テーマ:女性ヴォーカル(44)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
秋の夜長にジャジーな女性ヴォーカルを ~その3(最終回)~ いつしかジャズっぽいがジャズではない、“ジャジー”なヴォーカルというジャンル(?)が定着した。ここまでメロディ・ガルドーの『夜と朝の間で』、ダフィーの『ロックフェリー』と比較的リリース年の新しい(共に2008年)ものを見てきたけれど、ここでその流れを時間的に少しだけさかのぼり、ひとまずは3回シリーズの最終回にしようと思う。 ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)は、近年“ジャージー”という形容がなされる女性ヴォーカリストの筆頭である。“ジャジー”という言葉自体はずっと前からよく使われていたにせよ、現在、女性ヴォーカルとの絡みでよく使用されるに至ったのは、明らかにこの人の成功と関係している。もっと時間幅を長くとってみれば、その前にカサンドラ・ウィルソンなどもいるわけだけれど、短期的に見てノラ・ジョーンズは、近年の“ジャジーな女性ヴォーカル”の直接の起点と言えるのだろう。 1979年生まれの彼女のデビュー作が本盤『カム・アウェイ・ウィズ・ミー(邦題:ノラ・ジョーンズ)』である。父はシタール奏者だったらしい。本人は大学でジャズ・ピアノを専攻しているが、自身が語るところでは、ジャズ一辺倒の人ではなく、学生時代には“ダークでジャジーなロック”をバンドでやっていたと言う。 2000年にその才能を買われた彼女は翌年にブルーノートと契約、2002年にこのデビュー作を同レーベルからリリースすることになる。ブルーノートという名が(あるいはネームバリューが)すべてではないが、“ブルーノート”からリリースというのは一つのミソだったのだろう。デビュー作に際してあてがわれたプロデューサーはクレイグ・ストリート、さらに途中からはアリフ・マーディンであった。マーディンの方はとりわけ有名なプロデューサーで、アレサ・フランクリンやロバータ・フラックをプロデュースした大物であった。このことからもノラのデビューにレコード会社側がどれほど期待していたかがよくわかる。実際、アルバムは本人がまったく想像していなかったような特大ヒットになり、2003年のグラミー賞では8部門を受賞(*文末の注釈を参照)で話題をさらった。 初めてこれを聴いた時から今まで変わらずに続いている感想は、ノラ・ジョーンズの歌声は“癒し”であるということ。ある時から“癒し系”などというヘンテコな日本語が普及して安易に使われるようになってしまったが、彼女の場合は、“~系”といったような軽薄な響きではなく、“癒し”そのものだと思う。1曲目の「ドント・ノウ・ホワイ」を初めて聴いた瞬間から筆者はノックアウトであった。1.の他に個人的なお気に入りは、4.「フィーリング・ザ・セイム・ウェイ」、表題曲の5.「カム・アウェイ・ウィズ・ミー」、13.「ザ・ロング・デイ・イズ・オーバー」、14.「ニアネス・オヴ・ユー」などがあるが、どれも聴いていて心を落ち着かせてくれる曲が並んでいる。 さて、 “ジャジーな女性ヴォーカル”と題して今回は3枚を紹介して一区切りだけれども、実はこの流れというのは、上でも名を挙げたように、例えばカサンドラ・ウィルソンにさかのぼることができるし、いわゆるシンガーソングライター系がジャズ的な要素に何らかの形でタッチするアプローチという点では、ジョニ・ミッチェルにもさかのぼれるかもしれない(特にカサンドラ・ウィルソンは特別なお気に入りも複数枚あるのでいつか記事を改めて書きたいと思う)。とはいえ、もっとお洒落な感覚(?)を伴って、若いリスナー層を巻き込んでのヒットを記録したという意味では、このノラ・ジョーンズの成功は大きかった。そういう大きな流れを作ったという意味で、今回はノラ・ジョーンズで一区切りとしたい。 *注釈:グラミー賞の内訳は、最優秀アルバム賞、最優秀ポップヴォーカルアルバム賞、非クラシック最優秀録音賞(以上、アルバムが対象)、最優秀新人賞(ノラ・ジョーンズが対象)、最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀女性ポップヴォーカルパフォーマンス賞(以上、「ドント・ノウ・ホワイ」が対象)、最優秀プロディーサー賞(プロデューサーのアリフ・マーディンが対象)の計8部門。 [収録曲] 1. Don't Know Why 2. Seven Years 3. Cold Cold Heart 4. Feelin' the Same Way 5. Come Away with Me 6. Shoot the Moon 7. Turn Me On 8. Lonestar 9. I've Got to See You Again 10. Painter Song" 11. One Flight Down 12. Nightingale 13. The Long Day Is Over 14. The Nearness of You 2002年リリース。 [関連記事リンク] 秋の夜長にジャジーな女性ヴォーカルを~その1~(メロディ・ガルド―) へ 秋の夜長にジャジーな女性ヴォーカルを~その2~(ダフィー) へ 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010年10月19日 04時35分28秒
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