テーマ:洋楽(3284)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
深みを増す“80年代流行りバンド”のその後 ちょうど1年前、3月11日の朝、何事もない普通の朝に、いつものようにブログの記事をアップした。ノルウェー出身のバンド、a-haのアルバム『遥かなる空と大地(原題:Minor earth | major sky)』について書いたのだが、この日の午後に起きた出来事によって、この記事は筆者にとって忘れられないものとなってしまった。東日本大震災の後、a-haのその続きを書かなければと心のどこかで思っていたがなかなかできなかった。震災から1年というこの区切りで、筆者としてもそろそろ次のステップに進みたいと思えるようになってきた。そこで、同盤の次作に当たる『ライフラインズ(Lifelines)』を取り上げたい。 a-haの“叙情路線”とでも呼びうる趣向については、「ハンティング・ハイ・アンド・ロウ」の項でも述べたように、実はこれが当初から彼らのやりたかった路線ではなかったかと思う。1990年代、7年間ほどバンドが解散状態となり、活動が止まるが、ノーベル平和賞の授賞式での演奏をきっかけに再結成された結果としての2000年のアルバム『遥かなる空と大地』は、やはり壮大で叙情性を湛えた作品だった。 本作『ライフラインズ』は、2002年に発表されたもので、バンドの第7作になる。前作『遥かなる空と大地』の延長線上にある作品と言え、前作同様、もう完全に独自の世界を作り上げており、壮大なイメージの曲や叙情的なメッセージ性の強い曲が目立つ。その点では、a-haの成熟度をよく示しているものとも言えるように思う。アメリカやイギリスではさほど注目を集めなかったものの、ノルウェーやドイツなど欧州では4カ国でチャートの1位という結果を残した。TOP10という基準で言うと、9カ国でこれに当てはまる作品となった。 表題曲の1.「ライフラインズ」は、救難索、つまりは“命綱”のことで、人生あるいは命の大切さをテーマとしている。哀愁に満ちた叙情ムードの中での展開は、この曲がある意味、全体のトーンを象徴しているようにすら感じられる。a-haの特徴としてよく言われるのは、ヴォーカルのモートン・ハルケットの“ファルセット・ヴォイス”であるが、別にこれが単独で“売り”なのではなく、デビュー当初からa-haの志向として存在した叙情的な曲調の中で生きるのだということがよくわかる。モートンの声は、時にけだるく、また、時に真摯な感じに聞こえてくる。モートン自身の言では、“その時の気持ちを素直に伝えることしかできない”、“曲に自然に反応”しているとのこと。 1.もいい曲だが、他にお勧めとしては、4.「ゼアズ・リーズン・フォー・イット」、9.「ア・リトル・ビット」、13.「ホワイト・キャンバス」あたりが非常に彼ららしい曲。その一方で、前作に比べて妥協せず細かなこだわりを見せたという。多彩なプロデューサー陣を起用して、曲によってはいくつものヴァージョンを用意して、最終的なものを決めたとか。個人的にはもっと大きな枠組みの彼ららしさの方が好みなのだが、本作の細かな音の工夫がやたら耳につくのは、この辺のこだわりの成果なのだろう。 ちなみに、この後、彼らはもう2枚のアルバム(2005年の『アナログ』、2009年の『フット・オブ・ザ・マウンテン』)を発表した後、2010年のツアーをもって解散した。 [収録曲] 1. Lifelines 2. You Wanted More 3. Forever Not Yours 4. There's a Reason for It 5. Time & Again 6. Did Anyone Approach You? 7. Afternoon High 8. Oranges on Appletrees 9. A Little Bit 10. Less Than Pure 11. Turn the Lights Down 12. Cannot Hide 13. White Canvas 14. Dragonfly 15. Solace ~以下、日本盤のボーナス・トラック~ 16. Differences ?original demo- 17. Hunting High And Low ?live in Oslo- 18. Manhattan Skyline ?live in Oslo- 2002年リリース。 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012年03月12日 07時15分32秒
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