マリアーノ・ベッロペーデ 『ディ・アルトリ・ズグアルディ(Di altri sguardi)』
技術と洗練度の高いピアノ+アルバムとしての完成度の高さ マリアーノ・ベッロペーデ(Mariano Bellopede)は、1983年、イタリアのナポリ出身のピアノ奏者、作曲家である。音楽ジャンルで言うとジャズに分類されるということになるのだけれど、地中海や南米の音楽に影響を受けた作品を世に送り出している。目下のところ、筆者が唯一聴いている彼の作品が、2015年発表の『ディ・アルトリ・ズグアルディ(Di altri sguardi)』という盤である。 この盤には副題がついていて、“Racconti dal Mediterraneo”とある。上記の表題と合わせると、イタリア語で“別の見方:地中海のストーリー”といったような意味合いである。つまりは、既存の概念にとらわれず、なおかつ地中海をキーワードとして紡いだ音楽、といったところだろうか。 個人的な好みからいくつか聴きどころになりそうな演奏をピックアップしておきたい。まず、1.「ジャスミンズ・エレジー(ジャスミンの哀歌)」は、雄大な雰囲気を保ちながら、次第にピアノを中心とした演奏に収斂していくのが、本盤の特徴をよく表しているように思う。地中海らしさを感じさせるという点では、4.「ラ・メール・ヴェルス・リタリエ(イタリアに向かう海)」に注目したい。 この“海”をテーマにした演奏は、激しさも静けさも併せ持つ。続く5.「フオッコ・ア・マーレ(海の火)」も海をテーマにした曲で、筆者的には特にお気に入り。ジャズ的な枠組みに拘らず、大胆なコーラスを含む勇壮な演奏は、本盤の中でいちばんの効きどころという風に思う。同じく意表をついたナンバーとして、9.「ウナ・カンツォーネ・ビアンカ(白い歌)」にも触れておきたい。アレッシオ・アレーナなる人物がヴォーカルを務めている曲である。曲ごとに言及していると見落としてしまいがちなのだけれど、本盤は曲の並びもよく考えられているようで、通して聴いて飽きない工夫があるという風に思う。この曲のような“歌もの”も流れの中に取り込んでしまうあたりは、アルバム全体としての作りのよさを反映しているようにも思う。 何だか誉め言葉のようなコメントばかり並べてしまったけれど、実際のところ、飽きずに聴き続けられる(それどころか、聴くたびに惹き込まれてしまう)50分間の演奏と言えるように思う。何か確信があってこのアルバムを手にしたわけではなかったのだけれど、筆者の中では、今となっては、本当に買ってよかったと思えるアルバムになっている。[収録曲]1. Jasmine’s Elegy 2. Paquito 3. Till The Rain 4. La Mer Vers L’Italie 5. Fuoco A Mare 6. Dormi Ancora Un Po’ 7. Sabir 8. Springtime Revolution 9. Una Canzone Bianca 10. Song for My Sister’s Son[パーソネル、録音]Mariano Bellopede (p), Alessandro Anzalone (b), Davide Esposito (ds), Gigi Patierno (sax, fl), Carmine Marigliano (fl, 2.と5.), Ciro Cascino (hammond, 7.), Gino Evangelista (oud), Federico Luongo (g, 4.), Gabriele Borrelli (perc, 5.), Michele Maione (perc, 7.), Alessio Arena (vo, 9.), Francesca Colapietro (vo, 5.)Ondanueve String Quartet (9と10): Paolo Sasso (vln), Andrea Esposito (vln), Gigi Tufano (viola), Marco Pescosolido (cello)Chorus: Viviana de Angelis, Raffaela Carotenuto, Daniela Fiorentino, Martina Mollo, Caterina Bianco, Mariano Bellopede, Carmine Marigliano, Simone Spirito, Davide Esposito, Lele D’Alessio 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援くださると嬉しいです! ↓ ↓