テーマ:Jazz(1992)
カテゴリ:ジャズ
意外にこれが実力発揮の入門盤にもなり得るのかも マイルス・デイヴィス(Miles Davis)という人は、ある意味、不幸な人である。革新的であったがゆえに、常に厳しい批評の眼差しで見られ、何か斬新な、あるいはジャズ史にとって革命的なことをしないといけないかのような目で見られてしまう。その結果、この『ザ・ミュージング・オブ・マイルス(The Musing of Miles)』のようなアルバムにはあまり衆目が向かないという事態になってしまう。実際、本盤『ザ・ミュージング・オブ・マイルス』は、そういう観点からすれば、コルトレーン加入前(なおかつベーシストがポール・チェンバースに定まる前)の、“ちょっと一休み”的な、あるいは“過渡期の”アルバムなどと称されてしまう。その結果、間違っても“マイルスの代表作”などとはまず呼ばれない。 しかし、落ち着いて考えてみよう。目新しいことをやって高い評価を得るということはよくある。この場合の評価には二通りあって、その新しさゆえに一時的に評価を受ける場合と、その新しさに永続性があるゆえに長く評価され続ける場合である(念のため言っておくと、マイルスの場合は、基本、後者の評価である)。その一方で、当り前なことをやって見事と言われるのはきわめて珍しい。なぜかと言えば、フツーのことをやればフツーの評価となるのがありがちな帰結だからだ。それゆえ、フツーのことをやって“お見事”という評価を得る方が、考えようによってははるかに偉いし凄いことである。そういう条件の下ですら評価されるということは、偽りのないその道の真のプロにしかできないことだからというわけである。 ある意味、本盤は、編成もありがち(トランペットのワン・ホーン)。ジャケットも凡庸な白黒写真。演奏内容にも極端な新奇さや奇抜さはない。それどころか、アーマッド・ジャマルのピアノ演奏のフレージングをまねた(ぱくった!?)などともよく言われる。しかし、ワン・ホーンでトランペットをこれだけしっかり聴かせるのは実にお見事である。ついでながら付け加えておくと、全曲ワンホーンというアルバムは数多いマイルスの作品の中でも本盤のみとのことである。筆者の好みは、1.「ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン」、4.「ア・ギャル・イン・キャリコ」、6.「グリーン・ヘイズ」。軽妙で絶妙な間を活かしたマイルスのトランペットに知らず知らずのうちに聴き惚れてしまう。 案外、マイルスを初めて聴く人にはこういう1枚が選ばれてもいいのではないだろうか。ある意味では突飛で劇的な秀作を聴かされて、“10回、20回聴けばそのうちわかるさ”などと冷たく言い放たれるのではなく、こういうシンプルなアルバムでマイルスのトランペットの良さを実感できる方が、初めてマイルスを聴く人には意外と勧めやすいのではないかと思ったりもする。 [収録曲] 1. Will You Still Be Mine? 2. I See Your Face Before Me 3. I Didn't 4. A Gal In Calico 5. A Night In Tunisia 6. Green Haze [パーソネル・録音] Miles Davis (tp) Red Garland (p) Oscar Pettiford (b) Philly Joe Jones (ds) 1955年6月7日録音 ![]() 【2500円以上お買い上げで送料無料】【CD】[OTCD-4627]WORKIN’+THE MUSINGS OF MILES [ マイルス・デイヴィス ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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