テーマ:Jazz(1989)
カテゴリ:ジャズ
暑い日に涼しい1枚を スタン・ゲッツ(Stan Getz)は白人テナーを代表するジャズ奏者(1991年没)。クール・ジャズの旗手として活躍する一方、欧州生活を経た後の1962年にブラジル音楽を取り入れたアルバム『ジャズ・サンバ』(チャーリー・バードとの録音)で成功を収める。この成功がなければ、翌63年の本盤『ゲッツ/ジルベルト(Getz/Gilberto)』も生まれなかったかもしれない。 ブラジル側からは、ジョアン・ジルベルト(ヴォーカル、ギター)、アストラッド・ジルベルト(ヴォーカル、当時はジョアンの妻だったが後に離婚)、アントニオ・カルロス・ジョビン(ピアノ)が参加。特にアストラッドは、本盤でのヴォーカルが歌手として初めての吹き込みだった。 ボサ・ノヴァは1950年代末にブラジルで誕生した、いわば“ローカルな”音楽ジャンルだった。それが60年代に入ってアメリカでブレークし、より洗練されたものへと姿を変えていく。実際、本盤のレコーディング中にも、ボサ・ノヴァの解釈が違うとジョアンが怒り出す場面があったらしいし、本盤でスタン・ゲッツが演じているのは、本来のボサ・ノヴァではないとの批判もある。けれども、このアルバムの成功が米国内で、さらにはブラジル以外の諸外国(日本も含め)で、ボサ・ノヴァを広げていく大きなきっかけとなったのは疑いようもない事実として残っている。本盤の冒頭に収録されている1.「イパネマの娘」は、ビートルズ曲を除けば世間でいちばんカバーが多い曲とすら言われるし、アルバム自体も全米で2位というチャート上昇を記録、さらにはアルバムがグラミー賞(最優秀アルバム賞、最優秀エンジニア賞)も受賞した上、4.「デサフィナード」が最優秀インストゥルメンタル・ジャズ・パフォーマンス賞を受賞、上述の1.「イパネマの娘」が最優秀レコード賞を受賞している。 本盤の成功の要因は“もろボサ・ノヴァ”(ボサ・ノヴァそのもの)ではなく“適度にボサ・ノヴァ”だった点にあるのかもしれない。ゲッツのサックスが“本物のボサ・ノヴァ”でない部分が仮にあったとすればその点も、さらには、アストラッドの歌が積極的に英語詞で歌われているのも、広く聴かれたという一点に関しては大成功だったのではないかと思う。“本盤=ボサ・ノヴァそのもの”という安直な解釈への批判はよくわかるし、その通りだと思う部分もあるが、“ボサ・ノヴァらしさ”という意味では、この盤は“らしさ”を存分に発揮している。 そのようなわけで、表題の“暑い夏”だけれども、ここのところの耐え難い暑さのような日には、白ワイン片手に本盤を聴きながら、気分だけでも涼しげに過ごすというのもなかなかいいのではないだろうか。そんな涼しさをいっそう盛り立ててくれる推奨曲は、1.「イパネマの娘」を筆頭に、筆者のお薦めとしては、4.「デサフィナード」、5.「コルコヴァード」、6.「ソ・ダンソ・サンバ」。さらに、ゲッツのテナーは時としてブラジル・サイドと噛み合っていないように聞こえる場面もあるのも確かだが、締めくくり曲の8.「ヴィヴォ・ソニャンド」のような溶け込み具合は、本盤の重要な楽しみどころのように思う。 [収録曲] 1. The Girl from Ipanema 2. Doralice 3. Para Machucar Meu Coração 4. Desafinado 5. Corcovado 6. Só Danço Samba 7. O Grande Amor 8. Vivo Sonhando [パーソネル、録音] Stan Getz (ts) Joan Gilberto (g, vo) Antonio Carlos Jobim (p) Tommy Williams (b) Milton Banana (perc) Astrud Gilberto (vo) 1963年3月18日・19日録音。 ![]() 【送料無料】ゲッツ/ジルベルト [ スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年07月11日 06時29分38秒
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