2016/12/06(火)04:38
エア・サプライ 『バニシング・レース(The Vanishing Race)』
ソフトロック/AORバンドの地力
エア・サプライ(Air Supply)は1970年代後半に形成され、1980年代に「ロスト・イン・ラブ」をはじめ多くのヒットを残したオーストラリアはメルボルン出身のバンド。夏や恋愛をイメージさせる爽やかでセンチメンタルなサウンドが特徴のバンドだったが、1980年代後半にいったん活動を停止し、1990年代初頭に再結成されている。その再結成を担ったのが、ギターのグラハム・ラッセル(Graham Russell)とヴォーカルのラッセル・ヒッチコック(Russell Hitchcock)であった。
そんな1990年代の新生エア・サプライの作品で妙に印象に残っている1枚がこの『バニシングレース(ザ・ヴァニシング・レース)』。再結成から2枚目、通算では12枚目に数えられるアルバムで、1993年にリリースされた。米国ではさほど知られぬままヒットしなかったものの、アジアなどではそれなりに売れたと言う。まあ、アルバム・ジャケットの写真からもわかるように、表題が『消えゆく民族』なわけだから、歴史上、インディアン迫害をやって来たアメリカ人に受けるわけないのは自明だったろうか…。
ともあれ、本盤の内容は、ヒット連発の80年代とはイメージが違い、売れ筋よりは地味でも歌い込んでしっかりと作り込んだという印象である。これこそがエア・サプライのサウンドであるとは決して言えないだろうけれど、だからといって見過ごしてしまうのも惜しいアルバムだと思う。おすすめのナンバーをいくつか挙げておきたい。1.「イッツ・ネヴァー・トゥー・レイト」は落ち着いたメロディとハーモニーが本盤の作風をよく反映している。さらに内省的トーンが強いのが表題曲の6.「ザ・ヴァニシング・レース」。さらに、本盤で出色もののバラードと言えば、5.「グッドバイ」が外せない。繰り返しになるけれど、“受狙い的バラード”から“真剣に歌い込むバラード”に向かっているというのが実に好印象なアルバムであると思う。
[収録アルバム]
1. It's Never Too Late
2. Faith
3. Kiss Me Like You Mean It
4. Evidence of Love
5. Goodbye
6. The Vanishing Race
7. Don't Tell Me
8. Too Sentimental
9. I Remember Love
10. I'll Be Thinking of You
1993年リリース。
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