カテゴリ:洋ロック・ポップス
大転換&大ヒットのセルフタイトル作 ハート(Heart)は、アンとナンシーのウィルソン姉妹をフロントに据えたロック・バンド。1970年代前半にハート名義でのバンドが形成され、1976年に『ドリームボート・アニー』でメジャー・デビューした。レッド・ツェッペリンの影響を伺わせるバンド・サウンドが人気を呼び、1980年の『べべ・ル・ストレンジ』および同年の初のベスト・アルバム『ザ・グレイテスト・ストーリー(ライヴ&ベスト)』までは順風満帆のキャリアを重ねた。しかし、82年~83年に立て続けに出したアルバムはセールス的には不振に陥り(1982年のアルバムについては過去記事を参照)、79年以降の相次ぐメンバーの脱退と上記のセールス不振から、バンドは一大方向転換をする。その成果が1985年のこのセルフタイトル・アルバムで、スタジオ作にして8枚目(上記ベスト/ライヴも入れると9枚目)の『ハート(Heart)』である。 ハートが思い切ってとった一大転換とは、レーベル移籍(エピックからキャピトルへ)し、外部のライターの曲も導入し、プロデューサーにロン・ネヴィソン(Ron Nevison、ザ・フー『四重人格』やストーンズ『イッツ・オンリー・ロックンロール』でも知られるが、その当時はKISSやサバイバーのプロデュースを手掛けていた)を起用したというものである。結果、アルバムは見事に全米1位の大ヒットとなった。シングル曲としてもアルバム10曲中の5曲がカットされ、うち4曲が全米トップ10に入るというセールス面の成功を収めた。ちなみにシングル・カットされた5曲とは、本作のトラック・ナンバーで言うと、2.、3.、4.、8.、1.(発売順)で、うち4.「ジーズ・ドリームス」がシングル全米1位を獲得した。 後にウィルソン姉妹は、ロン・ネヴィソンのプロデュース(彼がプロデュースしたのは本盤およびその次作にあたる『バッド・アニマルズ』)には、明らかに売れ筋狙いの音作りで納得できない部分もあった、との発言をしているが、この徹底した“売れる音作り”がなければ、ハートの復活劇もなかったわけである。確かに、25年が経過した今からすれば、音がきらびやか過ぎて、違和感を感じる部分もなくはない。従来のハートを知るファンからすれば、このバンドの良さであるソリッドなサウンドとアコースティックな響きが消されてしまっている印象は拭えず、それに対してヴォーカルが強調され、しっかりとしたギター音は控えめにしか聞こえてこない(そのように音作りが意図的になされている)。それでもなお、5.「ザ・ウルフ」や10.「シェル・ショック」のように前作までの雰囲気に比較的近いサウンドの曲や、7.「ノーバディ・ホーム」の曲調から判断する限り、従来のハートらしさがちゃんと垣間見える曲も含まれている(ちなみにこれら3曲ともウィルソン姉妹の関わった共作曲)。 いずれにせよ、内容面でこれがハートのベスト作ということはないだろうが、“入りやすさ”という意味ではベスト作と言えるかもしれない。ハートを聴く人の層を大幅に広げたという意味では極めて重要なアルバムだった。しかも、昨今の80年代懐古の雰囲気とともに、新たなハートのリスナーを獲得する入口の一枚にまだまだなり得る。そう考えれば、本作や次の『バッド・アニマルズ』あたりから初めてハートを聴き始めるという選択肢も悪くないように思える。 [収録曲] 1. If Looks Could Kill 2. What About Love 3. Never 4. These Dreams 5. The Wolf 6. All Eyes 7. Nobody Home 8. Nothin' At All 9. What He Don't Know 10. Shell Shock 1985年リリース。 関連過去記事: ハート 「ロックンロール -ライヴ-」 ザ・ラヴモンガーズ 「バトル・オブ・エヴァーモア(限りなき戦い)」 ハート 『プライベート・オーディション』 ![]() Heart ハート / Heart 輸入盤 【CD】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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