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テーマ:Jazz(2003)
カテゴリ:ジャズ
西海岸ジャズの名作~“踊り子”と“お風呂”(後編) さて、前編に続き、西海岸ジャズを代表する一人であるマーティ・ペイチ(Marty Paich)の代表作のもう一枚について見ていきたい。前回の“踊り子”こと『ブロードウェイ・ビット』の姉妹編とされるのが、本作『ア・ゲット・ア・ブート・アウト・オブ・ユー(I Get A Boot Out Of You)』という作品である。本アルバムは、ジャケット写真に入浴中の女性の写真が使われていることから、通称“お風呂”と呼ばれる。 『ブロードウェイ~』と本作は、ワーナー・ブラザーズのレーベルから2枚だけ出された彼のリーダー作であり、ジャケットのできもよく、かつては希少盤として知られた2作品である。多くのメンバーが共通していて、録音時期は1ヶ月半ほどの間隔しか空いておらず、姉妹盤としてセットで語られるのはそのためである(とはいえ、近い時期の同じような編成としては、マーティ・ペイチ名義ではない『アート・ペッパー・プラス・イレヴン』などの盤も存在するのだけれど)。 さて、前編で見た『ブロードウェイ~』がブロードウェイ・ミュージカルのスタンダード選であったのに対し、本盤『アイ・ゲット・ア・ブート~』の方は、ジャズのスタンダード曲を中心とする選曲(うち4曲はデューク・エリントンのナンバー)でまとめられている。大きな編成の指揮者ぶりが冴えているのは、先の作品同様だけれど、こちらの盤の方が、各ソロなどでの個人の存在感がやや大きい印象で、全体のアンサンブルの中で短い個人プレイが随所に光るといった風の曲が多い。 聴きどころと個人的に思うものをいくつか挙げておこう。冒頭の1.「スウィングしなけりゃ意味ないね」は、上で述べたような短いソロを含む全体のアレンジが際立ったナンバー。一人がじっくり聴かせることもない代わりに、立ち代わり入れ替わりの愉しさがある。3.「ラヴ・フォー・セール」は全体の勢いとアレンジの勝利。4.「モーニン」は本盤のコンセプトからすると難しかったのでは二かと想像するけれども、アルバム全体の雰囲気に馴染んでいるのは、結局のところ、編曲者(そして全体の統率者)としてのマーティ・ペイチの力量ではないだろうか。メドレーになっている6.「ホワット・アイ・アム・ヒア・フォー/コットンテイル」の軽快なアレンジも心地よい。大人数だけれども仰々しくない、かといって、個別演奏者のソロをじっくり聴かせる仕立てでもない。この微妙なバランスが、今回の2枚の盤のキモということだろうか。 ところで、今回の2枚はジャケットのデザイン(写真)がコレクターに重宝されるかつての“希少盤”でもあった。美女系ジャケットに魅力を覚えるか否かは、経験上、意見の分かれるところ(ただしジャズ愛好者には賛成派が多い)と思うのだけれど、これをお読みの皆さんの意見はいかがだろうか。ちなみに筆者はと言われれば…、悪くはないけど、血眼になるほどでもない、という微妙な立場なのだけれど。 [収録曲] 1. It Don't Mean A Thing 2. No More 3. Love For Sale 4. Moanin' 5. Violets For Your Furs 6. What Am I Here For / Cotton Tail 7. Warm Valley 8. Things Ain't What They Used To Be [パーソネル、録音] Marty Paich (p, arr), Jack Sheldon (tp), Al Porcino (tp), Conte Candoli (tp), Bob Enevoldsen (v-tb), George Roberts (b-tb), Vince DeRosa (fhr), Art Pepper (as), Bill Perkins (ts), Bill Hood (bs), Vic Feldman (vib), Russ Freeman (p), Joe Mondragon (b), Mel Lewis (ds) 1959年6月30日、7月2日、7月7日録音。 [枚数限定][限定盤]アイ・ゲット・ア・ブート・アウト・オブ・ユー/マーティ・ペイチ[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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