テーマ:アメリカン・ロック(104)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
“ホテル・カリフォルニアの声”によるアメリカン・ロック・ヴォーカルの到達点 ドン・ヘンリー(Don Henley)は、1947年テキサス出身のドラマー、ヴォーカリスト、ソングライター。イーグルスのオリジナル・メンバーで、ドラムを担当すると同時に「ホテル・カリフォルニア」(この曲の過去記事はこちら、同名アルバムの過去記事はこちら)をはじめとするヴォーカルでも知られる。イーグルス解散後は1982年、1984年と順調にソロ作を発表し、3枚目のソロ・アルバムとして1989年に満を持して発表したのが本作『エンド・オブ・ジ・イノセンス(The End of the Innocence)』であった。今までのところ、彼のソロ作(その後2000年にもう1作リリースしているので計4枚、ベスト盤は除く)のうち最も売れたアルバムでもある。結果的に、1984年に続きこのアルバムでもグラミー賞ベスト・ロック・ボーカル(男性)部門を受賞した。 ドン・ヘンリーのソロ作はすべて聴いたわけではないのだけれど、これまで聴いた中では本盤がいちばん気に入っている。筆者の独断と偏見で最高の3曲は以下の通り。 まずは、表題曲の1.「エンド・オブ・ジ・イノセンス」。ドン・ヘンリーとブルース・ホーンズビーの共作で、ホーンズビーによる独特のピアノ演奏が印象的なスロー・ナンバー。ちなみにホーンズビーはプロデュースにも加わっている。シングル・ヒットしたことで、ドン・ヘンリーのこのヴァージョンがよく知られているが、ホーンズビー自身もこの曲を取り上げている。加えてこの曲の演奏で密かにいい味を出してソプラノ・サックスのソロをとっているのは、ウエイン・ショーターである。この曲でのホーンズビーやショーターをはじめ、本盤はこうした大物ミュージシャンの参加があちらこちらに散りばめられているので、歌詞カードのクレジットを見ながら聴いていると、“なるほどこれはそうか!”という意外な発見もある。 次に、5.「ニューヨーク・ミニット」。ストリングスが印象的で、時間的には6分半と長めのバラード曲。静かな始まりで、じっくりとヴォーカルを聴かせる抒情的なナンバーである。タイトル・詞の通り、ニューヨークの寒い街角を連想させる曲調である。サビ部分では、テイク6(Take 6)がコーラスで参加していて、彼らのバック・コーラスとドン・ヘンリーのリード・ヴォーカルの絡みも美しい。ちなみにこの曲のドラムはジェフ・ポーカロ(TOTOのドラマーでこの録音の数年後に急逝)が担当している。また、この曲は、後にハービー・ハンコックが1995年にリリースした『ニュー・スタンダード』でオープニング・ナンバーとして採録されている。 10.「ハート・オブ・ザ・マター」も、アメリカン・ロックの王道を行くスロー/ミディアム・ナンバー。J.D.サウザーが共作者に名を連ねている。J.D. サウザーは様々なアーティストに楽曲提供をしており、70年代には“もう一人のイーグルス”とも呼ばれるほどで、ドン・ヘンリーにとってはイーグルス時代から関わりの深かったアーティストである。その流れからすると、なるほどというか、いかにもという曲調の1曲である。この曲も聴きどころも、ずばりドン・ヘンリーのヴォーカル。別れた女性をテーマとしながらも、人生の心の悩みを歌にしたという曲であるが、ありきたりな歌ものではなく、その詞をじっくり聴かせるヴォーカルが見事で、上の表題曲1.と並んで、ヴォーカリストとしての彼の成熟ぶりがよくわかる。 上記の3曲以外には、もっとアップ・テンポの曲も含まれているのだが、総じて、シンガーとしてのドン・ヘンリーの地力と円熟さが際立った一枚と言える。ただし、アルバム全体として見たら、楽曲の雰囲気にかなりばらつきがあり、統一されたトーンというのはどうも見えてこないように思う。なので、良くも悪くもヴァラエティに富んだ作品を詰め込んだという感じで、アルバムとしてのまとまりは必ずしもない。けれども、上に挙げた3曲のスロウ/バラード系ナンバーを聴くだけのためでも、買って聴く価値は十分にある。70年代にイーグルスというバンドの中で力を伸ばしてきたアメリカン・ロック・ヴォーカルを代表する“顔”が、80年代末になってこれだけ“聴かせられる”境地に達した。その結果として、一区切りの到達点とでも言えるドン・ヘンリーの歌声が堪能できる、そんな1枚だと思う。 [収録曲] 1. The End of the Innocence 2. How Bad Do You Want It? 3. I Will Not Go Quietly 4. The Last Worthless Evening 5. New York Minute 6. Shangri-La 7. Little Tin God 8. Gimme What You Got 9. If Dirt Were Dollars 10. The Heart of the Matter 1989年リリース。 ![]() 【Aポイント+メール便送料無料】ドン・ヘンリー Don Henley / End Of The Innocence (輸入盤CD) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年07月17日 08時59分37秒
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