音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2016/01/27(水)06:30

ボストン 『サード・ステージ(Third Stage)』

洋ロック・ポップス(912)

8年毎にしかアルバムを出さないボストンの慣例の始まり  以前、『幻想飛行(Boston)』で紹介したボストンのサード・アルバムが、ここで紹介する『サード・ステージ』(1986年)。『幻想飛行』の項を書いた時に、どっちを先に紹介しようか迷ったアルバムである。  前にも書いたのだが、ボストンの最高作を一枚だけ選べといわれれば、筆者はとても悩む。1976年のファースト・アルバム『幻想飛行』も捨てがたいのだが、どうしても一枚だけとなれば、筆者はこの『サード・ステージ』を選ぶかもしれない。いや、その日の気分によるかもしれないので、とりあえず今日はこの『サード・ステージ』の気分ということにしておく。ちなみに、サウンド的には(シュワルツとしては、1枚ごとに進化しているのだろうけれども)、どのアルバムも似通っている。なので、あとはアルバム全体を通して見たときの盛り上げ方、抑揚のつけ方、さらには筆者の思い入れやその日の気分という観点での判断になる。  さて、本作『サード・ステージ』は"8年に1作"という慣例(?)が確立された最初のアルバムで、1978年のセカンド・アルバムから、8年間を費やした末に1986年にリリースされた。トム・ショルツは79年に既に3枚目の構想について語っていたと言うから、まるっきりサボっていたわけではない。けれども、旧所属のレーベル(EPIC)とは作業の遅さから訴訟問題に発展し、MCAに移籍しての本盤発表となった。第1作・第2作とも大きなヒットを記録していただけに、レコード会社の期待も、ファンの期待も大きかったという状況だ。だからこそ、完璧なものを求めて、ショルツは十分に納得がいくまで年月を重ねることを是としたのかもしれない(1980年に実際に作業を開始してから、ショルツは1万時間以上を制作に費やしたらしい)。実際、本盤収録の楽曲は1980年から86年のものまでが入り混じっている。  今回、本盤を挙げるのは、アルバムのトータリティ(全体性・総体性)という観点からの評価である。音作りという観点からすると、他の各アルバムも同様に優れており、この第3作だけが特段優れているわけではない。とりわけ、デビュー作から第4作まで(『幻想飛行』、『ドント・ルック・バック』、本盤『サード・ステージ』、『ウォーク・オン』)は変わらぬクオリティの高さを誇っていおり、その意味では、どれを聴いても、ボストンのサウンドの懐の深さを体感することができる。  本盤の特徴の一つは、ストーリー性である。1曲目はシングルヒットしたスロー曲「アマンダ」だが、これだけ聴くと、単なるラブバラードである。しかし、アルバム全体としてのストーリーは"宇宙の旅"というテーマに沿って展開する。2.「ウィー・アー・レディ」(準備はOK、の意)で出発準備を整え、続くインスト曲の3.「ザ・ローンチ」で宇宙船は飛び出す。4.「クール・ジ・エンジンズ」では、エンジンを弱めて制御を保ち、5.「マイ・デスティネイション」では、"僕のゴールは君だ"と宇宙船の目的地と愛の目的地をだぶらせて語る。再びインストの6.「ニュー・ワールド」からがアナログではB面で、愛になぞらえた宇宙飛行は、11.「ホリーアン」まで続く。  通して聴くと、他のアルバムに比べ、本盤にはスローナンバーやバラード系の曲が目立つ。これを売れ筋に走ったと取るか、はたまたデビューから2作までの傾向と違うと捉えるか否かは微妙なところだが、筆者は上で述べたようなコンセプト的な作りの結果と考えたい。本盤中の好きな曲もそうしたスロー・バラード系統の曲に落ち着いてしまうのだが、個人的には、1.「アマンダ」、5.「マイ・デスティネイション」、9.&10.「キャンチャ・セイ/スティル・イン・ラヴ」、さらには、11.「ホリーアン」がおすすめ。    [収録曲] 1. Amanda 2. We're Ready 3. The Launch: a) Countdown b) Ignition c) Third Stage Separation 4. Cool the Engines 5. My Destination 6. A New World 7. To Be a Man 8. I Think I Like It 9. Can'tcha Say (You Believe In Me) 10. Still in Love 11. Hollyann 1986年リリース。  サード・ステージ/ボストン[SHM-CD]【返品種別A】         

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