あるが侭に・・・

深夜、寝苦しくて何度か起きた。暑いのだ。あまりの暑さにリビングに行き、
一度ソファーに身を沈めて暫く眠った。明け方目が覚めたので、寝室に戻って
またタオルケットに身を包んで眠った。

気が付くと朝日が差し込んでいた。時間は既に８時を回ろうとしていた。子供
達が保育園に行く時間だ。まだ寝不足の感がある頭をゆっくりと起こし、リビ
ングへ向かった。

下の子は既に妻に抱っこ紐でだっこされ、上の子はリュックをしょって出かけ
るところだった。

僕がリビングに入ると、飼い猫のモモ吉が僕の足を突然がぶっとかんだ。あま
りの痛さに僕は猫をどなりつけた。その様子をびくっとした顔で上の子は見て
いた。足からは緋色の血液が流れていた。何もここまで力いっぱいかまなくて
もいいのに。

子供達を見送る。玄関先まで行けなかったのでリビングからいってらっしゃい
をした。

誰もいなくなった家の中で僕はかまれた個所に薬を塗った。思った以上に傷は
広範囲に及んでいた。おのれモモ吉め。

アモキサン25m×3、レキソタン5m、スルピリド100m、テノーミン25m、メイラッ
クス1mを服用して煙草を一本完全に灰にした。

なぜか焦燥感と孤独感が襲ってきた。何も焦る事はない、僕は一人ではないと
独白し、また煙草に火をつける。ゆっくりと立ち上る煙を目で追う。ああ、今
日も会社かと半ばうんざりした心境になった。

こんな日は家で仕事が出来ればいいのだが、出社する事も今の僕には大切なの
で在宅勤務制度の使用はせずに出社する事にした。
うちの会社は今月から完全に在宅勤務制度の体裁が整った。僕は具合が悪い時
に使わせてもらおうと思っていたが、なんとなく会社にいないことが不安に感
じ、こうして身支度をする。

身支度もすんだので、ソファーに身を沈めテレビに流れるニュースをぼーっと
見た。天気予報が見たかったが、ニュースはくだらない事以外何も伝えてはこ
なかった。

出勤時間がせまったので家を出ることにした。外に出てしっかりカギをかける。
そしてカギをかけたと自分に言い聞かせる。最近、このカギをかけたと言い聞
かせる事をよくする。カギをかけたか心配で何度か駅から引き返した経緯があ
るからだ。不安神経症に似た感覚だろうか？きちんと確かめなければ不安でし
かたなくなってしまうのだ。

駅までの道を比較的テンポ良く歩いていく。気温は若干下がったようで秋の気
配を感じさせた。といってもまだまだ暑いのだが。

駅に着くと、電車が入ってきていた。急いで階段を駆け上り電車に身体を押し
込んだ。走ったせいで呼吸が乱れたが、深呼吸をゆっくりして整えた。
頻脈になりやすくなってしまった僕の身体はちょっとした運動で心臓がばくば
くするような感じがする。昔はスポーツ心臓で脈拍数が極端に少なかったのだ
が、今は人並みに脈打っているらしい。この症状も早く改善して欲しいもので
ある。PDが治るまでは無理かな。。。

オフィスに入る前に煙草を吸おうと思ったが、なんとなく躊躇いが生じやめた
。すぐにオフィスに入り自席につきメールのチェックをした。今日は急遽午前
中にミーティングが入っていた。ミーティングまでに今日の午前中にやろうと
思った事を片付けに入った。

仕事も一段落した所でミーティングの時間になったが誰も動かない。もう一度
スケジュール表を確認してみた。ん？ミーティングがリスケされて月曜日にな
っている。
はぁ、なんだか急いで仕事をしたので疲れてしまった。

ミーティングがなくなったので余った時間は音楽を聞いてぼーっと過ごした。

お昼、妻と二人で外に出た。何を食べようかという話になった。僕はラーメン
以外ならなんでもいいと答えた。それでうどんを食べに行く事にした。
うー、やっぱり麺類なのね、と思いながら妻の後をついていく。

午後、胸の中にぽっかり穴があいたような心境だった。昨日、消化不良で帰宅
したせいかなと思ったがそうでもなさそうだ。淋しいという感覚も感じ始めて
いた。さらに眠気。どうもこうもなす術がなくただただ頭を下げて時間が過ぎ
、心が平静になるのを待つしかなかった。

１時間ほど俯いていた。心に平静が取り戻ったのは漸くの事だった。

仕事に取り掛かることにする。昨日準備をしておいたのでルーチンワークは単
純な入力作業だけの状態である。

ぱきぱき入力していく。本来であれば２日かけてやろうと思っていたが、調子
が良かった事、それから月曜日はミーティング三昧のことを加味して、２日分
こなすことにした。

まあ大した仕事ではないので簡単に終わるのだが・・・

仕事も終えたので定時前だが帰宅することにした。帰宅後、ハイネケンを空け
今日キックに行くか思案した。何故か空しい気持ちがこみ上げてきて涙しそう
になったがぐっとこらえた。

ハイネケンをもう一缶空け、煙草を灰にしていると妻達が帰ってきた。
妻に今日はキックに行かないのかと聞かれたが、曖昧にはぐらかした。うーむ
それにしてもどうしようか。ここ最近行ってないしな。漠然と考える。
結局、ご飯を軽く食べて行くことにした。

食後、準備をして三茶まで移動する。久々のジムはなんか違和感があった。楽
しくやっていた頃とは見る面々が違うのもあるのだろう。
１時間半ほど身体を動かして帰ることにした。

三茶の駅にてかけをした。急行がきたら飲みに行く。各駅がきたら帰宅する。
待つこと３分。急行がきた。飲みに池ということか。。独白しながら電車に乗
りこんだ。

二子玉川のクラブに顔を出した。中途半端にあいていたボトルを空にし、新し
いボトルを入れてもらう。客もそんなに入っていなく話をするにはいい空間だ
ったが話す気になれずにただただ琥珀色の液体を体内に流し込む作業に勤しん
だ。
次にいつものスナックに顔を出した。友が働いていた。友はどうしたの？とい
った顔で僕を見た。僕は半ばやけになっているようでその視線を思いっきり無
視した。友はそれであせったのだろうか？しきりに僕に話し掛けてきた。しか
し僕はしっかり無視を決め込んでいた。話す気になれない。何かが違う。何か
が作られたもののように感じる。

時間も深夜になったので帰ることにした。酔いはそれほどなかったがキックの
道具が重かったのでタクシーで帰った。

ああ、今日は飲みに行かなければ良かった。大枚はたいた挙句あれかと独白し
、そして苦笑した。