音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2020/03/05(木)13:36

タニア・リベルター 『イムノ・アル・アモール(Himno al amor)』

ラテン(ロック&ポップス)(247)

オーケストラをバックにした揺らぎと癒しの声  タニア・リベルター(Tania Libertad)は1952年ペルー北部生まれで、1980年代からメキシコを拠点に活動している女性シンガー。ボレロやトローバなどの伝統曲を得意とし、60歳代となった現在では、中南米を代表する大御所ヴォーカリストと見なされるようになっている。  そんな彼女が、1990年代後半に、メキシコ市交響楽団(Filarmónica Ciudad de México)の演奏をバックに歌い上げるというコンセプトで吹き込まれたのが、本盤『イムノ・アル・アモール(Himno al amor)』(スペイン語で“愛の讃歌”の意味)であった。  交響楽団を指揮したのは、有名指揮者のフェルナンド・ロサーノ(Fernando Lozano)であった。この人は“音楽に境界はない”という短文を本アルバムに寄せていて、“時間や空間が、ましてはその起源やスタイルが音楽を分断することはない”としてジャンルや流行にとらわれないコラボだったことを臭わせている。さらに、“悪い音楽”というのはジャンルを問わず存在し、いい音楽に境界はないと述べている(ちなみに、ここでいう「境界」という語は、しばしば「国境」の意味でも使われる)。  実際のところ、本盤は、オーケストラは別に録音され、タニアのヴォーカルとミキシングされているようだが、有名歌手がただ単にオケをバックに歌った代物というわけではない。できあがった作品を少し聴けばすぐにわかるように、彼女のヴォーカルと交響楽団との相性は抜群なのである。  推奨曲を筆者の個人的好みに基づいて挙げておきたい。冒頭の1.「イムノ・アル・アモール(愛の讃歌)」は、アルバムの表題曲にもなっていて、本盤の雰囲気がよく表れている歌唱。フランスのシャンソン歌手エディット・ピアフ(Édith Piaf)の1950年のナンバーだが、本盤所収の他の曲と同じくスペイン語ヴァージョンで歌われている(余談ながら、この曲は、日本では越路吹雪のカバーでも知られる)。2.「マニャーナ・デ・カルナバル(カーニバルの朝)」は、「黒いオルフェ」としても知られ、ルイス・ボンファによる同名映画の主題曲で、ジャズ界でも定番曲として定着している曲。4.「ラ・ボラ・ネグラ」は、メキシコ人シンガー、ホセ・アルフレド・ヒメネス(José Alfredo Jiménez)のナンバーで、私的には本盤の一押しの曲の一つ。6.「プラセール・デ・アモール(愛の喜び)」は原曲のフランス語のほかイタリア語で歌われることも多いオペラ曲だが、ここではやはりスペイン語で歌われている(余談ながら、E・プレスリーの「好きにならずにいられない」のもとになったのがこの曲だった)。7.「ロンヒーナ」はベネズエラ人のサルサ・シンガー、オスカル・デ・レオン(Óscar d’León)の曲で、本盤中の特にお気に入りの一つ。あと、10.「ラ・ギンダ」は、特別ゲストとして参加の映画音楽家ゴンサロ・ロメウ(Gonzalo Romeu)のピアノが大幅にフィーチャーされている。  結局のところ、上記からもわかるように、多様な楽曲を交響楽のアレンジにのせてスペイン語で聴かせるという仕上がりになっている。そして、タニアの揺らぎのある癒しのヴォーカルの本領がこうした仕掛けの上で存分に発揮されている盤と言えるだろう。デンデー(Dendé)というマイナー・レーベルの盤で入手は容易ではなさそうだけれど、個人的には本当に聴けてよかったと思っている一枚だったりする。 [収録曲] 1. Himno al amor 2. Mañana de carnaval 3. Carusso 4. Siboney 5. La bola negra 6. Placer de amor 7. Longina 8. Los pájaros perdidos 9. La luna y mi sombra 10. La guinda 11. Nana 12. Asturiana 13. Bachinas Brasileiras #5 1997年リリース。      以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、    クリックで応援よろしくお願いします。        ↓      ↓      ↓             

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る