テーマ:アメリカン・ロック(104)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
目立たぬ活動ながら、成熟したキャリアの頂点作
ニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)は、70年代前半にグリン(Grin,関連過去記事(1)・(2))というギター・ロック・バンドでひそかなファン層を獲得し、その後はソロのキャリアをつづけた後、80年代半ば以降、ブルース・スプリングスティーンのバックバンド(E・ストリート・バンド)や、リンゴ・スター率いるオール・スター・バンド(リンゴ・スター・アンド・ヒズ・オール・スター・バンド)で活躍した。 スプリングスティーンのバンド活動がいったん止まった結果、1990年代に入り、ニルスはしばらくストップしていたソロ活動を復活させた。その第1弾は『明日への旅路(Silver Lining)』という、ギタリストとしての原点回帰を意識したようなサウンドの作品だったが、続く本盤『クルッキド・ライン(Crooked Line)』は、ギタリストとしてのキャリアを推し進めて重厚なサウンドやポップな音をバランスよく組み合わせながら、ヴォーカリストとしての魅力もさらに進化させることとなった。既に60歳を超えた現在まで、70年代の“ギター小僧”としてのイメージが付きまとうことの多い人であるが、この時期はもう一つの彼のキャリアの頂点だとすら思う。 本盤のハイライトを私的な好みの曲で見てみたい。まず、軽快で厚みのあるギター・サウンドを生かした1.「ア・チャイルド・クッド・テル」が本盤のイメージをよく表している。このトーンをもう少し柔らかにした2.「ブルー・スカイズ」、逆にもう少しハードにした10.「ジャスト・ア・リトル」がよい。ちなみに、後者の10.は、収録曲のうち唯一のカバー(他はすべて自作曲)で、ボー・ブラメルズ(Beau Brummels)の1965年のヒット曲。 その一方で、前作から芽生え始めたヴォーカリストとしての成熟を強く印象づける曲も多く含まれている。失礼ながら、かつては“ヘタウマ”系だったのが、本作の前後からは見事に“聴かせるヴォーカル”へと目に見えて変化してきている。その典型はアコギにのせて軽快に歌う4.「ユー」で、バックのヴォーカルとハーモニカには旧知の仲であるニール・ヤングの参加を得ている(この曲以外では8.のコーラス、11.のギターでもニールがゲスト参加している)。他には5.「ショット・アット・ユー」や9.「ニュー・カインド・オブ・フリーダム」などがギターを控えめにし、どちらかというとヴォーカル志向の曲に仕上がっている。 そんなヴォーカリストしての魅力が最大限に生かされているのは上述の4.で決まりだが、得意のギター・プレイをちゃんと生かしながらという点を考えれば、3.「ミザリー」が本盤の聴きどころの一つと言えるだろう。イントロのアコーデオン(これもニルス自身の演奏)から始まり、歌をしっかり聴かせつつ、サポートやバンドのメンバーとしてB・スプリングスティーンやR・スターの楽曲の合間に聴けるあのギター演奏も満載。その意味ではこの3.がアルバムを代表する1曲と言えるかもしれない。 ストーンズに声がかかり(実際には加入せず)、B・スプリングスティーンやR・スターのギタリストを務め、ニール・ヤングとの親交も古くからあり、経歴は素晴らしいのだが、いまいちソロとしては有名になり損ねたニルス・ロフグレン。でもこのまま埋もれさせておくにはもったいないアルバムが他にも多くある。 [収録曲] 1. A Child Could Tell 2. Blue Skies 3. Misery 4. You 5. Shot At You 6. Crooked Line 7. Walk On Me 8. Someday 9. New Kind Of Freedom 10. Just A Little 11. Drunken Driver 12. I´ll Fight For You 1992年リリース。 ![]() 【中古】 Crooked Line / Nils Lofgren / Nils Lofgren / Rykodisc [CD]【メール便送料無料】 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019年06月22日 05時39分35秒
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