カテゴリ:邦ロック・ポップス
アイドル歌手がアーティストを目指すとき ~その2~ 前回の河合奈保子(『スカーレット』)に続き、今回もアイドルとして活動しながらもアーテイスト路線へと方向転換を図った歌い手のアルバムで気に入っている盤を取り上げたい。森川美穂といってもピンとこない人もいるかもしれないが、もともとVapからアイドルとして売り出され、やがて学園祭の女王として人気を定着させていったシンガーである。1990年代にいくつかのヒット曲を残し、その実力から、現在は大阪芸術大学のヴォーカル実技の専任講師を務めている。 1983年にヤマハのオーディションに選ばれ、1985年にアイドル歌手としてデビュー。同期には、南野陽子、本田美奈子、中山美穂などアイドルの一時代を築いた見事な顔ぶれが揃っていた。所属レーベルVapの強い押しでトップテンなどにも取り上げられたりするが、本人はアイドルとして売り出されていることに納得していないようだった。1987年、ASKA作の「おんなになあれ」(6枚目のシングル、アルバムとしては2枚目)の辺りから徐々に路線変更し始め、ヴォーカリストとしての立場を明確にしていく。そんな中、同年11月に発売されたのが、アルバムとしては3枚目にあたる本作『ヌード・ボイス』だった。 森川美穂という人の性格・キャラはアイドルに向いていなかった。デビューからしばらくすると、ラジオ番組等でのトークが好評を博し、歯に衣着せぬ物言いがファン層の拡大につながった。振り返ってみると、1987年の本作『ヌード・ボイス』、翌1988年の『1/2Contrast(ハーフ・コントラスト)』の辺りの彼女は、開けっ広げで単刀直入でストレートな性格そのままの歌声を披露していたと思う。ヴォーカリストとしてのセールスの全盛は1990年代前半で、その頃にはヴォーカリストとしてのテクニックも増していったのだが、筆者としては、粗削りな部分も含めて、特にこの時期の生き生きした歌いっぷりが気に入っている。 収録曲のうち、2.「Pride(プライド)」は先行シングルとして発売され、それ以前のシングル曲と同様にミノルタ(カメラ)のCM曲として使用された。思いっきりのよいヴォーカルが印象的なナンバーで、アルバム収録曲では、1.「Nice Meet」や6.「Good Luck」なども似た傾向にある。まだアイドル時代を若干引きずっているような曲もあるけれど、全体としてとても気持ちよく歌っているという印象がある。もう一つ付け加えておくと、男女関係云々といった詞の内容が中心である中、10.「Bird Eyes」は唯一の落ち着いたバラード曲で、内容もこの1曲だけ普遍性のある内容である。この曲はとにかく名曲で、なおかつ後々開花していく歌唱力の片鱗が存分に伺える。NHKアニメ「ふしぎの海のナディア」の主題歌など後々のヒットしか知らない人はぜひさかのぼってこのアルバムも聴いてもらえるといいように思う。 追記: 余談ながら、森川美穂のVap時代のCDは、1990年の東芝EMI移籍に伴ってすべて廃盤となり、一時は1万円などというプレミアが付いていた。1999年に一斉に再発されたが、現在では再び廃盤のため入手しにくいアルバムもある模様(本作『ヌード・ボイス』は中古であれば入手は特には難しくない)。 [収録曲] 1. Nice Meet 2. Pride 3. By Yourself 4. 月曜日の痛み 5. やさしくなって… 6. Good Luck 7. Cancel 8. Silent Talk 9. クリスマスはどうするの? 10. Bird Eyes 1987年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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『森川美穂の青春放送局』を電波状態悪いながらも聞いていました。初期は貸しレコで借りてきてダビング。Vocalization からVOICESまでは未だにCDラックに入ってます。『ヌード・ヴォイス』は「Pride」と「Good Luck」が好きでしたね。年齢的にも自分の一つ上だったんで、同世代目線で音楽に共感で来てました。(個人的には「おんなになあれ」の前の時期も好きですね。)
(2017年03月07日 02時46分14秒)
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