音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2016/01/28(木)21:43

ブッカー・アーヴィン 『ザ・フリーダム・ブック(The Freedom Book)』

ジャズ(496)

ブック・シリーズ4部作の第1弾  テナー奏者ブッカー・アーヴィン(Booker Ervin)の『ザ・フリーダム・ブック(The Freedom Book)』は、プレスティッジにおける彼のリーダー作としては2枚目のものである。録音は1963年12月だが、この時期から翌年にかけての吹き込みは計4枚のアルバムを生み出した。その4枚とは、本盤に加えて、『ザ・ソング・ブック』、『ザ・ブルース・ブック』、『ザ・スペース・ブック』であり、併せてこれら4部作は"ブック・シリーズ"の名で呼ばれている。  さて、タイトルの"フリーダム"とは、別にフリージャズとかいう意味ではない。ブッカー・アーヴィンは、当時のジャズの伝統的スタイルを基本とするプレイヤーで、それを踏まえた上で、文字通り"自由"にプレイしている。本来の収録曲全5中4曲が彼のオリジナル曲で、スタンダード中心の『ザ・ソング・ブック』とは対照的である。  これに対し、同じく『ザ・ソング・ブック』との比較で言えば、ワン・ホーンのカルテット編成という点は同じ(ただし、ピアノが本盤ではジャッキー・バイアードだが、『ザ・ソング・ブック』ではトミー・フラナガン)。本作に関しては、ジャッキー・バイアードとの組み合わせが良い相乗効果を生み出していると思う。  さて、肝心のブッカー・アーヴィンの演奏だが、1.「ア・ルーナー・チューン」からして好き放題に吹きまくっている。以前も書いたように、このあたりが"垂れ流し演奏"との批判を受ける部分でもあるが、筆者は彼のこういうところが好きだ。2.はバラードで本盤収録中唯一の非オリジナルだが、3.「グランツ・スタンド」になると再び吹きまくるテナー演奏が聴かれる。総じて、1.と3.はいかにもブッカー・アーヴィンの本領発揮といった演奏である。  4.「ア・デイ・トゥ・モーン」は少し趣が異なり、物悲しげな雰囲気の曲である。それもそのはずで、ケネディ暗殺の際の葬送曲から着想を得た曲らしい。最後の5.「アルズ・イン」は、"アル"ことドラムのアラン・ドーソンを大きくフィーチャーした曲。やはり自由奔放なブッカー・アーヴィンのテナーが聴きどころではあるが、上で述べたジャッキー・バイアードのソロもあわせて聴けば、本盤でのこのピアニストとの組み合わせがいかに成功だったかがよくわかると思う。  きっとブッカー・アーヴィンとジャッキー・バイアードは互いに似た部分があったのだろう。ともに計算高くない。しかし、というか、だからこそ、計算されてびしっと決まった演奏というのではなく、あふれ出てくる感情にまかせてそれを音で表現すると言うような演奏をする。体内からあふれ出すものの発露が彼の演奏なのだ。スタイルやテクニックだけをキーワードに彼の演奏を聴いたなら、いろんな注文をつけたくなるのはわからないでもない。しかし、私たちが耳にしているブッカー・アーヴィンの演奏が、彼の魂や身体の奥底から湧き上がってくるものに由来し、そうした形のないものに"音"という形を与えたのが彼の演奏だとすれば、それはないものねだりであり、逆にそれを奪ってしまうなら、彼らしさは消え去ってしまうだろう。 [収録曲] 1. A Lunar Tune 2. Cry Me Not 3. Grant's Stand 4. A Day To Mourn 5. Al's In 6. Stella By Starlight(←97年日本盤CD所収のボーナス・トラック) Booker Ervin (ts) Jaki Byard (p) Richard Davis (b) Alan Dawson (ds) 1963年12月3日録音  【メール便送料無料】ブッカー・アーヴィン / ザ・フリーダム・ブック[+1][CD][初回出荷限定盤(初回プレス完全限定)]              

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