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音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年04月28日
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テーマ:洋楽(2524)

懐の深さを示す1989年作品


 イギリス出身のジョー・ジャクソン(Joe Jackson)という人は、厄介なアーティストだ。アルバム毎に作風が違うどころか、ロックだったりクラシックだったりジャンルすら違うこともある。1979年にデビューした時の作品(『ルック・シャープ』)は、確かにパンチの利いた(かつ皮肉も利いた)ロックサウンドと言っていいものだったが、まもなくいろんな音楽に手を伸ばし始める。その結果分かってきたのは、ジョー・ジャクソンとはある種の天才であるということだった。彼は、まるで吸水スポンジのように、いろんなジャンルの要素を吸い込み、取り込んでいって、見事に自分の作品に仕上げてしまう。ロックだけでなく、レゲエにジャイヴ、R&Bにジャズ、ファンクにラテン、クラシック…、結果、アルバム毎にそれぞれ違った作風の作品が残されていく。その理由から、結局のところ、彼の代表作はこれだという明確なアルバムがなく、したがって一般受けしにくいという損な面もある。

 筆者は彼の作品をすべて聴いたというわけではないが、わりとコンスタントに追っかけてきた。時折、突然に聴きたくなるというのが、彼のアルバムの中には多い。本作『ブレイズ・オブ・グローリー(Blaze of Glory)』もそうしたうちの一枚である。リリースは1989年、デビューからちょうど10年にして11作目。デビュー以来在籍したA&Mレーベルでの最後のアルバムに当たる。シングルカットされた8.「ナインティーン・フォエヴァー」は多少売れたものの、アルバム自体は大したセールスを挙げることはなかった。

 正直、このアルバムは長い。収録時間は60分足らず(それでも当時にしてはアルバムとしては長い方)なのだが、どうも体感時間が長い。その理由は、ストーリー性があり、起伏に富んだ内容にある。全体としては、アルバムが制作された1980年代末からみた過去の郷愁とでもいうべきテーマで様々な楽曲がストーリーを紡いでいく。1950年代をテーマにした1.「トゥモローズ・ワールド」に始まり、3.「ダウン・トゥ・ロンドン」では、成功を夢見てロンドンに向かう若者が描写される。表題曲の6.「ブレイズ・オブ・グローリー」は若くして死んだロック・ミュージシャンを取り上げたもの。上記の8.「ナインティーン・フォエヴァー」では、“僕は絶対に35歳にならない”と“永遠の19歳”を歌っているが、ジョー・ジャクソン自身がまさしく当時34歳で、自身のことを詞にしていると思われる。冷戦体制を風刺した10.「イーヴィル・エムパイアー」、現代社会に人間のあたたかみを求めようとする内容の12.「ザ・ヒューマン・タッチ」、いずれも制作時のジョー・ジャクソンの心情に根ざしたやや重めのテーマで、いわば半自叙伝的な内容で統一されている。

 長く感じるもう一つの理由は、これら楽曲が途切れなく演奏されているという点である。言い換えれば、上記の各曲の様々なストーリーが独立した1曲ずつの形で提示されているというよりは、連続したアンソロジーのようになっている点である。音的に各曲が切れ目なく連続して流れてくる。そのため、ぼうっと聴いているといつの間にか次の曲に移っている。ジョー・ジャクソン自身、そういう風に聴いてほしかったのだろうが、コンサートでの再現は難しいわ、ラジオのオンエアに合わないわで、セールスが伸びなかったのは当然かもしれない。アルバムとしては、全米では61位、全英でも36位止まりの結果だった。

 とはいえ、筆者にとってはある日突然に聴きたくなるアルバムである。この長い1枚の中にたくさんのストーリーが詰め込まれているのと同時に、凝った音作りが凝縮されている。ロック/ポップで一般的な楽器類はもちろんのこと、各種サックス(アルト、テナー、バリトン)やトロンボーンといった管楽器、コンガにシタール、ヴァイオリンにチェロ、アコースティックベースと幅広い音の演出には総勢20名ほどのミュージシャンが参加している。上述のように、長くて重くてどちらかというと疲れるアルバムだが、聴けば聴くほど新しい発見があり、その意味ではただのロック(あるいはポップ)ミュージシャンではない、ジョー・ジャクソンの懐の深さが浮き彫りになる、“忘れ去られた名作”と言えるように思う。



[収録曲]

1. Tomorrow's World
2. Me And You (Against The World)
3. Down To London
4. Sentimental Thing
5. Acropolis Now
6. Blaze of Glory
7. Rant And Rave
8. Nineteen Forever
9. The Best I Can Do
10. Evil Empire
11. Discipline
12. The Human Touch

1989年リリース。





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Last updated  2010年04月28日 06時57分12秒
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