音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2016/02/18(木)20:32

アート・ペッパー 『アート・ペッパー・ウィズ・ウォーン・マーシュ(Art Pepper with Warne Marsh)』

ジャズ(500)

リラックスして楽しく聴けるペッパー盤  アート・ペッパーは、1950年代後半に優れた録音を多く残しており、この時期のファンという人も多い。同時期には、『ミーツ・ザ・リズム・セクション』(1957年録音)や『モダン・アート』(1956~57年録音)などといった彼の代表作とされる有名盤が吹き込まれている。これらの盤でのアート・ペッパーは"閃き"の演奏を繰り広げ、その才能をいかんなく示しているわけだが、今回はそうした本筋から少し離れた感じのする演奏を紹介したい。  本盤『アート・ペッパー・ウィズ・ウォーン・マーシュ(Art Pepper with Warne Marsh)』は1956年11月に録音された。まさに上記の"絶頂期"の録音であり、細かく言えば、コンテンポラリー・レーベルでの初リーダー・セッションであった。しかし、長らく発売されず、1972年になってようやくその一部の音源だけが陽の目を見た。『ザ・ウェイ・イット・ワズ』というアルバムがそれで、本作との間で重複している4曲(本盤の1., 3., 5., 7.)が同じ音源からのものである。そのさらに後になって、上記のセッションをまとめてあらたに発売された(発売は1986年と思われる)のが本盤である。  さて、この『アート・ペッパー・ウィズ・ウォーン・マーシュ』は、上ではじめに挙げた有名盤と違い、全編にわたって何ともリラックス・ムードで貫かれている。ウォーン・マーシュとの組み合わせがそうさせたのかどうかはよくわからないが、とにかくアート・ペッパーの演奏自体が"軽い"。"軽い"というのは、別に悪い意味で言っているわけではない。ちょうどいい具合に肩の力が抜けて"軽やかに"演奏していると言えば誤解が少ないだろうか。  そんな軽やかなアート・ペッパーのアルト・サックスが、ウォーン・マーシュのテナー・サックスとついたり離れたりしながら演奏が進んでいく。絡みまくるわけでもなければ、ばらばらに吹いているいるわけでもない、この"軽妙さ"が本盤の心地よいところで、バックの3人(ピアノ、ベース、ドラムの3人、中でも特にピアノのロニー・ボール)も出しゃばり過ぎずに総じて控えめな演奏に徹しているところがこの軽妙さを一段と心地よいものにしている。聴いている方は、曲によっては思わず楽しくなりにんまりと笑みを浮かべたくなるほどだ。  真剣に向かい合い、のりまくって閃きのフレーズを連発するアート・ペッパーを筆者はとても好きなのだが、このアルバムには、もう一つの異なる彼の特色が表れているように思う。リラックスしたムードの中で"閃き"があり、それを"閃き"のように見せることなく(しかしちゃんと聴くとフレーズや旋律そのものは"閃き"なのだが)何食わぬ顔で演奏をしていく軽妙な姿のペッパー。これはこれでとても魅力があって好きだ。  こうした観点からお気に入りなのは、1.「恋のため息(本テイク)」、5.「ホワッツ・ニュー」、10.「ストンピング・アット・ザ・サヴォイ」。それから、7.「ティックル・トゥ」は別格。アート・ペッパーとこの曲は相性がよく、『サーフ・ライド』にも見事な演奏を残しているが、こちらの盤に収録されたのもなかなかいい。   [収録曲] 1. I Can't Believe That You're in Love with Me (orig. take) 2. I Can't Believe That You're in Love with Me (alt. take) 3. All the Things You Are (orig. take) 4. All the Things You Are (alt. take) 5. What's New 6. Avalon 7. Tickle Toe 8. Warnin (take 1) 9. Warnin (take 2) 10. Stomping at the Savoy Art Pepper (as) Warne Marsh (ts) Ronnie Ball (p) Ben Tucker (b) Gary Frommer (ds) 録音: 1956年11月26日  【メール便送料無料】アート・ペッパー / アート・ペッパー・ウィズ・ウォーン・マーシュ[CD]              

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