カテゴリ:洋ロック・ポップス
サザン・ロックと産業ロックの微妙なバランス 38スペシャル(サーティエイト・スペシャル)は、38口径の拳銃の弾丸の名称に由来するバンド名。1975年にフロリダで結成され、1977年にレコード・デビューした。バンドの中心は、ドニー・ヴァン・ザント(Donnie Van Zant)、そしてドニーとは古くからバンド仲間であったドン・バーンズ(Don Barnes)という二人である。前者は悲劇の死を遂げたレーナード・スキナードのヴォーカリスト、ロニー・ヴァン・ザント(過去記事(1) ・(2) )の弟である。デビュー盤はこの兄の死の半年ほど前だったが、 ロニーが飛行機事故で亡くなってレーナード・スキナードが消滅した後、38スペシャルはレーナード・スキナードの後継バンド的として見られるようになった。 80年代に入り、バンドの方向性が変化し、泥臭いブギー・サウンドから聴きやすいハード・ポップへと変わった。これによってセールス面では大成功を収め、『サザン・ボーイズ(Wild-Eyed Southern Boys)』(81年)や『スペシャル・フォーシズ(Special Forces)』(82年)などのヒット盤を残した。本作『ストレングス・イン・ナンバーズ(Strength In Numbers)』は、こうしたセールス面での絶頂期の最後にあたる作品で、1986年にリリースされた。 上のような方向転換によるヒットの経緯から、このバンドは産業ロックの典型として扱われることが多い。確かに、一言でまとめてしまえば、さっぱりしたパワー・ポップ・ロックもしくはハード・ポップ・ロックである。けれども、ツイン・ギター、ツイン・ドラムという南部ロック(サザン・ロック)の特徴をうまくそのポップ性の中に取り込んだからこそ成功したのではないかとも思う。言い換えれば、成功の要因は、南部ロックを捨てたからではなく、南部ロックらしさをうまく残し(ひきずり?)ながら、大筋としては大衆化していったことにあったのだろう。 本盤でもその方向性が貫かれていて、全編を通じて泥臭さが程良く中和されさっぱりした聴きやすい仕上がりとなっている。1.、2.、5.、7.、9.、10.などが個人的お勧めだが、どの曲を取ってもまず第一に聴きやすい。とは言っても、ただ単に耳触りがいいだけでなく、少し注意して聴けば、ツイン・ギターの特性をうまく生かしたり、やや泥臭いフレーズを巧みに混ぜ込んだりという特徴がさりげなく出されている。上で述べたこのバンドの成功の要因がところどころで顔を出すのが面白い。 ちなみに、この盤を取り上げた理由は、内容面もさることながら、筆者の思い入れによる部分も大きい。本盤は最初に筆者がレコードを手にした38スペシャルのアルバムで、そのジャケットは一種の仕掛けジャケットだった。表紙は黒字に“38”の数字を模した色とりどりの半円形が並んでいて、その半円形部分がくり抜かれた形状になっていた。大した仕掛けでも何でもないが、いま聴いているCDでは単なるペラペラの印刷を見るにつけどこか物足りない郷愁を感じるので、ついこの盤を最初に取り上げてしまった次第である。 [収録曲] 1. Somebody Like You 2. Like No Other Night 3. Last Time 4. Once in a Lifetime 5. Just a Little Love 6. Has There Ever Been a Good Goodbye 7. One in a Million 8. Heart's on Fire 9. Against the Night 10. Never Give an Inch 1986年リリース。 ![]() 【メール便送料無料】38スペシャル38 Special / Strength In Numbers (輸入盤CD) (38スペシャル) 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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