熱さが感じられる。けれど、これら二つの要素が結合してこそのカミーロだという点を強調しておきたい。つまり、どちらか一方ではだめなのであって、これら両方の要素があってこそはじめて彼のよさが認識できるのだと思うわけだ。 「超技巧」と「ラテン性」の結合の結果が、このアルバムの"疾走感"である。1.「トロピカル・ジャム」からして既にハイライトのように思える。途中、テンポを落とし、静かになる曲(2.、4.、6.)もある。音の間とタイミングを活かした3.「エル・レアレホ」のような曲もあれば、9.「フロム・ウィズイン」のように強弱の波をつけながらピアノが走り続ける曲もある。単に疾走するだけの音楽が40分も50分も続いたら、普通は退屈するだろう。けれど、落ち着いた曲調、強弱のメリハリが利いた楽曲といったものをうまく混ぜ込むことによって、全体に疾走感がありながら、しかし単調になってしまわない工夫が本盤にはなされている。 カミーロのアルバムは他にもいい作品がある。だから何が何でも本盤が最初というわけではないけれど、この『ランデヴー』は、カミーロへの一つのいい入口になり得る作品だと思う。 [収録曲] 1. Tropical Jam 2. Caravan 3. El Realejo 4. Rendevous 5. As One 6. Remembrance 7. Blacky 8. Albertina 9. From Within Michel Camilo (p), Anthony Jackson (b, g), Dave Weckl (ds) 録音:不明(1993年5月リリース) ![]() 【送料無料】ランデブー/ミシェル・カミロ[CD]【返品種別A】 ![]() 【送料無料】【輸入盤】 Rendezvous [ Michel Camilo ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016年01月28日 22時25分51秒
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