テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
最晩年のスタン・ゲッツ、渾身の力作(後編)
(前編からの続き) さて、スタン・ゲッツの死の3か月前という本盤の録音内容を少しばかり見ていきたい。場所はコペンハーゲンのジャズクラブでの実況録音、演奏者はスタン・ゲッツ(テナー)とケニー・バロン(ピアノ)のデュオである。 冒頭の1.「イースト・オブ・ザ・サン(アンド・ウェスト・オブ・ザ・ムーン)」の演奏からして、やはりこのトーンはスタン・ゲッツといった安心感があるものの、演奏は次第に激しいものへと変わっていく。よく“死を覚悟したスタン・ゲッツの魂の演奏”などと評されたりするが、情感を込めて激しい音を混ぜながら演奏している緊張感は、若い頃のテンポよい緊張感とは少し別種のものと言ってもいいように思う。 それからもう一点、本盤に関して作品全体として顕著なのは、音の厚みだという気がする。上記の通り、ピアノにテナー・サックスというデュオ演奏なわけだけれど、ケニー・バロンのピアノは2人きりの演奏とは思えない厚みを出している。その上にのるスタン・ゲッツのテナーも、デュオを意識しての音を奏でている。 2枚組全14曲中で、1枚目のお気に入りは、既に上で触れた1.のほか、2.「ナイト・アンド・デイ」、名演に数えてよいであろう6.「アイ・リメンバー・クリフォード(クリフォードの想い出)」。2枚目は、何と言っても聴き逃がせない1.「ファースト・ソング」から始まる。それから5.「朝日のようにさわやかに」、6.「ハッシャバイ」を経て、最後の7.「ソウル・アイズ」の名演で締めくくられる。上にも書いた通り、デュオ演奏であるにもかかわらず、2時間弱にわたって聴き手を飽きさせることがない。 前編・後編の2回にわたる長文になってしまったけれど、結論として思うところは、純粋に音楽を聴くという観点からすると、人生ストーリーはフレーバーでよい。まず第一に演奏内容がどうなのか、ということがやはり大事なのだろう。それがよくて初めて背後にあるストーリーは意味を持ちうるわけで、決して背後のストーリーが音楽そのものを食ってしまうことがあってはならない。この作品を初めて聴いた時にはそんなことまで考えたりすることはできなかった。けれども、今となっては、スタン・ゲッツの遺作を聴きながら、そんな風に音楽の聴き方を考えるようになってしまっていたりする。 [収録曲] (Disc 1) 1. East of the Sun (and West of the Moon) 2. Night and Day 3. I'm O. K. 4. Like Someone in Love 5. Stablemates 6. I Remember Clifford 7. Gone with the Wind (Disc 2) 1. First Song (for Ruth) 2. (There Is) No Greater Love 3. The Surrey with the Fringe on Top 4. People Time 5. Softly, as in a Morning Sunrise 6. Hush-a-Bye 7. Soul Eyes [パーソネル、録音] Stan Getz (ts), Kenny Barron (p) 1991年3月3日~6日、コペンハーゲンでの実況録音。 【輸入盤】People Time [ Stan Getz / Kenny Barron ] 下記ランキングに参加しています。お時間のある方、応援くださる方 は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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