2005/03/26(土)00:50
玄冬記 - 6
お葬式でもっとも悲しさをあらわにしていたのは父の母だった。祖母は「私が代わりに死んでやるのに、なんでおまえが先にいくんだ。」と何度も言い、泣き崩れていた。心臓の悪い祖母をみんなが心配していた。
私は親戚の母を見る目を気にしていた。露骨に言う人はいなかったが、きっと、父の異変に気づけなかった母や私に対する憤りがあったと思う。「最近変わった事はなかったの?」という言葉は、その時の私たちにとってはナイフに等しかった。
しかし、母も私も、普段の父の様子からはこうなることをまったく想像できなかった。お酒なんかが入るととりわけにぎやかな父が、最近、少し静かだったのが気になってはいた。また、父の机の引き出しをあけると、そこには沢山の薬が入っていた。いったいそれらが何の薬だったのかは知らないが、、、
そう、
知らないというのがおかしいのだ。
そんな小さな事から、もっと敏感に予兆を感じるべきだったと思う。出来ることはあったかもしれない。