カテゴリ:現代妖怪図鑑シリーズ
『現代化け猫(げんだいばけねこ)』 あらずじ あなたは猫を飼っていますか?飼っているのは本当にあなたですか? 『現代化け猫(げんだいばけねこ)』バックナンバーのリンク →その22 →その23 →その24 →その25 →その26 →その27 →その28 →その29 →その30 →その31 →その32 2010年頃、暑い夏。 「西脇 守」という男性がいた。年齢29歳。 守は毎日毎日部屋に閉じこもってインターネットなどに明け暮れていた。夏場などは特に家の中から一歩も外に出ない。そして毎日ダラダラと過ごしていた。守にとってはそれは極楽の日々だった。彼はその生活に満足していた。 ”守”は一匹のオス猫を飼っていた。その猫に守が付けた名前はなんと「なまけ」。 最近その”なまけ”は守をにらみつけるようになっていた。 猫は「いいかげんな名前つけやがって!」と思っているのかも知れない。 ”なまけ”は守にはまったくなつかない。 ”なまけ”は普段から特になまけている風でもなかった。その”なまけ”という名前は普段なまけている守が自分自身をごまかす為に付けたのだ。 だが、その猫の”なまけ”は頭の良い猫だった。守以上に頭が良いかもしれない。 守が一応その猫に毎日エサを与えていた。だが、守はの生活は猫とたいして変わらない。つまりその猫を本当に飼っているのは守ではないかもしれない。 守は「インターネットで金儲けが出来る」と信じて自分のブログサイトを作り、そこにお金が入ってくるようなアフィリエイト広告を出した。だがそのブログはまったく面白みがなく、アクセス数がほとんどない。それにアクセス数は増えていかなかった。しかし守は「ある日突然自分のサイトにアクセスが山ほど来て、サイトの広告だけで食べていける」と信じていた。だが、記事の内容なんてみじんもない。守はマジメに更新する気などなかったのである。 守はもはや生きる目標など何も持たなくなっていた。そんなものは長い引きこもり生活の中でいつの間にかどこかに置き忘れていたのだ。 彼のしていることと言えば 日課当面の目標と言えば、唯一他人にイヤミを言うことだけ。だが彼のサイトは誰も見ていない。そのサイトにイヤミを書き続けてもムダであるが、彼にはもうそんなことはわからなくなっていた。 守という人間はそんな人間だった。いわば「ネット廃人」だったのだ。 そんな守は家で猫と暮らしていた。他には誰もいない。家族は実家の方に住んでいた。 だが猫は最近守のことをうとんでいて、守が近づいてくると来るとすぐに居場所を変えた。 そんなある日のこと、まったく突然、守の家に一人の女性が訪ねて来た。年齢21歳。大学生。非常に美しい女性であった。 守がドアを開けるとその女性が玄関先に立っていた。女性は「おひさしぶりです。」と守に言ったが、守にはその女性が誰だかわからない。 美しい女性だったので守はその女性を家に上げた。そしてお茶を煎れて会話をした。 他愛もない会話しかしなかったが、守はすごく楽しい時間を過ごした。 こんなに楽しい時間は守に取ってひさしぶりだった。会話は彼女がリードしてくれたおかげで、守は聞き役に徹すれば良かった。 その後、その女性はまた守の家にやって来た。やって来たのは”昼間”だった。 そして女性は奇妙な事を言った。守と約束があったという。その約束とは、 女性「”昼間は来ちゃダメだ”っていう……。」 だが守はそんな約束をした覚えはなかった。 守は彼女の事が好きになった。 だがその「恋」はしょせん「テレビの中のアイドルに向けるような」子供っぽい恋心だった。 すると、 女性「今度は外で会いませんか?」 と彼女に言われた。 守「(やったあーーーーーーーーーーーー!!! 俺はモテるんだ!!)」 守は内心そう思った。 そして彼女と外で会い、映画に行ったりもした。守は「彼女と恋人どうしになりたい」と思うようになっていた。 守と彼女のメールのやり取りが続いた。 そんな中、ある日突然彼女の方から「あなたの”恋人”になります」というメールがやって来た。 もちろん、守は喜んだ。そして自分のブログのURLを彼女に教えた。するとそれを読んだ彼女から、 女性「”恋人”の話は無しにしてください。 私、あなたを勘違いしてたみたい。恋人にはなれないわ!」 と言われた。 それからというもの、守は居間で携帯電話を見つめる毎日が続いた。 だがいっこうに携帯電話は鳴らない。彼女とは音信不通状態である。 彼女は守の家にやって来なくなった。 そんな中、猫の”なまけ”に笑われたと思った守は足で猫の腹を蹴った。 なまけ「ニャアーーーーーーーーーーーーー!!!」 それから数日後、 守の元に突然、彼女からメールが来た。「また会ってくれる?」と言う。 守は驚いた。そして喜んだ。 守「(いやっほぉーーーーーーーーーーーーーーーーー!! やっぱり俺はモテるんだ!)」 猫の”なまけ”はそんな守の様子を見て「フン!」という感じで顔を背けた。 そしてついに以前のように再び彼女が守の家を訪れた。 守は彼女が来てくれた事をとても喜んだ。 だがいざ彼女と会話をしてみると………、 彼女の表情がだんだん険しくなっていく。守が話をすると彼女が眉間にシワを寄せるのだ。 女性「もういいわ!あなたってこうして話をしているとまるで”別人”じゃない! 帰るわ!! 私たち、もう連絡は取り合わない事にしましょう!」 守が止めてもムダだった。彼女は席を立ち、帰って行った。 悲しむ守。そして夜になって眠りについた時、守は夢を見た。 *************************************************************************** ”彼女”がまた守の自宅にやって来た。 彼女の表情は一番最初にここに来た時のようにやわらかく、なごやか。 そして守と楽しく話をする。 もちろん話相手は”守”のはずなのだが……、 だが、なぜかよく見ると、それは「床の視点」から見ていた場面だった。 守は「自分と彼女が話している場面」を少し離れた床の位置から見ていたのだ。 *************************************************************************** 夢から覚めた守。 守は「なんだ?今の夢は?」と思っていた。 そして彼女にメールしてみた。だがやはり返事は無い。 そこでついに決心して彼女の携帯に電話する。だが彼女は電話に出なかった。 守は泣いた。 【現代妖怪図鑑シリーズ】 その33に続きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011/09/07 03:10:18 AM
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